クリスマスとは彼女と共に
十二月に入り、学校は一気に冬の雰囲気に包まれた。
廊下の窓には、クリスマスの飾り付けがされている。教室にも小さなクリスマスツリーが飾られ、生徒たちの会話もクリスマスの話題で持ちきりだ。街もイルミネーションで彩られ、冬の夜を美しく照らしている。
俺と蓮の関係も、さらに深まっていた。毎日一緒に登校し、昼休みは屋上で弁当を食べる。放課後は生徒会の仕事。そして、帰り道。時々、蓮の部屋に寄って、二人きりの時間を過ごす。
あの日以来、蓮の部屋は俺たちにとって特別な場所になっていた。そこでは学校では見せられない甘い時間を過ごせる。キスをして抱き合って、愛を確かめ合う。その時間が、何よりも大切だった。
クリスマスまで、あと二週間。その日が待ち遠しかった。
※ ※ ※
ある日の昼休み、俺は桐谷会長に呼び出された。
生徒会室に向かうと、桐谷会長が一人で座っていた。その表情はいつもの穏やかな笑顔ではなく、どこか真剣だ。何か、重要な話があるのだろうか。
「失礼します」
「おお、春川。来てくれたか」
桐谷会長は俺に椅子を勧めた。俺は会長の向かいに座る。
「今日は、ちょっと話があってな」
「はい」
桐谷会長は、少し考えるような表情を浮かべた。その目が真剣だ。何か重要な話なのだろうか。
「春川、お前、鈴波と付き合ってるよな」
会長の言葉に、俺は少し驚いた。でも、隠すつもりはない。俺と蓮の関係は学校でも公認されている。
「はい」
「そうか。まあ、見てれば分かるけどな」
桐谷会長は、少し笑った。その笑顔が温かい。
「お前たち、本当に仲いいよな。見てて微笑ましい」
「ありがとうございます」
「でもな、春川」
桐谷会長の表情が真剣になった。その目が、俺を見つめる。
「生徒会のメンバーとして、ちょっと気になることがあってな」
「何でしょうか」
「鈴波のこと、ちゃんと見てやってくれ」
会長の言葉に俺は少し戸惑った。ちゃんと見る?それはどういう意味だろうか。
「と、言いますと?」
「鈴波はな、すごく頑張り屋だ。生徒会副会長として、完璧に仕事をこなそうとする」
桐谷会長の声が、少し心配そうだ。
「でも、それが時々、自分を追い詰めることになる」
「……」
「体育祭の時も、そうだっただろう。鈴波は自分の限界を超えて頑張ってた」
会長の言葉が俺の胸に重くのしかかる。確かに体育祭の時、蓮は限界まで頑張っていた。そして、俺を一人にしてしまった。
「あの時は、お前も辛かっただろう」
「……はい」
「でも、今は違うよな。お前たち、ちゃんと向き合えてる」
桐谷会長は優しく微笑んだ。
「それはすごくいいことだ。でもな、春川」
「はい」
「これから、また忙しい時期が来る」
会長の言葉に俺は少し緊張した。忙しい時期?
「来年の二月、生徒会主催のバレンタインイベントがある」
「バレンタインイベント……」
「ああ。毎年恒例のイベントでな、結構大規模なんだ」
桐谷会長は、机の上の資料を俺に見せた。そこには、昨年のバレンタインイベントの写真と企画書が載っている。確かに大規模なイベントだ。
「これの準備が、十二月の後半から始まる」
「……」
「つまり、クリスマスが終わったら、すぐに準備に入る」
桐谷会長の言葉に、俺の胸が重くなった。クリスマスが終わったら、また忙しくなる。蓮がまた仕事に追われる。
「鈴波は、副会長として、このイベントの中心になる」
「はい」
「だから、また忙しくなる。体育祭の時みたいに」
会長の言葉が俺の心に重くのしかかる。また、あの時みたいに。蓮が、仕事に追われる。俺と会えなくなる。
「でもな、春川」
桐谷会長は、俺を見つめた。その目が優しい。
「今度は、お前がいる」
「え?」
「お前が、鈴波を支えてやれる」
会長の言葉に、俺は少し驚いた。俺が蓮を支える。
「体育祭の時、鈴波は一人で抱え込んだ。でも、今度は違う」
「……」
「お前が鈴波の隣にいる。鈴波が辛い時、支えてやれる」
桐谷会長は優しく微笑んだ。
「だから、頼むな。鈴波のこと、ちゃんと見てやってくれ」
「はい。分かりました」
俺はしっかりと頷いた。蓮を支える。蓮が辛い時、そばにいる。それが、俺の役目だ。
「ありがとう、春川。お前なら、大丈夫だと思ってる」
桐谷会長は、俺の肩を叩いた。その手が温かい。
「鈴波は、いい恋人を持ったな」
「いえ、俺の方こそ……」
「謙遜するな。お前は鈴波にとって大切な存在だ」
会長の言葉が、嬉しい。
「それと、もう一つ」
「はい」
「クリスマス、鈴波とデートだろう」
桐谷会長の言葉に、俺は少し驚いた。なぜ、会長がそれを知っているのか。
「ああ……まあ……」
