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親友に彼女をNTRられた俺は、俺にだけ優しいクール系ギャルヒロインとお試しで付き合うことになりました。  作者: 沢田美


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穏やかな朝と日常

 翌朝、目を覚ますと、窓から柔らかな光が差し込んでいた。

 カーテンの隙間から漏れた朝日が、部屋の中に筋を描いて伸びている。埃がその光の中をゆっくりと舞い、静かな朝の空気を照らしていた。


 時計を見ると、朝の七時半。休日の朝。世界がゆっくりと目覚めていく時間。


 蓮はまだ俺の腕の中で眠っている。その寝顔は穏やかで、長いまつ毛が頬に影を落としていた。少し開いた唇から、規則正しい呼吸が漏れる。その音が部屋の静寂に溶け込んでいく。


 昨夜の疲れからか、蓮は深い眠りについていた。頬にはまだ微かに紅が残り、髪が無造作に顔にかかっている。その無防備な姿が、愛おしかった。


 俺は蓮を起こさないように、そっと手を伸ばし、頬にかかった髪を指で払う。滑らかな肌の感触。温もりが指先に伝わるたびに、胸が締め付けられる。


 こうして見つめていると、時間の感覚が遠のいていく。いつまでも見ていたいと思わせる顔だった。


 窓の外から、鳥のさえずりが聞こえる。冬の朝を告げるその声に、遠くの車の音が混ざり、街が少しずつ目を覚ましていく。


「んん……」


 蓮が小さく声を漏らし、身体を動かす。ゆっくりと瞼が開き、焦点の定まらない目が俺を捉えた瞬間、頬がぱっと赤く染まった。昨夜の記憶が蘇ったのだろう。


「おはよう」


「お……おはよう、海斗」


 寝起きの掠れた声が、どこか甘い。


「よく眠れた?」


「うん……すごく」


 蓮は恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋めた。その吐息が肌をくすぐるように撫で、温かい感触が広がる。


