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くだらない短編シリーズ

この世界を脱出するんだ

作者: 鳥越 暁
掲載日:2013/06/13

 私はこの世界が嫌いだ。

 暗くて、じめじめしている。


 ご飯も食べられない時はないけれど、いつも隅の方で食べる。

 たまには広い、気持ちの良い所で食べて見たいな。


 でも外の世界は怖い。

 昨日も友達が

 「明るい世界へ行ってみるよ! 」

 と出ていったきり戻ってこなかった。


 僕の住む世界は洞窟だ。狭くて左右の壁はとても高い。

 といっても、登れないわけじゃないんだ。

 つるつるに見えても、小さなでこぼこがある。そこに手足をかければ簡単なのさ。


 【ぐ~っ】

 お腹が鳴った。お腹減ったなぁ。

 なんか美味しそうな匂いがしてきた。

 ふらふらと、匂いのする方向へ歩いて行く。


 ≪おい!ぼうずっ!何処へ行く? ≫

 長老が僕を呼びとめた。


 「なんか、美味しそうな匂いがするよ。

  行ってみるんだ。」


 ≪だめだ!行ったら戻ってこれんぞ!

  これは魔族のまやかしの匂いだ。≫


 「そうして分かるのさ? 行ったことあるの? 」


 ≪あるとも。この足を見よ。この足はまやかしの匂いに釣られて行った時のことだ。≫

 そう言って、長老は話しはじめた。


 ≪あれは、まだ儂が若いころじゃった。その時もこの良いにおいがしてな。村の大人

  衆と匂いのする方へ出向いたのだ。狭い道を抜け、切り立った崖を、命がけで降り

  てな。やがて小さな屋敷が見えた。どうやら、そこから匂いがする。

  我らは、そっとその屋敷に入って行った。

  ところがじゃ。そこはどろどろの沼じゃった。沼の上に屋敷が建っていたんじゃ。

  まず一人の大人衆が沼の餌食になった。その大人衆は抜けだそうと必死にもがいた

  さ。でも、逃れることはなかった。儂もな、その時大人衆の背におぶさっておって

  な。片足だけ沼にとられたのよ。もがいてもがいて、足がちぎれるほどもがいて、

  やっと生きて帰ったのじゃ。≫

 これが長老の話だ。


  はじめは、この話が怖かった。とてもリアルだし、長老の足はないし。


 「ねえ、魔族ってどんなやつなの?」

  僕は聞いてみた。


 ≪魔族はとてもでかい。この村に棲む我らが、すべて合わさったとて、魔族の大きさ

  の半分にもなりゃせん。その分、動きは鈍いがな。でもな、奴らは暗い所では思う

  ように動けんらしい。

  それに大きいくせに武器も持っておる。儂が見た時は、村の若いものを大きなこん

  棒で殴り、その若者は命を亡くしたのじゃ。≫


  【ぶるぶるっっ】

  僕は怖くて身震いした。



 

 あれから、月日がたった。僕は立派な青年になった。天変地異か、この世界は急激に

 冷え込み、村の衆も大勢死んでいった。洞窟の向こうに暖かそうな光が見える。

 あの時、聞いた長老の話は本当だったのだろうか? ひょっとしたら、この世界を出

 ていこうとした僕を、危険があるからと戒めただけなのではないか? 最近、そう思

 うようになった。


 よし、明日に旅に出て見よう。いい所であったなら村の衆を呼びに来よう。


 次の日、僕は長い洞窟を抜けて、明るい世界へ飛び出した。


 「きゃあ~!ゴキブリ~!」

 魔族が叫んだ! 魔族はいたんだ!


 【べしっ】

 僕は自分の体が、魔族に潰されるのを感じた。意識がなくなっていく…。

 長老の言う事を聞いていればよかった…。


    END

 

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