初体験あとの新しい関係
クリスマスから三日が経った。
学校は、冬休みに入っていた。生徒たちは、それぞれの休暇を楽しんでいる。でも、生徒会のメンバーは、そうはいかない。バレンタインイベントの準備が、既に始まっていた。
十二月二十七日。俺は学校の生徒会室にいた。桐谷会長、蓮、藤崎書記、野村会計。全員が揃っている。
「さて、バレンタインイベントの件だが」
桐谷会長が資料を広げた。そこには、イベントの企画書が載っている。
「今年は、例年以上に盛大にやりたいと思ってる」
会長の言葉に全員が頷く。
「具体的には、二月十四日当日、校内でチョコレート配布イベントを開催する」
「チョコレート配布イベント?」
藤崎書記が首を傾げた。
「ああ。事前に応募してもらった生徒たちが、匿名でチョコレートを渡せるシステムだ」
会長の説明に、全員が興味深そうに聞いている。
「それと、放課後には、体育館でバレンタインパーティーを開催する」
「パーティー?」
「ああ。音楽を流して、軽食を用意して、みんなで楽しむ」
会長の目が、輝いている。その熱意が伝わってくる。
「準備は、一月の初めから本格的に始める。今日は、その打ち合わせだ」
会長が各自に資料を配った。そこには、役割分担が書かれている。
「鈴波は、全体の統括を頼む」
「はい、分かりました」
蓮がしっかりと答えた。その声はいつもの副会長の声だ。でも、俺には分かる。蓮が、少し緊張している。
クリスマスの夜以来、俺と蓮の関係は変わった。いや、表面的には変わっていない。でも、二人の間には、新しい絆が生まれていた。
学校ではいつも通り接している。でも、時々、蓮の目が俺を見つめる。その目には、甘い記憶が滲んでいる。俺も、同じだ。蓮を見る度にあの夜のことを思い出す。
「春川は、会場設営を頼む」
「はい、分かりました」
俺は会長の指示に従った。
「藤崎は、チョコレート配布システムの管理」
「了解です」
「野村は、予算管理」
「任せてください」
会長が全員に役割を割り振っていく。その手際が、さすがだ。
「では、今日はここまで。一月四日に、また集まろう」
「はい」
全員が、立ち上がった。他の生徒会メンバーや、藤崎と野村が先に生徒会室を出ていく。部屋には、桐谷会長と俺と蓮だけが残った。
「鈴波」
会長が、蓮を呼んだ。
「はい」
「無理しないでくれよ。体育祭の時みたいに」
会長の言葉に、蓮は少し驚いた表情を浮かべた。
「大丈夫です。今度は、ちゃんと周りに頼りますから」
「そうか。ならいいんだ」
会長は、優しく微笑んだ。
「春川、鈴波のこと、頼んだぞ」
「はい」
俺は、しっかりと頷いた。会長が生徒会室を出ていく。部屋には、俺と蓮だけが残された。
※ ※ ※
二人きりになった瞬間、空気が変わった。
蓮が俺を見つめている。その目が甘い。俺も、蓮を見つめ返す。
「海斗……」
「蓮……」
お互いに近づいていく。その距離が、どんどん縮まっていく。
「会いたかった」
蓮の声が甘く響く。
「俺も」
俺は蓮を抱きしめた。蓮の身体が、俺の腕の中に収まる。その温もりが、懐かしい。
「クリスマスから、三日しか経ってないのに」
「ああ」
「すごく、長く感じた」
蓮は、俺の胸に顔を埋めた。その吐息が、制服越しに伝わってくる。
「俺も。毎日、蓮のこと考えてた」
「私も……」
蓮は顔を上げた。その瞳が潤んでいる。
「あの夜のこと、ずっと……」
蓮の頬が赤く染まる。その表情が愛おしい。
「俺も」
俺は蓮の唇に自分の唇を重ねた。久しぶりのキス。三日ぶりなのに、すごく長く感じた。
蓮の唇が、俺の唇を求めてくる。その動きが積極的だ。あの夜以来、蓮は少し変わった。より、俺を求めてくるようになった。
「んん……」
蓮の吐息が、甘い。その吐息を感じながら、俺は蓮を愛おしむ。
キスが終わると、蓮は恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋めた。
「生徒会室でキスなんて……」
「誰もいないから、大丈夫だろ」
「もう……」
蓮は、俺の胸を軽く叩いた。でも、その仕草が嬉しそうだ。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「今日、私の部屋に来る?」
蓮の言葉に、俺の心臓が跳ねた。蓮の部屋。二人きりになれる場所。
「いいのか?」
「うん。海斗と、一緒にいたい」
蓮の目が、俺を見つめる。その目には期待と、少しの恥じらいが混じっている。
「分かった。行くよ」
「やった」
蓮は、嬉しそうに微笑んだ。その笑顔が、輝いている。
※ ※ ※
蓮のマンションに着いたのは、昼過ぎだった。
エレベーターで最上階近くまで上がり、蓮の部屋に入る。リビングには、まだクリスマスツリーが飾られていた。その光が部屋を淡く照らしている。
「お昼、食べた?」
「まだ」
「じゃあ、一緒に食べよう。作るね」
「ありがとう」
蓮がキッチンに向かう。その後ろ姿を見つめながら、俺はソファに座る。
