出会い
なぜ『刀』で異世界を目指したのか…
その答えは、誰にもわからない。
『刀』で次元を切り裂くイメージを持っていたのかもしれない
異世界を想う情熱が過度の鍛錬でも弾力を失わず強化を続ける奇跡を生み、その結果生まれた『刀』
『刀』は、湾れ刃の波紋が浮かび上がり波紋が念波の道となり異世界の道を作った。
------
異世界にきてから7日が過ぎた
この場所から見える範囲の情報を整理してみる
1.見渡す限り平野である。
2.左右には一定の間隔で同じような岩が見える。
3.そこそこ離れた所を獣人が右から左へとボールの様なモノを飛ばしながら歩いている。
4.その先には竿旗らしきものが見える。また、遠くにも似たようモノが見える。
以上の情報を元に、ここがゴルフ場である事が想像できた。
(こりゃ、ゴルフの最中に死んだ因果かな)
この岩はOB杭の代わりになのだろう
これまでこちらへ打とうとするプレイヤーはいなかった。
この日も誰にも意識される事もなく一日が終わるのかと思っていたが、どうやら今日は違うようだ。
「あぁ?いい加減に諦めたらどうだ?」
遠くから狸人が不機嫌を隠さない様子で、そばにいる帽子をかぶった子供に言い放った。
「最後まで諦めてやるもんか!このコースは絶対に渡さない!!」
子供は興奮している様子で答えているせいか、声変わり前の少年なのか少女なのかわからない。
すると、子供がアドレスをとりスイングをする。
ビシッ
音が聞こえるような気がするほど、コース左OBの刀の方を指してたフィニッシュをとっていた。
完璧な外側から内側へのアウトサイドインスイングである。
引っ掛けたボールは刀の方へ飛んでいき、目の前で止まった。
「ハッハッハッ!暫定球を打つかい?」
馬鹿にしたような軽口で狸人が提案する。
しかし、子供は拒否した。
「あそこはまだOBじゃない!まだ負けないっ!」
そう言って刀の目の前のボールを追ってやってきた。
「んー。こんな剣みたことないけど、こんなところにこんなのあったかな?」
帽子の子供は首を傾げた。
「早く打てよ。こっちは待ってんだから」
狸人が急かす
(急かすのはマナー違反だろ…)
「やっぱりそうだよね。」
(当たり前だろ)
「うんうん」
(…もしかして、声が聞こえるのか?)
会話が成立しているような気がして問いかけるてみた。
「うん。私たち、波長が合うみたいだね」
(そういうモノか?)
「そういうモノだよ」
(途中から見させてもらったが、このコースの所有権を賭けて勝負してる?)
漫画のような展開だが、先ほどの会話はそうとしか思えなかった
「あたりー。私の名前はアリエス。君の名は?」
(カズキだ)
「じゃ、カズキ。オーナー権限で私に協力して!」
一方的な申し出だが、しかし異世界にきたのに岩に刺さったままの状態は打開したいので受けることにした。
(わかった。ただし、オレを連れて行け。それと指示を出した時は従ってもらう)
「おーけー。じゃ、交渉成立ってことで、よろしくっ!」
こうして、2人は出会い。共に歩いて行くことになった。