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転生したら錬金術が得意な貴族家の女の子でした  作者: 双葉アリア


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1話 小さな令嬢、魔法の名門に生まれてしまう

転生――。

それは誰もが一度は耳にし、同時に憧れるものだった。

けれど非現実的で、現実には決して起こりえないはずのこと。

そう思っていた。


でも、実際は違った。


「……え?」


学校の帰り道、横断歩道を渡っていたときのこと。

一台のトラックと衝突し、十五年の短い人生を終えた――はずだった。


だけど――

そこには、知らない男の人と女の人、そして小さな子供たちが穏やかに微笑んでいた。


「とてもかわいい女の子だな……」


そう、優しく声をかけられて、

私は抱き上げられた。


「夢でも見ているのかな……それとも走馬灯?」


触れられた感触や、人の温もりは確かにある。

でも、なぜなのか、私はとても混乱していた。


体は小さく、赤ちゃん――でも頭の中の私は前世の記憶のままだ。

これが……転生、ということなのだろうか。


「名前、どうしましょう……?」


男の人と女の人は、少し考え込んでいる。


「エレノアはどう? とても賢く育ちそうだと思わない?」

「いいわね!」


「よし、君の名前はエレノア……エレノア・フォン・レーヴェンだ!」


「ま…まって! わ、わたし……さ、さ、桜井…紗月…!」


叫んだつもりなのに、声は赤ちゃんの泣き声のようになり、誰にも届かなかった。


「あら、とても元気がいいわね!

ほら、アメリア。ルーカスも優しく触ってごらんなさい」


女の人の声は、とてもやさしくて穏やかだった。


「とてもあたたかいわね……」


「わぁ……すごくかわいい」


ルーカスとアメリアが、私の小さな頭をそっと撫でてくれる。

その感触は、体は赤ちゃんでも、私の心にはしっかりと届いた。

赤ちゃんの体で感じるあたたかさと、前世の私の意識が交わる、不思議な感覚だった。


五年後――

私は大きな病気にかかることもなく、すくすくと成長していた。

今ではお姉様やお兄様と一緒に、日々魔法の訓練に励んでいる。


今世のお父様はレオンハルト・フォン・レーヴェン。

お母様はフィオナ・フォン・レーヴェン。

代々魔導師を輩出する子爵家らしく、私も魔導師になるのは既定路線……のはずだった。

だが、いくら練習しても魔法はまったく発動しない。


「「ウィンドカッター!」」


お姉様もお兄様もそう唱えると、鋭い風が生まれ、空中を切り裂いた。

前世は魔法とは無縁の世界だったから使えないのか。

それとも、まだ五歳だからなのか。

この時の私は、はっきりとはわかっていなかった。


「エレノアはまだ五歳だし、魔法を発動するための感覚を磨かないと無理じゃないかなー?」


「大丈夫よエレノア。そのうちできるようになるから、心配しなくていいのよ」


お兄様とお姉様は優しく語りかけてくれ、そっと頭を撫でてくれた。

うーん、と悩んだ末、私は自分自身を鑑定してみることにした。


名前:エレノア・フォン・レーヴェン

種族:人間(子爵家貴族)

職業:なし

HP:50

MP:300

スキル:鑑定(3/10)


……と表示された。


どうやらこれは、詠唱や魔力操作を必要とする“魔法”とは少し違い、生まれつき備わった感覚に近い力らしい。


今のところ私が唯一使えるのは、この鑑定スキルだけだ。

成長するにつれて、いつの間にか習得していたもので、

日常生活でも地味に役立っている。


鑑定の対象は、人でも物でも基本的になんでも見られるらしい。

ちなみにお兄様とお姉様は、風属性と火属性と水属性が使えるらしい……。

前世は魔法のない世界だったから、魔法が使えるってやっぱり羨ましい。

そう思っていると


「ルーカス様、アメリア様、エレノア様!

