NO・11
私はシャワーを浴び終えると、セーターを着て外に出た。
「よ!」
「日向さんに日和さん・・・」
外にいたのは、日向さんと日和さんだった。
「買い物でも行こうぜ?」
日和さんにそういわれ、訳のわからぬまま二人について歩いた。
「あの・・・買い物ってどこへ?」
私は少し歩いてから聞いた。
「あ、質問に答える前にさぁ、さん付けも敬語もいいよ?」
「そうそう、日和で結構。僕らだって仍って呼んでるんだし」
日向さん・・・じゃなかった。
日向と日和がこっちを向いていた。
「うん」
私は素直にさん付けも敬語もやめた。
「じゃあ質問に答えよう。市場に行くんだ」
「市場?」
私は怪訝な顔をして聞いた。
近代化が進んだ都市に、市場なんてものはなかった。
機械で整備された小さな店がずらりとある「ショッピング・タウン」はあったが、
日向の口調からしてその場所を指してはいないようだった。
「そう、市場。ここの少し先に小さな村があってね」
「仍がいた都市みたいに近代化は進んでいないけど、都市の流れ物やら何やらがいっぱい置いてあるんだ」
「へぇ・・・」
私は心のそこから驚いていた。
市場という言葉を聞いたからではなく、こんな森の近くに村なんてあったことに驚いた。
それから、日和も日向も、こんな同じような木ばかりの場所で迷うことなく進んでいることにも同様の驚きを覚えた。
「何買うの?」
「仍の生活用品」
「生活用品?」
「服とか、ね。セーターじゃ動きにくいでしょ?」
「まぁ・・・」
でも、そんなセーターじゃ動くずらいほど動くことがあるのだろうか?
それに、日向と日和と斗鬼さんはいったい何故都市から離れたこんな場所で生活しているのだろうか?
私は、ここのことをまだ何一つ知らなかった。
何一つとして。