『刀』
「契約者よ。我が呼びかけに応じてくれて感謝する」
夢、そう。これは夢なのだろう
ふわふわした感じがする。
ここには一希の体は無く、意識体としての一希がいた。
暗闇の中を声の聞こえた方へ進んで行く
次第に何かが見えて来た。
『剣』
台座に刺さったソレは、漆黒の刀剣
片刃のソレは、『刀』と呼ばれるモノだった
「契約者よ。汝の望みは我の望み」
『刀』から声は聞こえていた。
「これより我と汝は一つとなりて、世界を超越する」
その一言で次元が歪み、浮遊感が襲った。
眼下には見たことのない浮遊島や空飛ぶナゾの生物、異国情緒溢れる西洋風な国々が見て取れた
徐々に落下していく
間も無く地面だ。
ガキンッ。。。
そうして、『刀』は岩に刺さった。
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数日が過ぎ、一希は思い出す
(僕は異世界に憧れていた)
異世界へ行こうと考えた人間がいた
(今の現状に満足しながらも)
ゲートとしての刀を打った
(もし機会があるのなら異世界へ行ってみたいと)
計72回の折り返し。物理限界を超えた鍛錬
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刀鍛冶は異世界へ行きたかった。
しかし、度重なる無理な折り返しに精神を壊していき
刀を打ち終わるのが目的となった。
そして完成と同時に息を引き取った。
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[72]とは、ゴルフでの一般的な18ホールの規定打数である。
72回目の折り返しが完了したのと同時に一希は命を落とした。
その瞬間の奇跡
異世界へ行くには体を捨てなければならない
しかし、魂だけではすぐに消滅してしまう
世界の法則を超えた刀はゲートを開いたら力を失い、破損してしまう
ならば、魂の受け皿に刀がなればいい
お互いがお互いを補う契約
こうして、刀は異世界で砕ける事無く『刀」として存在を許された。
運命の出会いは、ここから3日後の事だった。