表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親友に彼女をNTRられた俺は、俺にだけ優しいクール系ギャルヒロインとお試しで付き合うことになりました。  作者: 沢田美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/109

鈴波蓮の孤独 ー呪いの言葉ー

 私は自宅のリビングで体育祭の最終確認資料を作成していた。


 時計を見ると、夜の十一時を過ぎている。疲れが、身体に溜まっている。肩が重く、目が痛い。


 でも、休むわけにはいかない。


 体育祭は、あと四日後。全てを完璧にしなければならない。副会長として、失敗は許されない。母からも認められるために。


『完璧にこなしなさい』脳裏に響く呪いの言葉。


 パソコンの画面を見つめながら、私は小さくため息をついた。


 海斗。


 最近、ちゃんと話せていない。会えていない。メッセージも、素っ気ないものしか送れていない。


 海斗の「愛してる」に、何も返せていない。


 罪悪感が、胸を満たしていく。海斗を傷つけている。分かっている。でも、どうすることもできない。


 今は体育祭の準備を優先しなければならない。副会長として、責任を果たさなければならない。


 それが、私の役割だから。母ならそうするから。


 スマホが鳴った。海斗からのメッセージだ。


『お疲れ様。無理しないで。体育祭、頑張ってね。おやすみ、蓮。愛してる』


 海斗の優しさが、メッセージから伝わってくる。その優しさが、私の胸を締め付ける。


 返信したい。「愛してる」と伝えたい。でも、今の私には、その資格がない。


『誰にも頼らず、誰にも甘えず』私を縛る呪いの言葉。


 海斗を傷つけている。海斗を一人にしている。そんな私が「愛してる」なんて言えるわけがない。


 私は、短いメッセージを返した。


『ありがとう。おやすみ』


 それだけ。送信ボタンを押した瞬間、罪悪感が胸を満たす。でも、これ以上、何も書けなかった。


 私はスマホを置いた。胸の奥に、重い何かが沈んでいく。


「海斗……」


 私は小さく呟いた。海斗の顔が、頭に浮かぶ。海斗の笑顔。海斗の優しさ。海斗の温もり。


 全てが、恋しい。


 会いたい。話したい。抱きしめてほしい。


 でも、今は無理だ。体育祭が終わるまで、海斗には会えない。


 それが副会長としての責任だから。母ならそうすると決まってるから。


 私は、また資料作成に戻った。機械的にキーボードを叩いていく。感情を押し殺して、ただ仕事に集中する。


 それが、私にできる唯一のことだった。


 ※ ※ ※


 翌日、学校。


 昼休み、私は生徒会室にいた。体育祭の資料を、最終チェックしている。


 机の上には、今朝作ってきた弁当箱がある。でも、開けていない。食べる時間がない。食べる気力もない。


 ただ、仕事に集中する。それだけが、私にできることだった。


「鈴波」


 桐谷会長が声をかけてきた。私は、顔を上げる。


「はい」


「昼飯、食ってないだろ」


「……後で食べます」


「無理するな。ちゃんと食え」


 桐谷会長の言葉に、私は小さく頷いた。でも、弁当箱には手を伸ばさない。


 食べる気になれない。この弁当は、本当は海斗と一緒に食べるはずだった。屋上で、二人並んで。


 でも、今はそれができない。一人で食べる気には、なれなかった。


「鈴波」


 桐谷会長が、また声をかけてきた。


「お前、最近様子がおかしいぞ」


「……そうですか?」


「ああ。無理してるのが、見て分かる」


 桐谷会長の言葉に、私は何も答えられなかった。無理している。それは、事実だ。


「何かあったのか?」


「いえ、何も」


 私は首を振った。桐谷会長に、プライベートな悩みを話すわけにはいかない。


「そうか……」


 桐谷会長は、少し考え込むような表情を浮かべた。


「体育祭が終わったら、少し休め。お前、このままじゃ潰れるぞ」


「はい、ありがとうございます」


 私は淡々と答えた。表情を変えず、感情を見せない。それが、副会長としての私だった。


 桐谷会長が生徒会室を出ていった後、私は一人になった。


