御殿場会長と買物
私は授業を終えると、家に帰るべく昇降口に行く。取り巻きか何かが周りに居て、私に話し掛ける。私もその馬鹿話に付き合い、共に笑ったり、おどけてみたりした。そうこうしているうちに下駄箱にたどり着く。靴を履き替えて外に出ようとした時、いつの間にか隣に居た御殿場会長が私に脅迫紛いの事を言った。つまり、もし私が今日一日、会長と一緒に放課後を過ごさなかったら『エリカ・シュタインベルクは阿婆擦れで、童貞喰らいの腐れビッ〇』と云う噂を広めるといった事だった。普段嘘をつかない御殿場会長が言えば多分皆それを『事実』であると信じるだろうから、私は仕方なく従う。
しかし今日の事から御殿場会長は私(石城茂)にぞっこんである事が解った。その為に私を排除しようとしている様だ。残念だが、石城茂とエリカ・シュタインベルクは同一人物だ。排除は出来ん。というかされて堪るか。路頭に迷うわい。しかもついて来いって、御殿場会長は有名な御殿場財閥のご令嬢だから解らんかも知らんが、私は今金欠病なんぢゃい。昨日下着をごまかす事を考えたが、金があれば買いに行ってるんだよ。畜生めが。次に私の口座に振込みがされるまで、暫くもやしの油炒めばかりの日々には成りとうないわ。あれは本当に辛かった。もやしとご飯ばかりでは活力が足らん。金を使わない事だったら良いが、使うようだったらどうしよう。
そんな私の憂慮は知らないとばかりに満足そうに頷いた御殿場会長は私について来る様に行った。校門の辺りにごっついリムジンが停まっていたが、まさかあれでは無いよな?
どうやらあれでは無かったらしく、会長も私もリムジンの傍を通り過ぎる。そして暫く二人は無言で歩いて行った。いくらも行かない辺りに有る木の下に碓氷峠会長が居た。なんか昼の事があったせいか、急に碓氷が残念な勘違い野郎にしか見えなくなった。可哀相というべきか、ざまあ見やがれというべきかは解らないが。私から御殿場会長の手をとり、指を絡めた。最初は彼女は戸惑ったが、意図が解ったのか握り返して来た。そして中身の無い馬鹿話をしながら碓氷の辺りを通り過ぎようとする。碓氷が話し掛けて来ようとした時、私は下着の話を始める。まさかよっぽど無神経でもなきゃ女の子二人が下着の話をしているとこに話し掛けられる男は居るまい。まあ私はそういう無神経な野郎だったがな。だが神経質っぽい碓氷にはできまい。案の定碓氷は固まっていた。そのあと碓氷を振り切ると、彼女に頼む事にした。下着を買う金を貸してほしいと。彼女は暫く逡巡すると、彼女が選ぶのが条件で承諾してくれた。安い奴が良いな。
今私は〇ニクロのレディースコーナーに居た。しかも店員さんに採寸されている。その間に御殿場会長はダサいというかしょぼいデザインの下着ばかり選んでいた。いや、良いんだよ、安けりゃ何でも。私が服を着直した後、既に選び終えた会長が店員に合うサイズの奴にして貰っていた。この借金、ちゃんと返せるかな。不安だが、私は会計の後、それらを受け取り、家に帰るからとおいとましようとしたが、会長は私『が』心配だからと、家について来る事になった。飯は足りるのかな?私の家には余り食材も無いしな~。