孤軍奮闘
気分で書いた。
後悔はしてない。
満身創痍であった。
その身は焦げ、手に力は入らず。
幾度も迫りくる大軍に心身ともに死にかけていた。
ただの1歩も踏み出すことは出来ず、
手に握る剣を振るうことも出来ない。
それでもその目に映るのは甲冑を着込み、雑多な武具を手にした大軍だった。
土煙をあげて、目には狂気をはらませて迫りきていた。
彼らにも負けることが出来ない理由があるのだろう。
家族か、名誉か、それとも処罰か。
負けてはいけないのだろう。勝たなければならない理由があるというのは強いものだ。何も無い私と比べれば。
もう何も無い。思い続けた、憧れ続けた彼の人はもう、私を見てはいない。喜ばしくも結ばれた。
ならば何故に勝たなければならないのか。
必死となって勝利を掴もうとする彼らから勝利と生を奪うことに意味はあるのか。
勝手に期待をして、幻想を抱き、裏切られ。
主人公だと思っていて、噛ませ役で。
”騎士様気取り?戦いたいなら戦場へ行けばいいじゃない。邪魔をしないで。昔は懇意にしてかもしれないけど、もうあなたとは何でもないの。死にたいなら一人で戦って独りで死になさいよ。騎士の枠は埋まっているのよ。諦めなさい。”
ああ、嗚呼、アァ、嗚呼。
ああ、荒野に立つものは独りで。
吹き荒ぶ風は乾いていて。
沈む夕日は身に染みて。
廃墟の要塞は背後に。
嗚呼、この時を待ちわびた。
憧れど靡かず。
慕えど実らず。
意味もなくただ浪費したこの人生の終わりは今ここに。
この身を任せ、彼らに呑まれればすべてが終わる。
この世のすべてから放たれる。
苦痛と悲しみと絶望と。
無へ堕ちる。
なんと素晴らしことか。
悔いはない。
嗚呼、それでも。
彼の人は泣いてくれるだろうか。それとも嗤うだろうか。覚えているだろうか。
覚えているだろうか?
覚えているのだろうか?
死ねば私は英雄となり得るか?
死ねば私は騎士となり得るか?
三日三晩の独戦に敗れて、英雄となり得るか?
彼の人は讃えるか?彼の人は守れるか?
ここで死に絶え、何がある?
目前の敵を見逃し何が残る?
愛ゆえに死にたいのならば、何故、愛ゆえに生きぬのか?
戦え。討ち返せ。勝利せよ。
この身の打ち震えるままに。
この心は鋼となりて。
溢れる想いは欠片となりて。
故に鋼の欠片は波となりて。
大波となりて軍を呑む。
残るはただただ身の死にえた狂気の騎士よ。
ただただ鋼の海にて嗤う愚かなる騎士よ。
醜き狂気の名も無き騎士となる。