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[毎日更新中]転生したら錬金術が得意な貴族家の女の子でした  作者: 双葉アリア
第一章 幼少期編

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16話 王城での評価、そして露見した力②

エレノア・フォン・レーヴェンは、王城で自身の魔力と能力を鑑定されることになった。

鑑定官たちは慎重にその力を確認し、エレノアの秘めた可能性と特異な魔力に気づく。

しかし、鑑定の結果の詳細はまだ明かされず、王城の人々も含め、誰もその全貌を知ることはできない。


――そして、これからその真価が明らかになる瞬間が訪れようとしていた。

王城の謁見の間――昼近く、天井の高い窓から柔らかな陽光が差し込み、玉座の間を温かく照らしていた。

騎士や文官たちは整列し、静かに陛下の玉座を見守る。私も少し緊張しながら深呼吸をひとつする。

今日ここに呼ばれたのは、単なる儀礼ではないことを、胸の奥で直感していた。


陛下の玉座の前には、王宮鑑定官が静かに控えている。

その沈黙には礼節以上の重みがあり、鋭い視線が私の心拍を少し速める。


「エレノア・フォン・レーヴェン嬢……準備はよろしいか」


陛下の落ち着いた声が、静かに謁見の間に響く。

私は小さく頷き、手元のペンダントに触れる――六歳の誕生日に精霊王様から授かった、大切な加護の証。


深く息を整え、心を静める。

そして、私の前に歩み寄る鑑定官の声が、静かな緊張と期待を伴って響いた。


「恐れ入ります、エレノア様。鑑定を行わせていただきます。少々、お手を拝借してもよろしいでしょうか」


「はい……」


私は小さく頷き、鑑定官の前へと一歩進み出た。


鑑定官は深く一礼すると、静かに私を見据える。


「では――鑑定させていただきます……」


次の瞬間、鑑定官の瞳の奥に淡い光がふわりと宿った。

まるで水面に揺れる月光のような、静かで神秘的な輝き。


その視線が私を捉えたまま、謁見の間に緊張が満ちていく。


――そして。


「……っ!? こ、これは――……!」


思わず漏れた声が、静寂を破った。


鑑定官ははっと我に返り、慌てて口元を押さえる。

しかし、その瞳に宿る光はわずかに揺れ、明らかな動揺が見て取れた。


「……も、申し訳ございません、陛下。あまりにも……予想外で……」


一度深く息を整えたのち、鑑定官は静かに頭を下げる。


「恐れながら――結果の正確性を期すため、補助鑑定官二名による再鑑定を願えますでしょうか」


陛下は一瞬だけ目を細めたが、すぐに頷いた。


「よかろう。正確を期すのは当然だ」


控えていた二名の鑑定官が前へ進み出る。

一人目の瞳にも同じように淡い光が宿り、私を静かに見据えた。


数秒の沈黙。


「……なっ……」


声にならない驚きが漏れる。

続く二人目も鑑定を行い――そして、ゆっくりと光を消した。


三人は互いに顔を見合わせ、小声で結果を確認し合う。

やがて最初の鑑定官が一歩前に進み、深く頭を下げた。


「……陛下。三名による鑑定結果――相違、ございません」


謁見の間の空気が、ぴたりと止まったかのように静まり返る。


「ご報告申し上げます!

エレノア・フォン・レーヴェン子爵家令嬢の鑑定結果は、次の通りでございます。

使用可能なスキルは、風属性、水属性、錬金魔法に鑑定……そして大地の精霊魔法でございます……!

また、加護と思われるものと称号も確認いたしました。

申し上げても差し支えございましょうか?」


鑑定結果が報告されると、謁見の間は一瞬、ざわめきに包まれた。

騎士や文官たちの間で小さな息遣いが漏れ、玉座に座る陛下の視線も一層、静かに鋭くなる。


「皆、静粛に! 鑑定官……続けて構わぬ」


陛下の声が響くと、ざわめきはぴたりと止まった。


「では、申し上げます。

称号は――未来を託されし者……そして、大地の精霊王の愛し子でございます!」


その言葉が伝わると、再び場内は小さな衝撃と興奮に包まれる。

誰もがその意味に驚きを隠せず、ざわめきは再び広がったが、陛下の落ち着いた眼差しが空気を鎮める。


「え……」


私は自然と手を前にかざし、瞳に淡い光を宿す。

――鑑定。


自分自身に向けて魔力を巡らせ、スキルを発動する。

すると、鑑定官が報告した内容と同じ数値と称号が、瞳の奥に浮かび上がった。


【鑑定結果】

名前:エレノア・フォン・レーヴェン

種族:人間(子爵家貴族)

職業:錬金術師

HP:450

MP:1300

スキル:

・鑑定(6/10)

・大地の精霊魔法(4/10)

・錬金魔法(6/10)

・風属性(3/10)

・水属性(4/10)

称号:

