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スランプ脱出機

作者: 瀬川潮

「こういうものを発明した」

 博士はにこにこと私に言うと、マッサージチェアっぽい物を指差した。

「名付けて、『スランプ脱出機』。というわけで助手君。早速座ってくれたまえ」

「え、いや。私はスランプじゃないですよ絶好調ですよ」

「何を言うか。この口だけは達者なツッコミ大王め」

「う、うわああああ、助けてぇ~」

「ぐだぐだ言うんじゃない」

 そんなこんなで、イスに強制的に座らされ、博士はスイッチ・オン。

 ぶぶぶーんと音がすると、イスは私の肩を揉み始めた。いや、これはほぐし効果もあるぞ。っていうか、きっと叩きとか選ぶこともできるに違いない。

「……あの、博士」

「何だね、助手君」

「これって、ただのマッサージチェアじゃないですか」

「うむ、満足行く性能のようだな。君のツッコミにいつものキレがない」

「は?」

「いや、君が見事にスランプになったな、と」

「『脱出機』じゃないじゃないですか」

「うむうむ、キレがない。おかげで、わしはすっかりスランプ脱出じゃわい」

「は?」

「つまり、これは座った人をスランプにする機械なわけだ。スランプを治すのにはだれかにスランプをうつすのが一番だから、これでわしはスランプから脱出するということだな」

 なんだ、その謎理論は。

「よ~し、乗って来た。それじゃ早速大量生産して世のスランプに陥って困っている人に売って売って売りまくるぞい!」


 そんなわけでこのスランプ脱出機。鳴り物入りで世に出たのだが、これが面白いように売れた。

 理由は簡単で、販売側が買い手にまず座って使い心地を確かめてもらうため、売れば売るほど販売員は口も滑らか絶好調。買い手の方は当然、スランプ脱出機という商品名にその真の機能を誤解しているし売らんかなの販売員はそのメカニズムを口にするはずはなく。えげつないことに基本はマッサージチェアなので何となく肩凝りが緩和され調子が良くなりスランプ脱出効果があるように感じてしまうという有り様だったり。これまた売れた理由となる。

「ぐわっはっはっは!」

 博士の笑い声は止まらないのであった。


 そんなこんなで、いま現在世の中は不況のどん底にいたりする。

 流行りに流行ったスランプ脱出機に、購入者は毎日だれから勧められるでなく自分から座っているので、スランプに陥るだけ陥っているのだ。みんなみんなそろって、仲良く――。



   おしまい

ふらっと、瀬川です。


他サイトに発表したことのある旧作品ですが、なんだそりゃ、な感じをお楽しみください。

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