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とある特殊なセンジュナマコの物語のはじまり

とても落ち着いたアンニュイな気持ちで書きました

 まっくらな海底、ここは多分海底よんせんメートルぐらいかな?こんなまっくらな場所にわたしは住んでいます。


 あ、もうし遅れました。わたし、センジュナマコです。ほかのセンジュナマコとの差別化のために、友達にはマコって呼ばれてます。私の容姿は是非画像検索してみてください。ちょっとグロテスクですが・・・・。


 そんなわたし、今日も今日とてやることが何もないので、海底をただただフラフラしています。


「お、マコちゃんじゃん。おひさ」


「あ、イオちゃんおひさしぶりです。何日ぶりですっけ?」


「日とかいうレベルじゃねーって」


「じゃあ何ヶ月ぶり?」


「それぐらいの単位だな」


 こちらはダイオウグソクムシのイオちゃん。それにしてもこんな海底に来るのは珍しいんですが、どうしたのでしょうか?


「エサがな、無くなっちゃって」


「もしかして、それでわたしを!?」


「ちげーよ!」


「じゃあなぜに」


「知り合いのラブカからこの辺にダイオウホオズキイカの死骸があるって聞いてな、それを食べに」


「あ、それならここからすぐのところにありました」


 なるほど、イオちゃんはイカさんの死骸を食べに来たんですね。


「うーん。案内してくれるか?」


「え?でもわたしノロノロですよ?」


「大丈夫、おれもノロノロだから」


 深海のじゅうにんはだいたいノロノロです。たしかイカさんの死骸はここからにひゃくメートルくらいかな?まあノロノロと進みながら、せけんばなしでもしましょう。


「そういえばおととい、ほかのダイオウグソクムシさんに会いました」


「へぇ、そいつどんなやつだった?」


「休憩してるところで会って、食べられかけました」


「おお、危なかったな」


「ほんと、わたしのトーク力がなかったら今ごろ海のもくずでしたよ」


「そういえば俺たちが初めてあった時も俺がお前を食べようとした時だったな」


 イオちゃんがずいぶん懐かしいことを言ってきました。あれは確か2年くらい前でしょうか?あの時も私はふらふら海底散歩を楽しんでいたら、突然イオちゃんが私を食べようと近づいてきたんですよね。で私もイオちゃんもすっごいノロノロで、近づいてくる間におはなしをしたら友達になっちゃったんですよね。


「そういえば、あの時話したあれって本当なのか?」


「あれ?あれとは?」


「ほら、この海の上には水のない世界があるっていうやつだよ」


「本当ですよ、クジラさんとかに聞いたことありませんか?」


「無いな・・・・と言うかなんでお前は知ってるんだ?他のセンジュナマコは知らなかったぞ?」


「それはほら、私は元々海上に生きてたから」


「だからそれがおかしいんだって!他の奴らに聞いてもそんなの誰もいなかったぞ」


「うーん・・・・なんて説明すればいいんでしょう・・・」


「おっ!あれか!」


 話の途中にイカさんの死骸に辿り着いてしまいました。


「ってもう食べるとこないじゃねーか!」


「あら・・・」


「絶食出来るからってもう我慢の限界だぞ!」


「他に食べるものは・・・・ん?イオさん!あれ!」


 イカさんの死骸を食べられないことに絶望していたイオちゃんとわたしのまえにいたのは、今にも死んでしまいそうなクジラさんでした。


「クジラじゃねーか!うっひょー!」


「イオちゃん、ためしにさっきの話きいてみてくださいよ」


「そういえばちょうどいいな!おいクジラ!まだ会話できるか?」


「・・・・ダイオウグソクムシか・・・・・・この死に体に・・・何の用だ?」


「ここにいるセンジュナマコから聞いたんだけどよ、本当に海の上ってあるのか?」


「・・・・・なんだ・・・そんなことか・・・・・あるぞ・・・・・・水のない世界が・・・・」


「本当なんだ・・・・」


「・・・ああ・・・・それじゃあ・・・・・さらば・・・だ・・・・・・」


「おう。お前の肉体、ありがたく食べさせてもらうぜ」


 目の前で息絶えたクジラの肉体を、イオちゃんは敬意を払って食べました。


「お前も食えよ」


「わたしの食べものは泥ですから」


「ふーん」


 ゆっくりと時間をかけてイオちゃんはクジラの体を食べていきます。


「ふぃー、食った食った!」


「それは良かったです」


「それでなんだけどさ、お前は海の上から来たんだよな。なんだっけ、陸だったか?そこには何があるんだ?」


「人間、という生物がいっぱいいます。わたしもむかしはその生物でした」


「冗談はいいって!それじゃあ何だ、お前は『生まれ変わった』とでも言いたいのか?」


「・・・・ちょっと違いますね」


「ちょっとって・・・・まじか・・・」


 その時、私に突拍子もないことを思いつきました。


「陸、行ってみますか?」


「は!?」


「実は、海底と地上って、絶対に繋がってるんですよ」


「行ってみたい!」


「でも、多分すっごい時間かかりますよ?」


「それでもいい!行ってみたい!」


 陸に上がるということは、水中の生物からしたら自殺行為ですが、ダイオウグソクムシとセンジュナマコが会話できる世界です。たぶん大丈夫でしょう。


「じゃあ、早速いこうぜ!」


「はい」











 ここで、わたしは夢から覚めてしまった。もう既に陸のない地球で、たった一人生きる私は、海から突き出たビルの最上階で、再びひとりぼっちの世界に戻ってきてしまった。


「わたし以外には、やっぱ誰もいないよね・・・・」


 何もすることのないわたしは、あの世界へ行くためにまた眠りにつく。












「おい、ぼーっとしてんじゃねーよマコ!」


「あ、ごめんなさい」


「ほら、ただでさえ俺たちはノロマなんだから急がなきゃ!」


「そうですね」


 そう言ってわたしたちははての見えない海底をすすみ続けることにした。もう既に、私の現実はこっちだから。


「いざ陸へ!レッツゴー!」


「おー」


 もうあんな退屈な世界には、こりごりだから。

テーマは『つかみどころのないせかい』です


是非とも登場する深海生物を画像検索してみてください。


次回からものんびり書いていきます

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