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転生したら錬金術が得意な貴族家の女の子でした  作者: 双葉アリア
第一章 幼少期編

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76話 知られざる護衛、影の守護者

――王城・大広間


エレノアが、陛下より伯爵位を賜った翌日。


王城の大広間には、百名の騎士と魔導士で構成された部隊が集められていた。


整然と並ぶその姿は、他の騎士団とは明らかに異なっている。


騎士たちが身に着けている鎧は、王国騎士団のものとは意匠が違っていた。

深い蒼色を基調とした金属の上に銀の装飾が施され、光を受けて静かに輝いている。


胸甲の中央には、この部隊だけに許された紋章が刻まれていた。


王権を象徴する王冠。

そして、その下に描かれた錬金術のフラスコ。


さらにそれらを囲むように、簡素な魔法陣の円紋が刻まれている。


王命によって創設された証――

王命錬金護衛隊の紋章である。


魔導士たちのローブもまた、同じ意匠だった。

深い蒼色の布地に銀糸で紋章が刺繍され、裾には魔力を通すための術式が織り込まれている。


騎士と魔導士。


そのどちらもが、同じ紋章と同じ隊色を纏っていた。


遠目から見ても、彼らが他のどの部隊とも違う存在であることは一目で分かる。


壇上には、陛下と宰相に加え、この国の重鎮と呼ばれる者たちの姿があった。


大広間全体を、厳かな空気が支配している。


その静寂を破るように、宰相が一歩前へ進み出た。


そして、高らかに宣言する。


「これより――」


「新部隊、王命錬金護衛隊の始動式を執り行う!」


その言葉が響いた瞬間、整列していた百名の騎士と魔導士が一斉に姿勢を正した。


宰相はそのまま、広間に集まった騎士たちを見渡しながら続ける。


「この部隊は、セレスティア伯爵専属護衛部隊として編成された」


その言葉に、大広間の空気がわずかに張り詰める。


王命によって創設された特別護衛部隊。


その任務はただ一つ。


――セレスティア伯爵、エレノアの護衛である。


そしてそれは、王国史上でも極めて異例のことであった。


宰相は一度言葉を区切ると、ゆっくりと後ろへ下がった。


代わって、壇上の中央へ歩み出たのは国王――

セドリック・フォン・セレディア陛下である。


陛下は静かに広間を見渡した。


その視線には、王としての威厳と確かな決意が宿っていた。


「諸君らは、すでに聞き及んでいるだろう」


低く、しかしよく通る声が大広間に響く。


「セレスティア伯爵――エレノア嬢は、我が王国に多大なる功績をもたらした」


騎士たちは微動だにしない。

だが、その場の空気がわずかに引き締まったのが感じられた。


「王族の命を救い、王国の民を救い、そしてこの国の未来に新たな可能性を示した」


陛下はゆっくりと言葉を紡ぐ。


「彼女は――王国の宝である」


その言葉に、大広間の空気が重く静まり返った。


しかし次の瞬間、陛下の表情がわずかに厳しくなる。


「だが同時に――それは彼女を狙う者が現れる可能性を意味する」


騎士たちの間に、わずかな緊張が走った。


「彼女の知識、技術、そして力……それらは国家にとって極めて大きな価値を持つ」


「ゆえに、それを奪おうとする者が現れても不思議ではない」


陛下は広間をゆっくりと見渡す。


「国外勢力、闇の組織、あるいは愚かな貴族」


「理由はどうあれ、彼女を狙う者は必ず現れるだろう」


大広間の空気が、さらに張り詰めた。


そして陛下は、はっきりと言い放つ。


「ゆえに余は決断した」


「この件を――王冠案件とする」


その瞬間、広間にいた重鎮たちの表情がわずかに変わった。


王冠案件。


それは王国において、国王の名と権威をもって直接扱われる最上位の国家案件。

通常の騎士団や貴族の管轄を超えた、王命直轄の特別措置である。


「そして、その王冠案件として――」


陛下は整列する騎士たちを見据えた。


「新たに創設した部隊が、ここにいる諸君らだ」


「王命錬金護衛隊」


「諸君らは、王命により編成された特別部隊である」


陛下の声が、大広間に力強く響く。


「なおこの部隊は、王国騎士団の指揮系統から独立する」


「余の名の下にのみ行動する部隊とする」


その言葉に、広間の空気がさらに重くなる。


王国騎士団からの独立。

それはつまり、この部隊が国王直轄の特務部隊であることを意味していた。


「諸君らの使命はただ一つ」


「セレスティア伯爵――エレノアを守れ」


「その身に危険が及ぶことを、決して許すな」


その命令に、百名の騎士と魔導士が一斉に膝をついた。


鎧の擦れる音が、大広間に響く。


そして、力強い声が揃って響いた。


「「「はっ!!!」」」


百名の声が、大広間に響き渡る。


その返答を受け、陛下は静かに頷いた。


「よろしい」


「セレスティア伯爵の身の安全は、王国の未来に関わる」


「決して疎かにすることは許さん」


そう告げると、陛下は宰相へ視線を送った。


宰相は一礼し、前へ進み出る。


「王命錬金護衛隊は、本日この時より正式に任務を開始する」


「詳細な護衛計画および指揮官の選出については、これより作戦会議にて決定する」


