とある会社のゴルフコンペ
突如、宇宙研究所MASAが発表した異世界からの念波の受信記録。
あの事件から25年が経ち、お互いの世界の文明レベルが相互干渉しあった結果が今の世界の様子だ。
僕、羽生一希は、公園のベンチから周りを見て考える。
「空飛ぶ無音の飛空艇、何もない空間から水を湧き出させる噴水、電気もガスも使わないバーベキューセット・・・っか」
どうやって作ったのかわからない飛空艇は、ほぼ外枠と内装のみで構成されており動力部が存在しない。最大輸送人数を限界まで積んだ飛空艇が優雅に空を飛び続けていた。
そして、噴水の湧き出る地面には何かしらの魔法陣が描かれており、バーベキューセットも使用者の火魔法を頼りとした構造になっている。
「いったい、異世界ってどんなところだろうな・・・」
そんな昨日の事がフラッシュバックした。
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「よし、前の組はグリーンを空けたようだ。一希がオナーだ。ここは1オン狙いか?」
僕に上司が聞いてきた。
「ティーグラウンドに立つまで考えてませんよ。下手して谷底にOBもありえますし」
ここは、地元のゴルフ場
そして会社のゴルフコンペ中である。
この組は、職場の上司、職場の先輩、他部門の同期、そして僕だ。なので、わりと気持ちは軽くラウンドできていた。
たまたま前のホールを皆がパーの中で、僕だけがバーディーで上がる事が出来た。なので、このホールのオナーは僕だ。
INの5ホール目で打ち下ろしの谷越えPAR3だ。
ティーグラウンドのすぐ目の前には谷が広がっているため恐怖心が芽吹く。しかし、超えられない恐怖ではなかった。
これなら….
「ここは、、、攻めるっ!」
左にカート道に沿ったフェアウェイがあり花道は広めで狙いやすいが、ここはPAR3だ。花道から寄せて1パットでもパー。外せばそれ以上にスコアを落とす。
ダイレクトにピンを狙う
160ヤードの長めのPAR3だが、打ち下ろしであるため普段は140ヤードしか飛ばない7番アイアンで振り切った。
シュパッ!
ボールは綺麗な放物線を描きながらフェードで飛んで行く。
僕の持ち球はフェードだ。
そのため左が広いこのホールでは気持ちにゆとりができた。
「よしっ!」
会心の当たりに思わず声が出る
ボールがピン側に落ちたのを確認した直後事件は起きた。
「フォアーーーーーー!!」
叫び声がコースに響いた。
ファー!としか聞こえないんだけどな…なんて考えていると
シュルシュルっと飛来するボールの音が聞こえた。
直後、カーンッ!と木にぶつかる音が続いたが、それを聞くと同時に意識が飛んだ。
「かずきっ!」
同期の渡部が駆け寄る
しかし間に合わない。
後続の組の打ったOBボールは、背後の木に当たり、跳ね返って一希の頭に直撃したのだ。
それにより、一希は前へと倒れていき谷へ転落していった。
「「「かずきぃいいい!!!!!!」」」
三人分の叫び声がコースに轟いた。