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御殿場雫と身バレ。~まさか……石城茂様?~

 私と御殿場会長は買物を済ませると私の家に向かった。途中ではるか後方から不穏な目線を感じた時はどうしようかと思ったぜ。まさか遅れをとるとは思わないが、体力が全体として落ちている以上、殴り合いのような緊迫した白兵戦になれば押し切られるのは間違いないからな。私が恐れるのはここだ。これまでやんちゃで、打ち噛ました野郎は数知れない。この躯になった事を知られ、そして仕返しを受けるような事になった時、怪我をするならともかく、下手をすると童貞より先に貞操を失いかねん。護身に肥後の守でも常備すっか。刃物を人に向けるのは卑怯だがしゃーない。

 そのうち私の家に着き、私が無造作に鍵を取出した時、御殿場会長が複雑そうな顔をしたのを見たら、やはり護身武装は必須かもしれないと確信した。鍵を開け、誰も居ない家に習慣で『ただいま』を言う。当たり前の事だろう、誰も居なくても儀式としての挨拶は欠かさないモノだが、御殿場が驚いたかのような表情をしたのには、ある種の不快感を覚ざるを得ない。間を置いて御殿場は『お邪魔します』と言って玄関に入る。私は既に靴を脱ぎ、ピッと揃て、二階に上がる階段にあしを掛けていた。御殿場は靴を揃える事なく私について来ようとした。私はまず靴を揃えるよう指示し、彼女を待つ事にした。後で何か隠していると言われるのは御免だからな。 


 御殿場と二階の部屋に上がると、彼女は言う。

「彼の部屋はどれなの?」

「階段正面の部屋。私と入るか?どうせ荷とか処理すっ為に突っ込んどるからさ。来いや。」

とそれに答えて、目茶苦茶な訛りっぽい男言葉を言いつつ、戸を開ける。中は非常にすっきりしていて、多分高校生男子の一人暮らしの部屋だと言っても信じられるクラスメートは清船にも、鋼洗にも居ないんぢゃなかろうか。金欠病の私がフリマとかで不要品目はともかく売り飛ばし、場合に寄っちゃ、不良仲間の馬鹿に高値で売り付けて食生活とコスプレレパートリーを豊かにすべく戦ってきたのだ。


 父は日本郵船で一等機関士をやって居て、高給取りだが私にくれる小遣いは少ない。理由?んなもん知るか。

 母はヨーロッパで服飾メーカーの上級管理職だと聞いたが、私と仲が悪く小遣いをくれない。理由は向こうが欲しかった子供はかわいらしい小さめの女の子で、私は顔の悪い糞な野郎だったからだそうな。理不尽だと思う。

 だから私は父からの毎月二万円で飯、被服、その他消耗品を賄うべく苦戦していた。バイト?そんな余裕あるわけねーよ。まず近隣じゃ私の悪名が轟き過ぎて何処にも雇って貰えんし、他となりゃヤー公崩れとか脱法ドラッグの運び屋とか洒落じゃ済まんもんしかねーわ!もうこれ以上警察の世話ん成って堪っか。親父に殺されるわ。




 御殿場はゴクリと咽を鳴らしてから私に続いて部屋に入る。私が戸を閉めると彼女はドキッと身体を震わせて振り向いて来た。そして

「そうやって私のことも凌辱して取り込む気なんでしょう?だけど私は屈しないわ。例え身体をどんなに無茶苦茶にされようと彼の為に捧げたこの心は。」

と言った。コイツの中で私は一体どんな奴になっている?駄目だ冷静に返せやしないわ。喧嘩になるか。

「落ち着かんか、馬鹿者(ばかもん)が。誰がここで、んなもんすっと言うたか。ただでさえ掃除は週に一回、シーツは月二回、通常の洗濯だって二日に一回やぞ。そんな家で汚れる事やったら、生活に支障が出るわぃ。ちったあ考えやがれ、このノータリンの耳年増。」

「ノータリンの耳年増?何が言いたいのかしらこの腐れビッ〇。貴女、私を誰だか解っているのかしら?」

「ああ、解って居るとも、このパープリン。こっちゃあなあ、金ないモテないさらにゃ成績足りっかも解らん腐れ高校生の野郎で、なーんも権力ねーし、取り柄もねえ、揚句にゃキン〇マも竿も無くしたや。んでテメーは金持ちの御令嬢で生徒会長、そいで品行方正成績優秀ときた。だが貴様がノータリンの耳年増だってこたぁ何度でも言ってやんよ。このどぐされ糞アマがぁ。粋ってんじゃねーよ」

いや、実際粋ってるのはこっちだし、凄んでみたけど声が可愛いせいで全く効果無いな。むしろなんか残念な感じに纏まっている。これはへこむわ。

 そうしてある意味燃え尽きた私の肩にいきなり彼女は手を掛け、ベットに引きずり倒した。まさかさっき考えていた貞操の危機って今か!しまったな、肥後の守は机の引き出しの中だ。しかもこの躯、彼女にすら圧し負けるのか。誰か助けてくれ。

 彼女の手がスカートをめくりあげる。そこには男物の安い、三枚で二百円しない下着。正直穿けりゃ良いんだよ、穿けりゃ。彼女は私に言った。

「まさか……石城茂様?」

様って何だ様って。

「……自分でもまだ受け入れ切れておらんがな。」


石城茂の父と母の出会いは、父の上司(今の母方の祖父)が「お前、俺の娘を嫁にやるよ。」ってな感じですね。

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