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ファイル

二人は迷路の中を慎重に進んだ。

両側には終わりのない書類棚がそびえ立ち、規則性なく入り組んだ狭い通路を作っている。頭上の蛍光灯は不規則に明滅していた。

時折――

警備員が現れる。

武装し、無言で、すでに照準を合わせている。

遭遇は毎回同じ結末を迎えた。

銃声。

崩れ落ちる死体。

三度目の衝突の後、カーターは落ちていたライフルを一本拾い上げた。

クリストファーも別の一本を手に取る。

今や二人はそれぞれ二丁ずつライフルを抱えていた。重いが、その重みは妙に安心感を与えた。

ほとんど会話はない。

ただ進む。

曲がり角をいくつも越えて。

左。右。行き止まり。また通路。

やがて――

迷路が開けた。

ちょうど中央に円形の空間がある。

その中心には金属製の机。

上には一台のコンピュータ端末。

画面はすでに点いていた。

カーターがゆっくりと近づく。

クリストファーは周囲を警戒する。

画面にはディレクトリとアーカイブ文書が並んでいた。

ひとつのフォルダが目を引く。

THE DEAD SPACE

カーターはクリックした。

次々とファイルが画面を埋める。

報告書。

観察記録。

心理研究。

彼は素早く目を通した。

「……別次元だ」

彼はつぶやいた。

クリストファーは廊下から目を離さない。

「何だって?」

「……リミナルな環境で満ちてる。終わりのない構造物。空っぽの場所。」

スクロールする。

「ここに危険はないはずだった。敵対存在は記録されてない。」

クリストファーが乾いた笑いを漏らす。

「そりゃ安心だな。」

カーターは読み続けた。

「……この階層は乗っ取られてる。」

わずかに動きが止まる。

「ウェストブリッジ・リサーチ・ファウンデーションって会社に。」

その名前は重かった。

どこか聞き覚えがある。

その瞬間――

六発の銃声が空気を裂いた。

カーターが振り返る。

開けた空間の端で、六人の警備員がほぼ同時に崩れ落ちた。

煙を上げるライフルを下ろしながら、クリストファーが叫ぶ。

「ヤバい、行くぞ!」

「ちょっと待て!」

カーターは端末に向き直り、印刷を始めた。

紙が勢いよく次々と吐き出される。

彼はそれらをまとめてジャケットに押し込んだ。

遠くから足音が響く。

クリストファーがリロードする。

「急げ!」

カーターは最後のページを一瞥した。

「出口がある……ここに書いてある!」

クリストファーが鋭くうなずく。

「なら行くぞ!」

二人は再び迷路へ駆け出した。

カーターが先導し、印刷された地図を見ながら棚の間を縫う。

やがて――

一つの書類棚の前で止まる。

引き出しが開いている。

中は空。

他と違う。

カーターがクリストファーを見る。

「ここだ。」

ライフルを一本背にかけ、彼は空の引き出しの中へ登り込んだ。

中は不自然なほど深い。

クリストファーも迷わず続く。

闇が二人を飲み込んだ。


カット――

施設の奥深く、無機質な会議室。

ケアルは立っていた。

向かいには研究責任者の一人。青白い顔。疲弊した目。

「その場所にすら入れないのか?」

ケアルは淡々と尋ねる。

研究者が眼鏡を直す。

「入ることは……可能です。しかし危険です。開くには一秒だけでも莫大なエネルギーが必要で――」

ケアルは椅子にもたれかかる。

「ですが……デッドスペース内部にある物体が役立つかもしれません。ペンほどの小さな金属製の物体です。受動的に莫大なエネルギーを放出しています。ただし接触した物体を焼き尽くします。」

ケアルはじっと見つめる。

「金属だと言ったな。」

「はい。」

「磁石は試したか?」

研究者が瞬く。

「……いえ、しかし――」

「本気か?」

苛立ちが滲む。

「お前らは本当に無能だな。」

室内が凍りつく。

「磁石を使え。」

カエルは冷たく言った。

「回収しろ。そして恒久的なゲートを開く。」

「ただちに。」


カット――

カーターとクリストファーは濡れたタイルの上に転がり出た。

塩素の匂いが漂う。

巨大な屋内プール施設。

白いタイル。静止した水面。

無限に広がる迷路のような構造。

やがて――

広い空間へ出る。

床の中央に七匹の小さなカエル。

鮮やかな緑。

完全に静止。

「見えてるよな……?」

クリストファーがつぶやく。

「……ああ。」

彼は一歩踏み出す。

「普通かもしれない。」

「クリス――」

遅かった。

触れた瞬間――

彼の肩の力が抜ける。

ライフルが床に落ちる。

瞳孔が開く。

世界が滲む。

「……すげぇ……」

感覚が鈍る。

音が遠のく。

色が溶け合う。

カーターが掴む。

「クリス! しっかりしろ!」

クリストファーはかすかに笑った。


カット――

施設。

強化室内で円形ゲートが開く。

カエルは迷いなく通過する。

向こう側――

書類棚の中央空間。

「磁石を使うだけでよかったのに。」

彼は呟く。

背後でゲートが消える。

警備員が駆け寄る。

「民間人二名が暴走中です。」

カエルは無表情。

「案内しろ。」

引き出しの前。

開いた空間。

「本気か?」

「ええ。」

銃声が響く。

カエルは舌打ちし、中へ入る。

闇。


起伏の激しい丘陵地帯。

遠くに小さな木造小屋。

中にはラジオ。

その上に白く光る球体。


2日前

父のオフィス。

カエルはパソコンを見つめている。

「S-002……ヘルパー。」

白い球体は「デッドギフト」を与える存在。

デッドギフト――

デッドスペース内の現象との接触によって付与される能力。

効果は多岐にわたる。

操作、改変、その他の異常機能。

範囲:不明。

「……ほぼ何でもありの能力か。」


現在。

球体が閃光を放つ。

宇宙空間。

星々。静寂。

瞬時に小屋へ戻る。

ラジオが液状化する。

銀色の流体が手に吸収される。

エネルギーが全身を駆け巡る。

球体は弱まる。

カエルは自分の手を見る。

無傷。

だが――強い。

ゆっくりと息を吐く。

「……これが俺のデッドギフトか。」


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