冬の予感と深いキス
十一月も終わりに近づいた頃、学校には冬の気配が濃厚に漂っていた。
朝の気温は一桁台にまで下がり、生徒たちは皆、厚手のコートやマフラーを身につけて登校してくる。校庭の木々は、完全に葉を落とし、裸の枝が冬空に向かって伸びている。窓ガラスには、朝方の冷気が結露を作り、指で文字が書けるほどだ。
でも、俺の心は温かかった。
蓮との日々は、さらに甘く、深いものになっていた。毎朝、駅で待ち合わせをして、一緒に学校に行く。手を繋ぎながら、マフラーで顔を半分隠した蓮が、可愛らしい。寒さで頬を赤くした蓮の横顔を見るのが、俺の朝の楽しみになっていた。
昼休みは、相変わらず屋上で一緒に弁当を食べる。さすがに寒くなってきたので、時々は教室で食べることもあるが、それでも屋上での時間を大切にしていた。冷たい空気の中、二人で寄り添って食べる弁当は、格別に美味しい。
放課後は、生徒会の仕事。そして、帰り道。蓮との時間が、何よりも幸せだった。
※ ※ ※
ある日の昼休み、俺と蓮は屋上にいた。
今日は比較的暖かく、日差しが心地よい。ベンチに並んで座り、蓮が作ってくれた弁当を広げる。湯気が立ち上る温かい料理が、寒い日には嬉しい。
「今日は、シチュー作ってみたの」
蓮が保温容器を開けた。中から、クリーミーなシチューの匂いが漂ってくる。その匂いが、食欲をそそる。
「美味しそう」
「ちゃんと温かいうちに食べてね」
蓮はスプーンでシチューをすくって、俺の口に運んでくる。その仕草が自然で、でもどこか色っぽい。
「あーん」
「ああ……」
俺は口を開けて、蓮が差し出すシチューを食べる。クリーミーで、野菜の甘みが広がる。鶏肉も柔らかく、完璧な味だ。
「美味しい。すごく」
「よかった。今朝、早起きして作ったの」
蓮は嬉しそうに微笑んだ。その笑顔を見ていると、胸が温かくなる。蓮が、俺のために早起きして弁当を作ってくれている。その事実がどれだけ嬉しいか。
「じゃあ、次は俺が」
俺は卵焼きを箸で掴んで、蓮の口に運ぶ。蓮も、素直に口を開ける。その唇が、艶やかだ。
「んー……美味しい」
蓮が幸せそうに目を細める。その表情が、たまらなく可愛い。
二人で交互に食べさせ合いながら、弁当を食べていく。周囲に人がいないことを確認しながら、こうして甘い時間を過ごす。この時間が、俺たちにとって何よりも大切だった。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「もうすぐ、十二月だね」
蓮が俺の肩に頭を預けた。その重みが、心地よい。蓮の髪から、いつもの甘い香りが漂ってくる。
「ああ。もう、今年も終わりか」
「早いよね。夏休みが、ついこの間のことみたいなのに」
蓮の声が、少し寂しそうだ。夏休み。あの甘い日々。そして、新学期のすれ違い。体育祭での和解。全てが走馬灯のように頭を過ぎる。
「色々あったな」
「うん……」
蓮は俺の腕にしがみついた。その身体が、温かい。
「あの時は、海斗を一人にしちゃって……本当にごめんね」
「もう、いいんだ」
俺は蓮の頭を撫でた。蓮の髪が、指の間をすり抜けていく。
「今は、こうして一緒にいられる。それだけで十分だ」
「海斗……」
蓮は顔を上げた。その瞳が潤んでいる。でも、その涙は幸せの涙だ。
「ありがとう。海斗が、待っててくれて」
「俺こそ、ありがとう。蓮が、俺を選んでくれて」
俺は蓮の唇にキスをした。短く、優しく。蓮の唇が、柔らかい。冷たい空気の中、蓮の唇だけが温かい。
キスが終わると、蓮は恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋めた。
「屋上でキスなんて……誰かに見られたらどうするの」
「大丈夫だよ。今日は、誰もいない」
「もう……」
蓮は、俺の胸を軽く叩いた。でも、その仕草が嬉しそうだ。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「クリスマス、どうする?」
