白兵戦の虜囚、それは私だ。
なんじゃこりゃー!?と叫んだその声もかわいらしくて、私を完全に混乱させた。私は先程まで確かに男だった。というかこれまでの十五、六年の間、女だった事など一瞬たりとも無い。有って堪るか。だが現状の私は間違いなく女だ。まさかこれが鋼洗女子高校初代生徒会長の呪いか?不愉快を通り越して寧ろ感動の極みだ。さっさと成仏しやがれ、あのクソアマ。
その時に外から物音がした。咄嗟に段ボールを被って倉庫の奥に隠れた。段ボールは戦士の必需品にして、秘密基地遊びや、被災時のマルチツールだ。私は段ボール教信者、いや段ボール狂信者といって良い。
数名の教員と理事長、そして御殿場会長と一人の少しおかしい女子がやって来た。段ボールの中から彼女らを見ていると、どうやら少しおかしい女子は「私」の第一発見者で学帽を被った男子ともみ合いの結果、刺したと説明していた。御殿場会長は顔を青ざめていたが、血の跡を見た結果だろうと思う。理事長は何か探して居るようだった。だから何を。私に探させる目的が有ったのか?教員は床や壁を見て回った跡、とうとう私の被っている段ボールに近づいて来た。そして彼は段ボールに手を掛けた。私は息を殺したが気付かれてしまったらしく、彼が何か隠れて居ると言った。そうして皆に取り囲み、段ボールを持ち上げた。私は縮こまって情けない顔をしていたと思う。
その後の記憶は定かでは無い。しかし覚えているのは、御殿場会長が気絶したのと、私がそれに駆け寄った事。そして少しおかしい位上気した女生徒に突き飛ばされた事だ。そこからは教員に捕まり、生活指導室に連れて行かれたこと、第八倉庫に入った事にたいする指導、理事長が助け舟を出したこと、私が何故かErika・Steinbergという人物になって居たことか。というかなぜドイツ語だ。シュタインベルクって石の城という意味だからそのままじゃねーか。しかも名前がエリカってこっぱずかしいわ。ドイツで可愛い人の代名詞だよ。何故こうなった。私は男だ!