昼食の準備が整いましたので屋敷にお戻りください。」


侍女のアンナが呼びに来たので魔法の練習を終わらせ屋敷に戻るととてもいい香りがしてきた。

椅子に座ると料理が提供され


「本日の昼食は、雪解け猪(スノー・ボア)の白ラグーパスタと黄金カボチャのポタージュでございます。

付け合せのくるみと蜂蜜のハードパンはパスタソースを絡めてお召し上がりください」


給仕長の説明を終えると


「では、いただきましょうか!」


お母様がそう言うと全員で食事を開始した。

まずは黄金カボチャのポタージュから。

スプーンですくうと、とろっとしていて、まるで溶けた金みたい。口に入れると、カボチャの甘みが「じゅわーっ」と広がって、練習でカラカラだった喉に最高のご褒美です。


「ん〜! 甘い! 今日のポタージュ、おかわりあるかな?」 「アメリア、そんなに急いで飲まないの。お行儀が悪いわよ」 お母様にたしなめられて、アメリアお姉様は「だってお腹空いたんだもん!」と口のまわりにスープをつけたまま笑っています。


「ルーカス兄様が、風属性で私の髪をぐちゃぐちゃにする勢いで魔法を飛ばしてくるから……あ、もうパスタ食べてる! ずるい!」 お姉様が指差した先では、ルーカスお兄様が涼しい顔で**「雪解けスノー・ボアの白ラグーパスタ」**をフォークにくるくる巻き取っていました。


「練習中に喋る余裕があるのがいけないんだ。……お、このパスタ、お肉がめちゃくちゃ柔らかいぞ。ハーブのいい香りがして、全然臭くない。アンナ、これ最高だってシェフに言っといて!」 「はい、ルーカス様。お気に召して光栄です」 後ろに立っているアンナも、お兄様の食べっぷりを見て少し嬉しそう。


大満足の昼食を終え、屋敷の庭に出ると、花壇の手入れをしている庭師のオリバーさんがいた。


「オリバー、こんにちは!」


「おや、エレノア様。こんにちは。

今日も花壇の様子を見にいらっしゃったのですかな?」


「えぇ、そうよ。

あ……このお花の葉っぱに、イモムシがついているみたいだよ!」


「どれどれ……」

オリバーさんはしゃがみ、私が指さした葉を見る。

そこには、確かに小さなイモムシがついていた。


「エレノア様は、どんなに些細なことにも気づきますね。

おかげで庭の手入れもずいぶん楽になります」


そう微笑みながら、オリバーさんはイモムシを駆除し、ジョウロで水をかけた。

私も手伝いながら、鑑定スキルで同じような虫や雑草がないかを確認する。


前世の私は、家ではガーデニングを手伝い、おじいちゃんの家では畑仕事をしていた。

もともと植物や動物が大好きだったから――

きっと、その気持ちは今世の私にも引き継がれているのだと思う。

 私は指先で、花壇の土をそっと整えた。


「……元気に育ってね」


 そう呟いた瞬間、

 不意にやわらかな風が頬を撫でた。


 庭は先ほどまで静かだったはずなのに、

 私の周囲だけがわずかにざわめいている。


「……?」


 視線を落とすと、花壇の上の空気が一瞬だけ揺らいだ。

 陽光の反射――そう思ったけれど、

 淡い緑色の光が、ほんのわずかに漂ったようにも見えた。


 思わず目を細め、もう一度確かめる。

 だがそこには、ただ穏やかな庭の景色があるだけだった。


「どうかなさいましたか、エレノア様」


 オリバーさんの声に、私は小さく首を振る。


「いえ……少し、光が見えた気がして」


「光、ですか?

 わしには何も見えませんでしたが……日の加減かもしれませんな」


「……そうですね」


 自分でもはっきりしない違和感を抱えたまま、

 私は再び苗へと視線を戻した。


 ――そのすぐ傍らで。


 小さな存在が、青々とした自然の気配をまとい、

 神秘的な光を帯びた羽を静かに震わせながら、

 ふよふよと宙に浮かんでいる。


 興味深そうに私を見つめ、

 誰にも聞こえない声で小さく呟いた。


 ――人間なのに……見えているの?


 だが私はまだ、

 その存在に気づいてはいなかった。

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