やっぱりセーラー服には長いスカートの方が似合う
朝だ。昨日の事が全て夢だったら良かったと何度思った事か。しかしながら私は相変わらず女のままだ。だが腹が減った。『飯を喰わずば居られじ』、とばかりに腹が鳴る。しょうがないから私は布団を跳ね退け、起きる。寝巻にしていたTシャツを脱ぎ、サラシを巻く。そしてメッシュ地の肌着を着ると、スカートを穿く。そしてセーラー服を着る。勿論、セーラー服は海軍水兵コスプレで着慣れて居るが、下がスカートなのは初めてだ。幸か不幸かスカートは膝より下、すねを上から四分の一まで覆う物だ。昔スケバンなんかが長いスカートを穿いて居たが、確かにセーラー服には長いスカートが似合う。それはさておき、着替えた後は一階に降りて顔を洗い、鏡を見てつくづく思う。コイツは可愛いなと。自分じゃなきゃ惚れている。髪をとかす。長さはそこまで無いし幸い寝癖も殆ど無い。寝癖を寝かすだけで良いだろう。野郎の朝らしい朝だ。
そのあと飯を喰い、歯を磨く。私はそのあと学生鞄を担いで家を出る。鍵は何時もの通り三度確認して、学校に向かって歩き始める。やはり春の風は良い。私が気分良く歩き出すと、暫く行った処に昨日と同様に生徒たちの集団がある。しかし、今私は普段とは違う見た目をしている。当たり前だ、性別からして違うのだ。だからか、何時もの怨嗟に溢れた視線ではなく、好奇と関心の目を向けられた。だがどうした。何も問題はないじゃないか。私は歩調を変えない。昨日と同様、生徒の輪の中心に迫って行く。そして御殿場会長に近づく。今日は碓氷はカバーに回らない。話す事は無い。追い抜こうとした時、御殿場会長が睨んできた。目からハイライトが消え失せている。いわゆるレ〇プ目だ。何故だ。仕方が無い。御殿場会長殿に挨拶申し上げるとするか。
「"はじめまして"私は転校生のErika・Steinbergです。以後御見知り置きを。」
御殿場会長は微笑んで、しかし目は変わらずレ〇プ目で答えた。
「私は鋼洗の生徒会長の御殿場雫よ。よろしくね。」
と。私は背筋に冷たいモノが当てられたような感じがした。だが逃げるのは私らしくない。理事長に呼ばれて居ると言って別れた。が、御殿場会長の事は何故か心に引っ掛かった。私に恨みでもあるのか?あの睨み据えた目はまるで親の仇か何かを見ているみたいだった。不気味だと思った。だが私が男に戻るヒントは彼女にあるらしい。あんなんどーせいと。私には何も出来ん。