・大地の精霊王の愛し子

・未来を託されし者


大地の精霊王の加護があることは知っていた。

しかし――いつの間にか加護から「大地の精霊王の愛し子」になっていたことに驚きを隠せなかった。


胸が大きく揺さぶられる。

驚きと、言葉にしきれない重みが同時に押し寄せてくる。

鑑定官の報告と完全に一致する結果を、自らの力で確認したことで、改めてその事実の重大さを実感する。


これは単なる魔法の能力や加護の話ではない。

以前から受けていた精霊王の加護が進化し、「愛し子」と認められる存在となったこと。

その名に伴う意味と責任の重さを、胸の奥でひしひしと感じる。


静かな感動と覚悟が、自然に心に芽生える。

これから自分は、精霊王に認められた者として、その期待を背負って生きていく――。


その時、謁見の間の空気が微かに震え、温かみのある風と緑の香りが満ちた。

視線を上げると、巨大な大地の精霊王が、堂々と謁見の間に顕現していた。

その長い髪は大地の色を帯び、体には蔦や葉が絡み、肩から腕にかけて枝葉が伸びている。

人々の視線が一斉に集まり、誰もが息をのむほどの威容と、しかし圧迫感のない温かさを放っている。


「ついに、ばれてしまったか……」

静かに、しかし力強く告げる声は、謁見の間にいる者すべてに届いた。

騎士や文官、王妃の顔までもが思わず目を見開き、ざわめきが走る。


「何者だ!!!!」


一人の騎士が叫ぶと、周囲の騎士たちは一斉に警戒態勢に入った。


「この方は敵ではありません! 大地の精霊王様です!」


「やめんか!!」


陛下が声を上げると、騎士たちは警戒を解き、武器を収めた。


「別に隠すつもりはなかったし、口止めもしていなかった。

だが、ちょいちょい大地の精霊魔法を使うよう助言したり、ベヒーモスとの戦いで私がエレノアの叫びに応えて大地の精霊魔法を行使したとなれば、疑われるのも当然だな」


大地の精霊王様は続ける――


「いい機会だ、ここにいる全ての者に一つ警告しておこう。

エレノアは純粋で心優しい子だ。

そんなエレノアを愛している」


その慈愛に満ちた眼差しのまま、精霊王は告げる。


「もし我が愛し子エレノアに危害を加える者、あるいは深く悲しませる者があれば……神の領域に連れて行き、私が直接護ることになる。

過去にも加護を授けた者はいるがエレノアはその者たちと違う。

私が神族でなければ結婚を申し込む程愛している」


その言葉に、謁見にいる全員が静まり返る。

騎士たちは無意識に背筋を伸ばし、文官たちは口をつぐみ、王妃の表情も驚きと畏怖が入り混じったものに変わった。

精霊王の顕現は、誰もが見える形で存在しており、その威光と慈愛を同時に感じ取っているのがはっきりと分かる。


言い終えると、精霊王はゆっくりと枝を閉じ、静かにその場を去った。

残された謁見の間には、驚きと畏怖が入り混じった静けさが広がった。

全員の視線が私に向けられ、胸の奥に改めてその重さを感じた。


謁見の間には、さっきまで顕現していた大地の精霊王の威容が、まだ空気の残響のように感じられた。

王族や騎士、文官たちは、思わず息を呑んだままその場に立ちすくむ。

普段は落ち着いた陛下や王妃の表情にも、さっきの出来事の驚きが色濃く残っているのがはっきりと分かる。


陛下はわずかに眉を上げ、静かに言葉を紡いだ。


「――本日、この場で知り得た出来事については、決して外部に漏らしてはならぬ。

許可なく口にした者は、立場や身分に関わらず厳罰に処すことを、改めて申し添えておく」


その言葉に、場内は再びぴんと張り詰める。

騎士たちが背筋を伸ばし、文官たちが神妙な面持ちでうなずく。

王妃も軽く息を呑み、驚きと畏怖を混ぜた表情のまま、静かにうなずいている。


私は深く息を整え、視線をゆっくりと前に戻す。

謁見の間にはまだ、さっきの出来事の余韻が残っている。


「――あの魔法は、やはり大地の精霊王が……?」


陛下の静かな問いかけに、私は小さく頷く。


「はい……私が命じたものではありません。

状況に応じて、大地の精霊王が応えてくださったのだと思います」


陛下は静かに目を細め、考えるように視線を巡らせる。


「なるほど……なぜ、あの時顕現されたのかの理由は、エレノア嬢はおおよそ見当がつくのかい?」


「ええ……恐らくですが……」


私はペンダントを手に取り、静かに陛下へ差し出す。


「これは、私が六歳の誕生日の時に精霊王様から頂いたものです。

精霊の加護が付与されていて、私に危機が訪れたら私の元へ来れるようになっていると言われました」


陛下は柔らかな眼差しで私を見つめ、静かに声をかけた。


「エレノア嬢……よければ、そのペンダントも鑑定してよいか?」


私は少し驚きながらも、小さく頷く。


「はい……もちろん、陛下」


陛下は微笑み、鑑定官に目配せをする。


「では、王宮鑑定官。ペンダントの鑑定を行うがよい」