蓮の言葉に、俺の胸が高鳴る。クリスマス。恋人同士にとって、特別な日。蓮と過ごす、初めてのクリスマス。
「どうしたい?」
「えっと……デート、したいな」
蓮の頬が赤く染まる。その表情が可愛らしい。
「イルミネーション、見に行きたい。海斗と一緒に」
「いいな。どこに行く?」
「えっとね、調べたんだけど……」
蓮はスマホを取り出した。そこには、都内のイルミネーションスポットの情報が表示されている。蓮が事前に調べてくれていたのだ。その気遣いが嬉しい。
「ここ、綺麗そうじゃない?」
蓮が指差したのは、都内の有名なイルミネーションスポットだった。写真を見ると、確かに綺麗だ。光の海が、夜空を彩っている。
「いいな。ここに行こう」
「本当? やった!」
蓮は嬉しそうに俺に抱きついた。その身体が温かい。蓮の喜ぶ顔を見ていると、俺まで嬉しくなる。
「それで、その後は……ディナーとか」
「ディナー?」
「うん。クリスマスだし、ちょっと奮発して、素敵なレストランで」
蓮の頬がまた赤く染まる。その表情が初々しい。
「いいよ。予約、俺がしておくから」
「ありがとう、海斗」
蓮は俺の頬にキスをした。その柔らかい感触が、頬に残る。
「楽しみだね」
「ああ」
二人でクリスマスの計画を立てていく。その時間が幸せだった。蓮と過ごす、初めてのクリスマス。その期待が胸を膨らませる。
※ ※ ※
その日の放課後、生徒会の仕事が早く終わった。
俺と蓮は、校門を出て、一緒に帰ることにした。冷たい風が吹く中、二人で寄り添いながら歩く。蓮の手が、俺の手を握る。その手が温かい。
「寒いね」
「ああ。もう、冬だな」
「うん。でも、海斗と一緒だと、温かい」
蓮は俺の腕にしがみついた。その身体の温もりが、俺に伝わってくる。マフラーに顔を埋めた蓮の目だけが見える。その目が、優しい。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「今日、私の部屋に来ない?」
蓮の言葉に、俺の心臓が跳ねた。蓮の部屋。俺は、何度か蓮のマンションには行ったことがある。リビングで一緒に勉強したり、お茶を飲んだり。でも、蓮の部屋まで入ったことは、一度もなかった。
「部屋……?」
「うん。今まで、リビングまでしか入れてなかったから……」
蓮の頬が、赤く染まる。その表情が、恥ずかしそうだ。
「今日は、海斗に私の部屋、見てほしいな」
蓮の言葉に、俺の胸が高鳴る。蓮の部屋。蓮の一番プライベートな空間。そこに招かれる。
「いいのか?」
「うん。海斗になら……」
蓮は、俺を見つめた。その目が、真剣だ。
「海斗にだけ、見せたい」
「分かった。行くよ」
「やった」
蓮は、嬉しそうに微笑んだ。その笑顔が、輝いている。
二人で蓮のマンションに向かった。駅から少し歩いた場所にある、高層マンション。何度か来たことがある場所だが、今日は少し違う。蓮の部屋に入れる。その期待が胸を高鳴らせる。
エントランスのオートロックを、蓮がカードキーで解除する。エレベーターで最上階近くまで上がる。エレベーターの中、二人きり。蓮が、俺の手を握る。その手が、少し震えている。緊張しているのか。
「大丈夫?」
「うん……ちょっと、ドキドキしてる」
蓮の頬が、赤く染まっている。その表情が、可愛らしい。
「海斗を、私の部屋に入れるの、初めてだから」
「俺も、緊張してる」
俺の言葉に、蓮が小さく笑った。
エレベーターが止まり、ドアが開く。蓮の部屋は、廊下の突き当たりにあった。蓮が鍵を開ける。
「お邪魔します」
中に入ると、見慣れた広いリビングが広がっていた。何度か来たことがある場所だ。高級マンションらしい、洗練されたインテリア。大きな窓からは、都内の景色が一望できる。夕日が、ビル群を照らしている。
