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灰色の世界1
どれくらいの時間が経ったのだろう。
一瞬を永遠に感じ、永遠を一瞬に感じる。
いつからか目の前は闇に包まれていた。
それを自覚した時、自分が瞼を開いていなかったことに気づく。
ゆっくりと開かれた視界の先は灰色に満たされ、天高くそびえ立つ黒く巨大なビルの群れに囲まれていた。
「・・・こ、こは、どこ、だ」
自分の声が死に際の老人のように枯れていて確かめるよう喉に手を当てる。
呼吸は出来ている。少し冷たいが体温もちゃんとある。肌も以前と変わらず柔らかい感触だった。
自分の身体を見てどこも怪我をしていないことを確認し、今度は周囲を見回した。
見渡す限りどこまでも続く黒いビルの群れ。地面は灰色の砂をかぶったコンクリートで敷き詰められていて、歩道や車道の区別は無かった。
そして空を見上げると、分厚い灰色の雲に覆われていて太陽の光は少しも指していなかった。
俺はどうしてこんな場所にいるんだ?
何も思い出せない。
どこかに行こうと思っても方向すら分からない。
途方に暮れその場に座り込んでいると、何が近づいてくる音が聞こえた。