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天才少女たちの推し活~~異世界召喚された俺、なぜかフィクション扱いされて悲鳴を浴びる

作者: ぽこぽこ300
掲載日:2026/02/23

 明日から始まる高校生活。名門・帝凰学園。最初は諦めていた。けど、応援してくれる依織ともハルカのお陰で、なんとか奨学金を勝ち取れた。

 維持するには弛まぬ努力が要求されるだろう。でも、それ以上に――今は嬉しい。


 部屋の扉を開け、最高の一日を始めるはずだった。

 ……ハズだったのだ。


 だが、扉の向こうは見たことのない世界で、少女たちが俺を囲んでいた。


「き、きた……!」

 眼の前の少女が息を呑む。眼鏡越しに零れ落ちそうな瞳を限界まで見開き、次の瞬間――


「きゃああああああっ!!」


 耳をつんざく悲鳴。

 え、なに? だれ? 誘拐? 俺なにか間違えた? 完全にパニック状態だ。目の前の少女は、泣きそうな顔で俺を指さしてんだけど。


「ま、待って! 落ち着いて! 俺、何も――」

 言い終える前に、左右に控えていた少女たちまで一斉に距離を詰めてきた。


「本物……本物だ……」黒髪の少女は美術品でも鑑賞するかのような感想で。

「やばい、成功しちゃったよ……」ツインテールの少女は呆然と言った。

「ねえ、見て! この目元のほくろ! 挿絵通り……」


 口々に言う。


 挿絵? 何を言っているんだ。


 他人に指を刺されるのは気まずい。混乱のまま、視線を落とすと床には歪んだ円陣があった。黒板にチョークで書いたみたいな線が、石畳に焼き付いている。


 不意に、冷たい風が吹き込んだ。顔を上げると、小さな窓が天井の高い部屋にいくつもついている。

 窓の外には、赤色の月が二つ。


 ……うん、これ、俺の世界じゃないな。


 異常事態だと理解した瞬間、背筋が凍る。背後には少女たちの気配――俺を見ている。


「お、お前ら……誰だよ。ここ、どこ――」

「あなたは」

 ツインテールの少女が、拳を握って言った。目は異様に爛々と光っており、俺の言葉が通じているとは思えない。


「トウジョウ・スズ様、ですよね?」


 たしかに、俺は東城すずだ。個人情報を握られている?どのみちごまかしようがない。頷いてみせると、隣のメガネの女――最初に俺に悲鳴を上げた女だ――が俺の手を取り食い気味にいった。

「わ、わたしっ、アルヴィラ・アムールといいます!! ぜ、ぜひ、アルとと、読んでください! その、名前で呼ばれるの……私、ずっと……っ」


 アルが俺の手に触れた瞬間、ツインテの子の肩がピクリと跳ねた。ブルブルと震え、次の瞬間にはアルの手を引き剥がして吠えるように言った。


「スズ様はハルカ様以外とそういう空気にならないのよ! そこ、崩したら全部終わるの!」

「カミリー。訂正を要求する。イオリとハルカ以外、である。 原作第21話を忘れたか?」


 なんでこいつらが二人の名前を知っているんだ!?


「おい、なんでイオリとハルカの名前を、」


 俺は思はず、黒髪の少女のにんまりとした不気味な笑みに固まった。少女はアル、カミリーと呼ばれた少女たちに向かって誇らしげに言う。


「聞いたか? やはり僕は正しかった! イオリと、ハルカ! イオリが先なのだ!!」

「だまりなさいエデラ!! あんたの妄想を打ち砕く根拠なら原典に死ぬほどあるのよ!!」

「ふ、ふたりとも落ち着いてっ」


 もはや俺の存在を忘れたかのように、取っ組み合いになる少女たち。

「おい、どういうこと――」


「――いい加減になさい。 私が協力したときの条件を忘れたの?」


 奥から、ひときわ小柄な少女が現れた。存在にすら気づいていなかったのに、第九に見合わぬ圧倒的な威圧感を放ち、その場の全員が彼女の次の言葉を待った。


「貴方を召喚したのは――貴方の持つ、聖なる治癒の力、あなた達の言葉で、超能力を使ってもらうためよ」

 冷酷な目。明らかに俺を対等な人間として見ない目で彼女は言った。


「あっ、ち、わ、わたしは違いますから!」「私だって!」「僕も違うよ!」

「そうね、その三馬鹿は違うけど……私は、貴方を必要としているの。 協力しないというのなら」


 ゆらりと、彼女を取り巻く空気が殺気へ変わる。

 さっきまでもみくちゃになっていた三人の少女は、俺を守るように前に出た。だが、不安そうに振り返り、自信なさげに手を握りしめている。


「ご、ごめんなさい。いきなり巻き込んで、驚くかもしれないけど、イオリ様は――」


「……原典だ」

 エデラが、淡々と口を挟んだ。

「イオリは原典に登場する人物。君の世界の人間じゃない。――この世界の物語の登場人物だ」


「は?」


 俺が声を漏らすと、エデラは視線を床の魔法陣へ落とした。

「僕らが改造した召喚は、実在じゃなく概念に触れる。だから呼べた。――あなたを」

「な、なにをいって……」


「ち、違うの、怖がらせたいわけじゃ……!」

 アルが慌てて割って入る。

「スズ様は、この世界で……本当に本当に有名で……古典で……。だから、私たち、推しを――」


 どうしたら俺に伝わるのか、途方に暮れてた彼女は、もっと端的に言うことにしたらしい。


「……あなたは、ここではフィクションなの」

「フィクション? 超能力? お前らは、なにいっってんだ……?」

 

 アルは地に頭をこすりつける勢いで、リーダー格らしき女に向き直った。

「も、申し訳ありまんせん、フリージア様! スズ様はっ」

 アルを無視して、フリージアは俺をみた。絶望を宿し、わなわなと震えながらも、威厳を宿した振る舞いで最後の確認をした。


「――答えなさい。 あなた、今物語のどこにいるの」




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