「いつ見ても、すごい景色だな」
「うん。でも、一人だと寂しいんだけどね」
蓮は少し寂しそうに微笑んだ。その表情を見て、俺の胸が締め付けられる。蓮は、普段一人でここに住んでいる。両親は忙しく、たまにしか帰ってこない。その寂しさを、蓮は一人で抱えていたのだ。それに母親が少し厳しいだとか。
「でも、今日は海斗がいるから、嬉しい」
蓮は俺の手を引いて、リビングのソファに座らせた。その隣に蓮も座る。その距離が、近い。
「飲み物、持ってくるね」
「ああ、ありがとう」
蓮がキッチンに向かう。その後ろ姿を見送りながら、俺は窓の外の景色を眺める。夕日が、どんどん沈んでいく。
蓮が、紅茶を持って戻ってきた。温かい紅茶の香りが、リビングに広がる。
「ありがとう」
「どういたしまして」
蓮は、俺の隣に座った。紅茶を飲みながら、二人で窓の外の景色を眺める。夕日が、どんどん沈んでいく。その光が、部屋の中をオレンジ色に染めている。
「綺麗だね」
「うん。でも、海斗と一緒に見ると、もっと綺麗」
蓮は俺の肩に頭を預けた。その重みが、心地よい。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「私の部屋、見る?」
蓮の言葉に、俺の心臓が跳ねた。いよいよだ。蓮の部屋。蓮の一番プライベートな空間。
「ああ」
蓮は、俺の手を引いて、廊下の奥に向かう。蓮の部屋は、リビングから少し離れた場所にあった。ドアの前で、蓮が少し立ち止まる。その動作に鼓動が高鳴る。
「あの……ちょっと散らかってるかも」
「大丈夫だよ」
蓮は、少し恥ずかしそうにドアを開けた。
中に入ると、蓮の匂いが漂ってきた。甘い香り。シャンプーの香りと、蓮独特の甘い匂いが混じり合っている。部屋の中は、想像していたよりも綺麗に整理整頓されていた。ベッドには、可愛らしいクッションが並んでいる。机の上には、教科書と参考書が綺麗に積まれている。窓際には、小さな観葉植物が置かれている。
「どうぞ」
蓮が、少し恥ずかしそうにベッドを指差した。俺は少し緊張しながら、ベッドの端に座る。蓮のベッド。その柔らかさが、心地よい。蓮の匂いが、ベッドから漂ってくる。
蓮は、俺の隣に座った。その距離が、近い。蓮の体温が、俺に伝わってくる。二人きりの空間。蓮の部屋。その事実が、俺の胸を高鳴らせる。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「ちょっと、横になってもいい?」
蓮の言葉に、俺は頷いた。蓮は、俺の膝に頭を乗せた。膝枕だ。蓮の顔が、すぐ近くにある。その表情が、リラックスしている。
「気持ちいい……」
蓮は目を閉じた。その寝顔が、美しい。俺は、蓮の髪を撫でた。蓮の髪が、指の間をすり抜けていく。
「海斗……」
「ん?」
「こうしてると、幸せ」
「俺も」
しばらく、二人で黙っていた。静かな部屋。二人きりの空間。時計の音だけが、静かに響いている。この時間が、永遠に続けばいいのに。
「海斗」
蓮が、目を開けた。その瞳が、俺を見上げる。
「キス、して」
蓮の言葉に、俺の胸が高鳴った。俺は顔を近づけた。蓮も顔を上げる。
唇が、重なった。
柔らかい。温かい。甘い。蓮の唇の感触が、たまらない。膝枕の体勢でのキス。その角度が、新鮮だ。
蓮の手が、俺の頬に触れた。その手のひらが、俺の頬を包み込む。キスを深めていく。舌を絡め合わせる。
「んん……」
蓮の吐息が、甘い。その吐息を感じながら、俺は蓮を愛おしむ。
キスが終わると、蓮は恥ずかしそうに微笑んだ。
「海斗、大好き」
「俺も、蓮のこと大好きだ」
冬が近づいている。でも、俺の心は、蓮との日々で満たされていた。クリスマスが、楽しみだ。蓮と過ごす、初めての冬。その期待を胸に、俺は蓮を見つめ続けた。
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