「鈴波から聞いた。すごく楽しみにしてるみたいだぞ」
会長はニヤリと笑った。その笑顔が少し悪戯っぽい。
「ちゃんと、楽しませてやれよ」
「はい」
「それじゃあ、俺からは以上だ」
桐谷会長は、立ち上がった。俺も立ち上がる。
「ありがとうございました」
「いや、こっちこそ。頼んだぞ、春川」
会長は、また俺の肩を叩いた。その手が力強い。
※ ※ ※
生徒会室を出ると、蓮が廊下で待っていた。
「海斗、お疲れ様」
「お疲れ様」
蓮は俺の腕に自分の腕を絡めた。その温もりが心地よい。
「会長、何か言ってた?」
「ああ。バレンタインイベントの話」
「あ……そっか」
蓮の表情が、少し曇った。その表情を見て、俺の胸が締め付けられる。
「また、忙しくなるね」
「ああ」
「ごめんね、海斗。また、海斗に寂しい思いさせちゃう」
蓮の声が申し訳なさそうだ。その声を聞いて、俺は蓮を抱きしめた。
「蓮」
「海斗……」
「今度は、大丈夫だ」
俺ははっきりと言った。その言葉に、一切の迷いはない。
「俺が、蓮を支える」
「海斗……」
「蓮が辛い時、そばにいる。一人にしない」
俺の言葉に、蓮の目から涙が溢れた。その涙が、頬を伝って落ちていく。
「ありがとう……」
「だから、蓮も我慢しないで」
「うん……」
蓮は俺の胸に顔を埋めた。その身体が、小さく震えている。
「海斗がいてくれるから、頑張れる」
「ああ。二人で、乗り越えよう」
「うん」
二人で、抱き合ったまま、しばらくそうしていた。廊下には他の生徒もいる。でも、気にしない。俺たちの関係は、もう隠すものじゃない。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「クリスマスまで、あと二週間だね」
蓮が俺を見上げた。その瞳が輝いている。
「ああ」
「楽しみだな」
「俺も」
「その日は、二人だけの時間にしようね」
「ああ、約束だ」
蓮は嬉しそうに微笑んだ。その笑顔が、美しい。
バレンタインイベント。また、忙しくなる。でも、大丈夫だ。今度は俺が蓮を支える。二人で、乗り越えていく。
その決意を胸に俺は蓮を抱きしめ続けた。
※ ※ ※
その日の放課後、俺と蓮は一緒に帰った。
駅までの道のりを手を繋いで歩く。冷たい風が吹く中、二人で寄り添いながら。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「今日、また私の部屋に来る?」
蓮の言葉に、俺の心臓が跳ねた。蓮の部屋。二人きりの時間。
「いいのか?」
「うん。今日は、宿題を一緒にやりたいな」
「宿題?」
「うん。海斗と一緒にやると、捗るし」
蓮は、少し照れくさそうに微笑んだ。
「それに、海斗と一緒にいたいし」
「分かった。行くよ」
「やった」
蓮は、嬉しそうに俺の腕にしがみついた。その温もりが、心地よい。
二人で蓮のマンションに向かった。エレベーターで最上階近くまで上がり、蓮の部屋に入る。既に、慣れた場所だ。
「じゃあ、宿題やろうか」
「ああ」
二人でリビングのテーブルに座った。教科書とノートを広げ、宿題を始める。でも、蓮が隣にいると、どうしても集中できない。蓮の甘い匂い。蓮の温もり。全てが、俺の意識を奪っていく。
「海斗、ここ分かる?」
蓮が、数学の問題を指差した。俺はその問題を見る。
「ああ、これはな……」
俺は、蓮に解き方を説明する。蓮が、真剣に聞いている。その横顔が美しい。
「なるほど。ありがとう、海斗」
「どういたしまして」
蓮は嬉しそうに微笑んだ。その笑顔を見ていると、胸が温かくなる。
宿題を続けていくが、やはり集中できない。蓮が、俺の肩に頭を預けてきた。
「海斗……」
「ん?」
「疲れた……」
「休憩する?」
「うん……」
蓮は俺の肩に頭を預けたまま、目を閉じた。その寝顔が可愛らしい。
俺は蓮の頭を撫でた。蓮の髪が、指の間をすり抜けていく。
「気持ちいい……」
蓮の声が、甘く響く。その声に、俺の胸が高鳴る。
「海斗……」
「ん?」
「キス、していい?」
蓮の言葉に、俺は頷いた。蓮は、顔を上げた。その唇が俺の唇に触れる。
柔らかい。温かい。甘い。
蓮の唇の感触が、たまらない。宿題のことは、忘れていた。今は、蓮だけが全てだ。
冬が深まっていく。でも、俺の心は、蓮との日々で満たされていた。クリスマスが、待ち遠しい。そして、その後のバレンタインイベント。
どんなに忙しくても、二人で乗り越えていく。その決意を胸に、俺は蓮を愛し続けた。
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