しばらくすると、蓮が料理を持ってきた。パスタとサラダ。シンプルだが美味しそうだ。
「いただきます」
二人で食事を始める。蓮の作る料理は、いつも美味しい。
「美味しい」
「ありがとう」
蓮は、嬉しそうに微笑んだ。
食事を終えると、二人でソファに座った。蓮が、俺の肩に頭を預けてくる。その重みが心地よい。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「バレンタインイベント、また忙しくなるね」
「ああ」
「でも、今度は大丈夫」
蓮は、俺を見上げた。その目が、真剣だ。
「海斗がいるから」
「ああ。俺が蓮を支える」
「ありがとう」
蓮は、俺の胸に顔を埋めた。
「海斗と一緒なら、何でも乗り越えられる」
「俺も」
俺は蓮の頭を撫でた。蓮の髪が指の間をすり抜けていく。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「私の部屋、行こうか」
蓮の言葉に俺の心臓が跳ねた。蓮の部屋。二人だけの空間。
「ああ」
蓮は俺の手を引いて、自分の部屋に向かった。ドアを開けると、蓮の甘い匂いが漂ってくる。その匂いが、あの夜を思い出させる。
部屋の中に入ると、蓮は俺を抱きしめた。その身体が、温かい。
「海斗……」
「蓮……」
二人で、ベッドに座る。蓮が、俺の目を見つめる。その目が、熱を帯びている。
「また、触れたい……」
蓮の声が、甘く響く。その声が、俺の理性を溶かしていく。
「ああ」
俺は蓮にキスをした。深く、激しく。蓮も、応じてくれる。舌を絡め合わせる。吐息を交わし合う。
「んん……海斗……」
蓮の声が、甘く漏れる。その声に、俺の身体が反応する。
蓮の手が、俺のシャツのボタンに触れた。ゆっくりと、外していく。その動作が、あの夜よりも慣れている。
「蓮……」
「海斗……もっと……」
蓮の声が、切なげだ。その声が、俺を狂わせそうになる。
※ ※ ※
時間が、ゆっくりと過ぎていく。二人だけの世界。
あの夜のように、二人は一つになっていく。でも、今回は違う。蓮の動きが、少し慣れている。痛みも、前ほどではない。
「海斗……」
「蓮……」
お互いの名前を呼び合いながら、二人は愛し合う。蓮の身体が、俺の身体と一つになっていく。
窓の外には、冬の空が広がっている。雲一つない、青い空。その空の下で、二人は愛を確かめ合っていた。
蓮の吐息が、荒くなっていく。その吐息を感じながら、俺は蓮を愛おしむ。
どれくらい、そうしていたか。
気づくと、外は既に暗くなり始めていた。冬の日は、短い。
蓮は、俺の腕の中にいた。その身体が温かい。少し汗ばんでいるが、それもまた愛おしい。
「はぁ……はぁ……」
蓮の呼吸が、まだ乱れている。その吐息が、俺の胸を撫でる。
「大丈夫?」
「うん……すごく、よかった……」
蓮は、満足そうに微笑んだ。その笑顔が、美しい。
「海斗……」
「ん?」
「これから、もっと忙しくなるね」
「ああ」
「でも、こうして時々、二人きりの時間を作りたいな」
蓮の声が、甘える。その声が、可愛らしい。
「もちろん。俺も、蓮と一緒にいたい」
「ありがとう」
蓮は、俺の胸に顔を埋めた。その吐息が、俺の肌を撫でる。
「愛してる、海斗」
「俺も、愛してる。蓮」
二人で抱き合ったまま、時間が過ぎていく。蓮の部屋。二人だけの世界。
これから、また忙しくなる。バレンタインイベントの準備。でも、大丈夫だ。
二人で支え合えば、乗り越えられる。そして、時々、こうして二人きりの時間を作れる。
その確信を胸に、俺は蓮を抱きしめ続けた。
冬休みの穏やかな午後だった。
※ ※ ※
蓮の部屋を出たのは、夜の八時を過ぎた頃だった。
エントランスまで、蓮が見送ってくれる。冷たい風が吹く中、二人で並んで立つ。
「また、会えるね」
「ああ。一月四日に、生徒会で」
「それまで、待てないな」
蓮は、少し寂しそうに微笑んだ。
「俺も」
俺は蓮の額にキスをした。蓮が嬉しそうに目を閉じる。
「おやすみ、海斗」
「おやすみ、蓮」
蓮と別れて、俺は駅に向かった。冷たい風が吹く中、俺の心は温かかった。
蓮との時間。あの甘い時間。その記憶が、俺を満たしている。
家に帰り、ベッドに横になった。天井を見つめながら、今日のことを思い返す。
スマホを見ると、蓮からメッセージが届いていた。
『おやすみ、海斗。今日も、ありがとう。すごく、幸せだった。海斗と一緒にいられて。大好き』
蓮からのメッセージ。愛の言葉。その言葉が、俺の心を温かくする。
俺は返信を打った。
『おやすみ、蓮。俺も幸せだった。蓮と一緒にいられて。愛してる』
送信すると、すぐにハートマークのスタンプが返ってきた。
俺はスマホを置いた。胸の奥に、幸せが満ちていく。
これから、忙しくなる。でも、大丈夫だ。蓮がいる。
その確信を胸に、俺は深い眠りについた。
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