鑑定官は深く一礼し、慎重にペンダントを手に取る。


「恐れ入ります、エレノア様。鑑定を開始いたします……少々お手を拝借してもよろしいでしょうか」


「はい、どうぞ」


私が手のひらに載せたペンダントを差し出すと、鑑定官は瞳に淡い光を宿し、慎重に見つめる。

その静かな光に、謁見の間の空気が再び引き締まる。


しばらくして、鑑定官は深く息を整え、低く報告した。


「陛下……このペンダントの詳細な鑑定結果は、エレノア様以外には表示できません。

外部に伝えることはできず、鑑定不能として処理いたします」


私は静かに頷き、ペンダントをそっと握りしめた。


陛下は優しく微笑み、穏やかに言葉をかける。


「よいのだ、エレノア嬢。そなた自身が確認できれば、それで十分である」


謁見の間にいる全員は、あのペンダントの力の詳細を知ることはできない――それが、私に課せられた秘密である。


私は胸の奥で静かに息をつき、ペンダントを握りしめた。

今日、目の前で起きたこと――大地の精霊王の顕現、魔法の発動、与えられた称号――すべては、誰にも軽々しく語れない特別な瞬間なのだと、改めて深く実感する。


謁見の間には微かな静寂が戻り、陛下の優しい眼差しが私を包み込むように注がれる。

その温もりを感じながら、私は改めて、この秘密を守る覚悟を胸に刻んだ。


謁見の間に静寂が戻ったあと、陛下は玉座の上から優しい笑みを浮かべ、私に声をかけた。


「エレノア嬢……今日の尽力に対し、褒美を授けたいと思う。欲しいものは何かあるかね?」


私は少し戸惑いながらも、静かに首を振る。


「いえ……私は錬金術士として、できることをやったまでです。特別な褒美など、必要ありません」


陛下は私の答えに目を細め、微かに頷かれた。


「なるほど……そうか。しかし、そなたの行動はこの街に大きな被害をもたらさず、多くの人命を守った。そなたにとって、何よりの褒美はそれに他ならぬ、ということか」


私は少しだけ微笑み、胸の奥で静かに頷いた。


「はい……この街が無事であったことこそ、私にとっての一番の褒美です」


陛下は静かに目を細め、しばし私を見つめる。

その眼差しには、思わず息を呑むほどの優しさと温かさが宿っていた。


「確かに……精霊王が言っておった通り、そなたは心優しいな」


その言葉に、謁見の間の空気がふっと和らぐ。

陛下の笑顔は厳格さの中にも温もりをたたえ、騎士や文官たちも自然と肩の力を抜いて見守っている。


その穏やかな空気の中、陛下は改めて口を開かれた。


「エレノア嬢……この国の王として、そなたにお願いがある」


私は少し驚き、顔を上げて静かに訊ねる。


「はい……何でしょうか、陛下」


「そなたの作るポーションの効能について、報告が届いておる。非常に高い効果があり、適切に使用すれば多くの命を救えるとのことだ」


胸の奥で、少しだけ誇らしさと緊張が入り混じるのを感じた。


「そこでだ……この国に、そなたの錬金術の店を設けてほしい」


「店……ですか?」


陛下はゆっくりと頷き、説明を続ける。


「我が国のポーションは、品質が一定せず、効果が安定しないものも多い。そのため、十分に効果を発揮できずに命を落とす者もいると聞く。しかし、エレノア嬢のポーションであれば、そのような不安はほとんどない。王城だけでなく、一般市民のためにも、そなたのポーションを活用できるようにしてほしい」


「そ……それは……」


「土地や建物などの準備は、こちらで整えよう。そなたには、錬金術士としての腕を存分に発揮してもらえればよい。どうか、お願いしたい」


私はしばし考え、深く息を整える。


「……承知いたしました。陛下のお言葉に従い、できる限りのことをさせていただきます」


陛下の口元に、静かで穏やかな笑みが浮かぶ。


「よかろう……そなたなら、きっとこの国の民のために役立ててくれると信じておる」


私は頷き、心の奥で、これから自分に課せられる責任と期待を静かに受け止めた。


そして陛下は、さらに柔らかい声で付け加えられた。


「エレノア嬢……そなたの行い、確かに錬金術士としてできることをやっただけかもしれぬ。しかし、その功績は決して軽んじられるものではない。王国や民のために尽くしたその働きは、称賛に値する」


私は少し戸惑いながらも、静かに頭を下げる。


「……ありがとうございます、陛下。でも私は、できることをしただけですので……」


陛下は優しく微笑み、手を軽く挙げられた。


「そうか、わかっておる……だがな、次は遠慮せずに褒美を受け取ってほしい。そなたの働きは、それだけ価値あるものなのだから」


その言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなる。

私は静かに頷き、今日の出来事と陛下の温かさを改めて心に刻んだ。

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