「海斗の隣で寝るの……やっぱり気持ちいい」


「俺も」


 俺は蓮の背中を撫でた。滑らかな肌の温度。手のひらに伝わる生命の鼓動が、たまらなく愛おしい。


 朝の光が二人を包む。外では東京の街が動き出しているが、この部屋だけは、時間がゆっくりと止まっているようだった。


「ねえ、海斗」


「ん?」


「朝ごはん、作ろうか」


 蓮が顔を上げる。目が嬉しそうに輝いている。


「ああ、お願い」


「やった」


 蓮はベッドから起き上がった。その動作が少しぎこちない。昨夜の余韻がまだ身体に残っているのだろう。頬が再び赤く染まった。


「大丈夫か?」


「う、うん……ちょっと身体が……」


 小さな声が、初々しくて可愛い。


「無理しなくていいよ」


「ううん、大丈夫」


 蓮は微笑んだ。朝の光がその笑顔を照らし、まぶしいほどに輝いていた。


 二人で服を着る。昨夜脱ぎ散らかした服を拾い上げながら、昨日の出来事が自然と蘇る。胸の奥が再び熱くなる。


「行こう」


「ああ」


 蓮が手を引く。その手は温かく、柔らかかった。


 リビングを抜けてキッチンへ向かう。その何気ない道のりが、なぜか新鮮に感じられる。


 冷蔵庫を開けた蓮が、卵とベーコンを取り出した。


「何作る?」


「オムレツとベーコン。あとトースト」


「いいね」


 蓮は嬉しそうに料理を始めた。卵を割る音、ボウルに落ちる音、泡立て器が混ざる音――その一つひとつが、朝の静けさに溶けていく。


 フライパンが熱せられ、バターが溶ける音。甘い香りがキッチンに広がり、食欲を誘う。

 蓮の後ろ姿を見つめながら、俺は幸せを噛み締めた。こうして料理をしている蓮の姿を眺めるだけで、胸の奥が満たされていく。


「海斗、テーブルの準備お願いできる?」


「ああ、任せて」


 テーブルに皿を並べ、ナイフとフォークを整える。トースターからパンの焼ける香ばしい匂いが広がった。


「できたよ」


 蓮が皿を運んでくる。オムレツとベーコン、こんがり焼けたトースト。見た目からして美味しそうだ。


「わあ、美味しそう」


「ありがとう」


 蓮が照れくさそうに微笑む。その笑顔が、やけに可愛い。


 二人でテーブルに向かい合って座る。窓の外には澄んだ冬空が広がっている。


「いただきます」


 声を揃えて手を合わせた。


 一口食べると、ふわふわのオムレツが口の中でほどけた。卵のやさしい味とバターの香ばしさが絶妙に重なっている。


「美味しい」


「本当?」


「ああ、すごく美味しい」


 蓮は嬉しそうに笑う。その笑顔を見ているだけで、朝の光よりも温かい気持ちになる。


 他愛もない会話が続く。昨日のイベントのこと、これからの予定――そんな何気ない話題が、心地よく時間を満たしていく。


 朝の光がテーブルを照らし、蓮の頬を柔らかく染めていた。


「ねえ、海斗」


「ん?」


「今日、一日一緒にいてくれる?」


 期待に満ちた瞳。


「もちろん」


「やった」


 蓮の笑顔が、朝日より眩しく見えた。


 ※ ※ ※


 朝食を終えて、二人でソファに座る。

 テレビからは日曜の朝の番組。料理番組のシェフが手際よく料理を作っている。その映像を、俺たちはぼんやりと眺めた。


 蓮が俺の肩に頭を預けてくる。その重みが、心地いい。俺は自然と蓮の肩を抱いた。


「昨日、本当に楽しかったね」


「ああ」


「イベントも大成功だったし……海斗と、こうしていられるし」


「俺も、幸せだよ」


 蓮が顔を上げて見つめてくる。


「本当?」


「ああ。蓮といると、すごく幸せだ」


 その言葉に、蓮の頬が赤く染まる。


「私も……海斗といると、すごく幸せ」


 再び肩に頭を預け、首筋に温かな吐息をかける。


「ずっと、こうしていたいな」


「ああ」


 テレビの音が遠のく。蓮の温もりだけが、世界の中心になっていた。


 そのとき、スマホが振動した。蓮のスマホだ。


「あ、凛音ちゃんから」


「なんて?」


「『昨日のイベント、すごくよかったよ。お疲れ様。今日はゆっくり休んでね』だって」


 蓮は微笑んだ。


「凛音ちゃん、優しいな」


「うん」


 返信を打つ蓮の指が、画面の上を滑る。


「『ありがとう。今日は海斗と一緒にのんびりしてる』って送った」


「いいのか?俺のこと」


「うん。凛音ちゃんには、隠さなくていいと思う」


 穏やかな声。その声が、安心をくれる。


 すぐに返信が届いた。


「『いいな〜。私も彼氏欲しい』だって」


「凛音らしいな」


「うん」


 蓮はスマホを置き、再び俺の肩に頭を預ける。


「ねえ、海斗」


「ん?」


「これからも、ずっと一緒だよね」


 少し不安を含んだ声。


「ああ、もちろん」


 俺は蓮を抱きしめる。その身体の温もりが伝わってくる。


「どんなことがあっても、俺は蓮の隣にいる」


「ありがとう……」


 蓮の声が震え、胸の奥にじんわりと響く。


「海斗がいてくれるから、私は頑張れる」


「俺も、蓮がいるから頑張れる」


 見上げた蓮の瞳が潤む。


「海斗……」


 蓮の唇が重なった。朝のキス。穏やかで、温かい。昨夜とは違う、優しい時間のキスだった。


「愛してる、海斗」


「俺も、愛してる。蓮」


 窓の外では日曜の朝がゆっくりと流れている。街の喧騒が遠くで鳴る中、この部屋だけは穏やかで静かだった。


 二人だけの時間――それが、何よりの幸せだった。


 ※ ※ ※


 昼過ぎ、俺は蓮の部屋を出た。


 エレベーターの前で別れ際、蓮が寂しそうに俺を見つめる。


「また明日、学校でね」


「ああ」


 額にキスをすると、蓮が嬉しそうに微笑んだ。


「おやすみ……じゃなくて、また明日」


「ああ、また明日」


 エレベーターのドアが閉まる。その隙間から、手を振る蓮の姿が小さくなっていった。


 下りていく間、胸の中には温かな余韻が残っていた。


 バレンタインデー、そしてその翌日。二日間の幸せな時間。その記憶が、心を満たしていく。


 外に出ると、冬の冷たい風が頬を撫でた。けれど、その風さえも心地よく感じた。


 駅へ向かう途中、スマホを開く。蓮からメッセージが届いていた。


『もう寂しい。また会いたい。明日、楽しみにしてるね。大好き』


 その一文を見て、自然と笑みがこぼれた。


『俺も。明日、学校で会おう。愛してる』


 送信すると、すぐにハートのスタンプが返ってくる。


 スマホをポケットにしまい、歩き出した。


 バレンタインは終わった。けれど――俺と蓮の日々は、これからも続いていく。


 その確信を胸に、俺は新しい一週間を迎える準備をした。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

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