 静かな部屋。誰もいない。その静けさが、私の孤独を際立たせる。


 私は、弁当箱を見つめた。海斗のために作った弁当。でも、海斗と一緒に食べられない。


 涙が目に浮かんだ。でも、泣くわけにはいかない。泣いている時間があるなら、仕事をしなければ。こんなことで母なら泣いたりしない。


 私は涙を拭った。そして、また資料作成に戻る。


 感情を押し殺して。ただ、機械的に。


 それが、私にできる唯一のことだった。


 ※ ※ ※


 放課後、生徒会の会議があった。


 私は、いつものように淡々と報告する。体育祭の進捗。最終確認事項。全てを、完璧に。


 海斗も会議に出席している。でも、私は海斗を見ない。目を合わせない。


 それが、学校での私のルールだった。生徒会副会長として、プライベートな感情を持ち込まない。


 会議が終わり、メンバーたちが帰っていく。海斗が、私に声をかけようとした。


「鈴波副会長」


 私は、立ち上がった。海斗の言葉を、遮るように。


「ごめん。今、急いでるの」


 そう言って、私は生徒会室を出た。海斗を置いて。


『期待しているわよ、蓮』母からの呪いの言葉。


 廊下に出ると、胸が苦しくなった。海斗を傷つけている。分かっている。でも、どうすることもできない。


 今、海斗と話したら、泣いてしまう。弱い自分を、見せてしまう。


 それだけは、避けなければならない。


 私は一人で帰路についた。夕日が傾き、空がオレンジ色に染まっている。


 この道を、夏休み前は海斗と一緒に歩いていた。手を繋いで、他愛もない話をしながら。


 でも、今は一人だ。


 寂しい。辛い。会いたい。


 でも、我慢しなければならない。副会長として、完璧でなければならない。


 それが、私の役割だから。


 ※ ※ ※


 家に帰り、私は一人でリビングに座った。


 広い部屋。誰もいない。静かだ。寂しい。


 スマホを見ると、海斗からメッセージが届いていた。


『今日も、お疲れ様。蓮、無理しないでくれ。ちゃんとご飯食べてる? 体調、心配だ。おやすみ、蓮。愛してる』


 海斗の優しさが、私の胸を締め付ける。心配してくれている。愛してくれている。


 でも、私は何も返せない。


 私は、短いメッセージを返した。


『大丈夫。ちゃんと食べてる。ありがとう。おやすみ』


 嘘だ。今日も、弁当を食べなかった。食べる気になれなかった。


 でも、海斗に心配をかけたくない。だから、嘘をついた。


 送信ボタンを押した瞬間、罪悪感が胸を満たす。海斗に嘘をついた。海斗を騙した。


 私は最低だ。


 涙が溢れてくる。止まらない。枕を抱きしめて、泣く。


 海斗に会いたい。海斗と話したい。海斗に抱きしめてほしい。


 でも、それができない。今の私には、その資格がない。


 海斗を傷つけている。海斗を一人にしている。そうしてしまった私が、海斗に甘えるわけにはいかない。


『それができて初めて、私の娘として認められるわ』母から託された呪いの言霊。


 涙が止まらない。枕が、涙で濡れていく。


「ごめんね、海斗……」


 私は小さく呟いた。海斗への謝罪。でも、その言葉は、海斗には届かない。


 私は、一人で泣き続けた。この広い部屋で、一人で。


 体育祭が終わったら、ちゃんと話そう。海斗に謝ろう。全てを、正直に話そう。


 その希望を胸に、私は涙を流し続けた。


 でも、心のどこかで思う。体育祭が終わった時、海斗はまだ私を愛してくれているのだろうか。


 それとも、もう疲れてしまっているのだろうか。


 その不安が、私を苦しめていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 面白い!続きが気になる!と思っていただけたら、⭐︎や♡その他応援コメント等気軽にお待ちしております!

明日は閑話含めて3話投稿します!閑話は16時頃投稿です!他は変わらない時間帯です。

 少し辛い展開が続きますが「体育祭編」ぜひ最後まで見届けてくださると嬉しいです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

応援が次回更新の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