NO・16
「え?」
私は思わず聞き返した。
「都市の奴らが来る。どうも生贄・・・仍が逃げたのが気に食わなかったらしいが・・・別の理由もありそうだ」
「別の?」
「つべこべ言っている場合じゃない」
日和が聞き返したが斗鬼さんの言葉にさえぎられた。
「戦いだ・・・羽織・・・」
斗鬼さんはそうつぶやいた。
「仍は?」
「私も行く」
日向に聞かれて私は反射的に答えた。
「ダイジョウブか?」
「うん」
私はうなずいた。
都市には恨みがある。
私を捨てたのに、逃げたのが気に食わないなんて言わせない。
そして、守ってくれた三人だけを行かせるわけには行かない。
あと・・・
「おい、水少女」
考え込んでいた私に斗鬼さんはそういってに呼びかけた。
「え?」
「無理するんじゃねぇぞ」
そういって斗鬼さんはものすごいスピードで木上を飛び移っていった。
「全く、きざったいねぇ」
口調は気楽そうな日和の顔は真剣そのものだった。
「日和・・・行くぞ」
「おう」
日向と日和が走る。
二人の後を私も追った。
私は走りながら指先に水を出してみた。
ダイジョウブ。
すごく使える。
本当はここに行く理由がもう一つあった。
私は今でも消えない能力に対する不安をぬぐう為、能力を人のために・・・三人のために使いたかった。
だから・・・
私は指先の水を握り締めた。
形のないはずの水が、私の手の中でだけはまるで固体であるようにしっかりとした感触があった。