NO・12
「あの・・・服って、日向たちのスーツみたいなの?」
「いや、僕らはこれで動きやすいからいいけど」
日向と日和は自分の服を眺めた。
前にも言ったかもしれないけど、日向はスーツをきっちりときていて、日和はスーツを着崩している。
二人とも着ているものは全く同じなのに、印象がぜんぜん違う。
「仍がこんな服を着て動いたら、絶対動きにくいと思うよ?」
日和が肩をすくめた。
「まぁ、気に入ったのがあればいいけど、ないなら僕らが動きやすそうなのを適当に選ぶし」
何故そんなに動きやすさにこだわるのだろうか?
私はまだ些細な疑問しか感じていなかった。
「あいつ・・・」
斗鬼は一人小屋にこもってベッドで寝そべっていた。
「あの子、只者じゃないよ」
そういっていた日向の姿を思い出す。
「あの子、只者じゃないよ」
仍が出て行ってからすぐ、日向はそういって真剣な趣で斗鬼を見た。
「は?」
斗鬼は怪訝な顔をして見返す。
「だから、あの子只者じゃないんだよ」
只者じゃないって・・・?
斗鬼はそう思って顔をしかめた。
「まぁ、水の能力といい・・・普通じゃないね」
日和もそういって肩をすくめる。
「違う・・・それもあるけど・・・何か感じるんだ」
「は?」
斗鬼はもう一度そういった。
「何かすごいことをやらかすと思う・・・いや、ただの予感なんだけど・・・」
「日向の予感は結構当たるからねー」
気楽そうな日和の声。
「・・・」
「まぁ、あの子なら僕らに協力してくれるんじゃないの?」
日和が言った。
「協力って・・・都市から来たんじゃないか」
「でも、言ってたじゃん、都市を恨んでるって」
・・・確かにそういっていた。
「仍は光の中の【闇】をみた。僕らと同じだよ」
そういって日和は扉にもたれかかっていた。
「・・・」
斗鬼はゆっくりと寝返りを打った。
僕らと同じ・・・
その中には俺も含まれているのだろうか?
斗鬼は天井を見上げた。
・・・あいつらは俺を知らない。
俺の全てを知らない。
「あの子、只者じゃないよ」
只者・・・俺らだって普通じゃないじゃないか。
斗鬼は目を閉じた。