進化の最後に書き記された文明の遺言
ストーリーは早くもクライマックスです。
リュウグウノツカイの群れに巻きこまれて約三日がすぎました。海溝におちてしまったわたしはどうしようもなく、ただただその場でじっとしているだけでした。その間、わたしは一度目をさましましたが、再度ここにおとずれてもとくに変わりはありませんでした。
「イオちゃん、どこかなぁ・・・」
地上をみるためにいままで旅をしてきましたが、イオちゃんがいない今、わたしのすることは何もありませんでした。
「はぐれたらはぐれたで、寂しいなぁ・・・・」
しかしいくらしゃべっても、イオちゃんとは会うことができないのです。深海でわかれたら二度会うことなどとうていふかのうなのです。わたしとイオちゃんがであった事すら、ほとんど奇跡にちかいのですから。
「でも、とにかく進むしかない・・・・」
真っ暗な深海を、たった一人ですすむことにしました。でも、いままでちかくにいた友人をうしなうのは、とてもこころぼそいものとだとわたしは思いました。数ヶ月まえまでは一人でもだいじょうぶだったのに、こんなにさびしさをかんじるとはあの頃の自分からはかんがえられないことでした。
「おう、そこの半透明、まちたまえよ」
呼ばれた気がしたので、わたしは後ろをふりむきました。しかし、まっくらでなにもみえません。
「ここじゃよここ!」
こえのきこえるほうにしっかりと視線を合わせると、やっとそこに誰かがいることがわかりました。
「え・・・・シーラカンス、ですか?」
そうじゃよ、声の主はそう言いました。かつて宇宙船の中でべんきょうしたないように、シーラカンスの事についてもとうぜんのごとく書いてありました。生きた化石ともいわれるシーラカンスに会えるなんて、私もラッキーです。
「半透明、きさま名前を何という?」
「センジュナマコです」
「そうじゃない、名前を何というのか聞いているのじゃよ」
不思議なことをきいてくるシーラカンスさんに、わたしはすこしたじろいでしまいました。
「マコ、です・・・」
「ふぅむ、やはりそうじゃったか」
そういうとシーラカンスさんは、来いとだけ言って、わたしをどこかへ導きはじめました。徐々にあがっていく地面に、少しずつりくにちかずいていることが分かりました。
「シーラカンスさん、あなたは何者ですか?」
話しかけても、せいじゃくだけがかえってきます。
しばらくすると、とうとう海面がみえてきました。海上がちかづいていることがみにしみてわかりました。そしてシーラカンスさんは導くのをやめ、わたしの方を向いて独り言のようにはなしはじめました。
「かつて、海の上にはこの星を支配する生命がいたようじゃ。しかしその生命は、いかんせん頭がよすぎたようでな・・・・。生命の象徴とも言える進化を自由にできるようにしてしまったのじゃ」
喋っているシーラカンスさんを見て気づきました。彼の動きはすこしずつ、いびつになっていっていることに。
「半透明、いや、人間よ。貴様たちのことじゃ。最も、もう生き残りは貴様以外いないのじゃがな」
シーラカンスさんは喋る度に、少しずつうごきがいびつになっていきます。そして徐々に、シーラカンスだと思っていたその正体が明らかになっていきました。皮が剥がれ、むき出しになった金属、張り巡らされた動線は、シーラカンスさんが機械だということを確信させました。
「ワシはその人間に作られたロボットなんじゃよ。長い間深海にいたせいで心を持ってしまったようじゃがな。いずれ貴様のような存在が来ることを悟って人間が作ったのじゃろう」
「わたしのような・・・・そんざい?」
「そうじゃ・・・半透明よ、あと少し進めば陸じゃ。わしはこれ以上は行けん。貴様一人で行くのじゃ。そこで貴様は真実を知るじゃろう」
「シーラカンスさん、あなたはどうするのですか?」
「さあな、そろそろ死ぬのかもしれん」
「そうですか・・・」
わたしはシーラカンスさんに言われたとおりに、しんかいを進んでいきました。やがて、わたしの体に変化が現れました。ふだんしんかいで見ている視界よりめせんが高くなっていき、手足をかんじはじめ、とうとう人の体へと変化していました。
「あ、りくだ・・・」
とうとう、わたしは陸へとたどり着きました。現実ではおせんされていてあがることが出来ない陸に、わたしは立ちました。そしてわたしはシーラカンスさんに言われたとおり、驚くようなものを目撃したのです。
「そんな・・・なんでウミカラスが・・・・?」
そこにいたのは、人によって絶滅させられた動物、ウミカラスでした。
次回、最終回です。