「――全員、会議室へ」


その言葉をもって、始動式は静かに幕を閉じた。


――王城・大会議室


王城の奥にある大会議室には、長い楕円形の会議卓が設けられていた。


壁には王都の大きな地図が掲げられ、机の上にはいくつもの資料が並べられている。


そこへ、蒼色の鎧とローブを纏った騎士と魔導士たちが次々と入室していった。


胸に刻まれた紋章――

王冠とフラスコの印が、灯りを受けて静かに輝いている。


やがて百名全員が部屋の中へ集まると、会議室は一気に緊張した空気に包まれた。


宰相が中央に立ち、静かに口を開く。


「諸君」


「ここからは、実務の話になる」


室内が静まり返る。


「現在、セレスティア伯爵の護衛は全面的に騎士団が行っている。だが、今後は騎士団とこの部隊が合同で護衛に当たることになる」


宰相は一度言葉を区切り、集まった騎士と魔導士たちを見渡した。


「王命錬金護衛隊は、主にセレスティア伯爵の身辺警護を担当する予定だ」


「門前の警備や周辺の警戒については、従来どおり騎士団が担当する」


「つまり――」


「外周警備は騎士団」


「そして、伯爵の近接護衛および屋敷内部の警備は王命錬金護衛隊が担う」


その言葉に、会議室の空気がわずかに引き締まる。


宰相はさらに続けた。


「ただし――」


「移動時の護衛については王命錬金護衛隊が主導する」


「セレスティア伯爵は錬金術師であり、王冠案件の対象でもある」


「ゆえに、外出時にはこの部隊が中心となって護衛体制を構築する」


騎士や魔導士たちは黙ってその説明を聞いていた。


宰相はゆっくりと周囲を見渡す。


「以上が、騎士団との基本的な役割分担だ」


そして、静かに次の話題へと移った。


「――さて」


「次に決めるべきことがある」


「この部隊を率いる部隊長と副部隊長だ」


会議室の空気が、さらに引き締まった。


「誰か立候補する者はいるか?」


宰相のその問いに、静まり返っていた室内で椅子が引かれる音が二つ響いた。


一人は騎士。

もう一人は魔導士。


男女二人が、同時に立ち上がる。


その視線が自然と二人へ集まった。


宰相は静かに問いかける。


「所属は?」


先に口を開いたのは、鎧を纏った青年だった。


「近衛騎士団所属! アランです!」


張りのある声が会議室に響く。


続いて、隣に立つ魔導士の女性が一歩前へ出た。


「魔導士団に所属していました。ミィナです」


落ち着いた声だった。


騎士と魔導士。


王命錬金護衛隊の指揮官に立候補した二人へ、

百名の視線が静かに注がれていた。


「他に立候補する者はいないか?」


宰相の問いが静かに会議室へ響く。


しかし――

それに応える者はいなかった。


百名の騎士と魔導士たちは静かに前を見据えている。


やがて宰相は小さく頷いた。


「……よろしい」


「立候補はこの二名のみ、ということだな」


そう言うと、控えていた侍従が小さな木箱を運んできた。


宰相は箱の中を軽く示す。


「今回は立候補者が二名のみ」


「よって――くじで決める」


箱の中には二枚の札。


一枚には「当たり」。

もう一枚には「外れ」。


「当たりを引いた者を部隊長とする」


会議室の空気が静まり返った。


アランとミィナは一瞬顔を見合わせ、小さく頷く。


そして二人は順に箱へ手を入れた。


先に札を引いたのは――アランだった。


ゆっくりと札を開く。


そこに書かれていた文字は――


当たり


わずかなざわめきが会議室に広がる。


宰相は静かに宣言した。


「アラン」


「貴殿を王命錬金護衛隊の部隊長に任命する」


アランは背筋を伸ばし、力強く敬礼した。


「はっ!」


続いて宰相はミィナへ視線を向ける。


「ミィナ」


「貴殿を王命錬金護衛隊の副部隊長とする」


ミィナも静かに一礼した。


「承知しました」


こうして――

王命錬金護衛隊の指揮官が決定した。


宰相は軽く頷き、すぐに次の指示を出す。


「では、直ちに騎士団との護衛引き継ぎを行う」


「セレスティア伯爵の屋敷へ向かえ」


「本日より護衛体制を移行する」


その言葉に、会議室にいた騎士と魔導士たちが一斉に立ち上がった。


「王命錬金護衛隊、出発する」


アランの声が響く。


部隊は整然とした隊列を組み、王城を後にした。


――王都・貴族街


ほどなくして、目的の屋敷が見えてくる。


すでに門前には騎士団の兵士たちが配置されていた。


アランは門前で足を止める。


騎士団の隊長らしき男が歩み寄ってきた。


「王命錬金護衛隊の方々ですね」


「本日より護衛任務を引き継ぐと聞いております」


アランは静かに頷いた。


「王命錬金護衛隊、部隊長のアランだ」


「これよりセレスティア伯爵の身辺警護を引き継ぐ」


騎士団の隊長はすぐに敬礼した。


「了解しました」


「屋敷内部および近接警護をそちらへ移管します」


門がゆっくりと開かれる。


王命錬金護衛隊の騎士と魔導士たちが、整然とした動きで敷地内へ入っていった。


こうして――


セレスティア伯爵の護衛任務は、

騎士団から王命錬金護衛隊へ正式に引き継がれた。

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