シロイカラス
昔のカラスは白かったんだよ。
じゃあ、なんで今は黒いの?
それはカラスがウソをついたからだよ。
ウソって?
昔々、カラスは白かった。
そして人の言葉を話せた。
美しく光をまとう白い羽。
カラスは神様の使いだった。
だがカラスはあろう事か人間の娘に恋をした。
その娘も哀れなことに生まれながらにして、難病を背負っていた。
カラスは娘を心から愛していた。
種族が違えど愛は同じ。
カラスは神様の元から小さな赤い果実を持ち去った。
それは神様の実。
人が触れてはいけない聖域。
だがしかし、それを口にすれば娘の難病は消え去るだろう。
シロイカラスが犯したのは禁忌。
娘の元に果実を届けたカラス。
その実を一口齧れば難病は消えてなくなる。
だが、それと引き換えにカラスは人の言葉が話せなくなった。
それは神様の実を人に与えてしまったがため。
唯一の想いを伝えていた術がなくなった。
娘は悲しそうな顔をするがどうする事もできない。
そこへ神様が現れ娘とカラスにこう言った。
犯してはならない禁忌を犯したのだ。
甘んじてその罪を背負い生きなさい。
そしてカラスは神様の元からさるように言われた。
カラスの美しかった羽は黒くなってゆく。
娘は自分がいけないのだと泣いて許しをこう。
老い先短かった命。
このまま息絶えてもいいからカラスを戻してやってくれと。
そんな娘に神様はさらに告げる。
罪を背負い、罰を受けなさいと。
カラスは喋ることが出来なくなり、白い羽は光を通さない黒い羽になった。
そして娘はそんなカラスに添い遂げなさいと。
永遠の愛を誓うのです、と。
そうすればいつか、罪の鎖は解けるだろう。
カラスはまた話すことができ、白くなるだろうとも告げた。
そして神様は天界へと帰って行った。
残されたカラスと娘がどうなったのかは誰も知らない。
じゃあ、白いカラスはいるの?
それはどうだろうね。
えー。
探してみるといいよ。
でも、戻ってないかもしれないんでしょ?
戻っているかもしれない。
どっちー?
さぁね?でも、もしかしたら飛んでいるかもしれないよ。