空飛ぶ子供
だって。
だって、考えてもみてよ。
飛行機なんてクソ重い鉄の塊が空を飛ぶんだ。
それよりずーっと軽い人間の子供が、飛べないわけがないと思わない?
※ ※ ※
長い坂道を一気に駆け下りる。
風を頬に感じる。
空気の抵抗を体が感じる。
速度はぐんぐんと増していく。
そして、その勢いに足が自分の意思を超えて走っていく感覚が生まれて。
そこで思いっきり足を踏み出して高く飛ぶ。
そうすれば――
ふわりと、重力から逃げられる。
体の隅々がどこまでも解放されて。
迫る空に、心が叫び出す。
もっと、もっともっともっと近くに――
どこまでも、どこまでもどこまでもどこまでも飛んでいきたい。
湧き出る渇望に、
溢れる歓喜に、
叫ばずにはいられなくなるんだ。
「うわあああああああ」
※ ※ ※
【子供は空を飛ぶことができる】
原因もなにも、いまだ解明されていない。
分かっていることは、ただ子供のときだけ、翼も持たない人間が鳥のように空を飛ぶことが出来る。
分かっているのは、ただそれだけ。
これは、それが常識としてある現代の話である。