夢と呪いと私と
此処は何処か?確か私は鋼洗の女子に裁ちバサミで刺された。ならば此処は地獄か。妙に現実感の無い思考が続く。すると後ろから声がする。女子だ。もう女子が後ろに居ることがトラウマになったらしく、ぶわっと鳥肌が立つ。何でこんなめに遭うんだ。
「だから、無視するなぁ!」
とその声がする。振り向くと、古めかしい恰好の女子、大正浪漫というべき姿で艶やかとも思われた。ただ、生気の宿って居るとは思えない肌とか、靴を履いていないとか不審な点が多かった。そのくせ言葉遣いは新しい。
「だから何か言えー!」
と。ムカついたが、それより先に聞くか。
「此処は何処か?それに私は君を知らないが、誰か?」
と問うと、
「まず此処は貴方の意識の底辺、つまり夢の中。そしてあたしは鋼洗の初代生徒会長の石城マツ。よろしくね。」
「ふむ、夢か。ならば何故君は私の夢の中に居るのか?」
「その前に貴方の名前は?」
「私は石城茂だ。で、何故だ。」
「血染めの鏡の話、知ってる?つまり貴方の血が鏡に付着して、貴方は私に呪われる。いい?」
いきなり呪われるのか。不愉快極まりないが、その呪いはどんなモノか分かれば少しマシかも知れない。
「どんな呪いなのか?」
「それはね、えへへ、解らないや。」
爽やかに笑いながら抜かしやがった。
「解らんて何事か。てかんなもん人にかけるな。」
「残念、もうかけちゃった。どうやったら解けるかは自分で探してね。ヒントは御殿場雫ちゃん。じゃあね(゜▽゜)/」
と言って何処かに消えて行った。何故だ、台詞に顔文字が有った気がするぞ。大正時代ぽい人なのに。それと御殿場雫って何故だ。何故なんだ。
ああ、そういえば明日のフィールドワークの授業に使うために買った軍靴、今日に届くんだった。受け取らなければ。
夢から覚めた。何か体が重い。そして周囲を見渡す。誰も居ない第八倉庫の中だ。血は出ていないらしい。立ち上がり、体から埃を払おうとして気づく。何で私はスカートを穿いて居るのか?何故私はセーラー服を着ているのか?いや、私は旧日本海軍の水兵コスプレの為のセーラー服は持っているが、まず色が違う。それは鋼洗女子高校の制服で有った。私のものや、他の古い血の跡で汚れた鏡を見ると、そこには金髪碧眼で背が百六十無い女子がいた。待たんか。これはまさか私か?
私は全力で叫んだ。
「なんじゃこりゃー!?」