表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親友に彼女をNTRられた俺は、俺にだけ優しいクール系ギャルヒロインとお試しで付き合うことになりました。  作者: 沢田美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/116

恋人としての終わり

 新学期が始まって一週間が経った。


 俺と蓮の関係は、何も変わらなかった。いや、むしろ悪化していた。


 毎日、昼休みになると俺は屋上に向かう。蓮を待つ。でも、蓮は来ない。メッセージを送っても、既読スルーか、短い謝罪の言葉だけ。


『ごめん、体育祭の準備があって』


 その言葉を、何度見たことか。


 生徒会の会議でも、蓮は俺を避ける。必要最低限の会話しかしない。目も合わせない。まるで、俺が存在しないかのように振る舞う。


 それが学校での蓮だ。生徒会副会長として、クールで近寄りがたい存在。


 放課後、俺は一人で帰路についていた。夕日が傾き、空がオレンジ色に染まっている。この道を、夏休み前は蓮と一緒に歩いていた。手を繋いで、他愛もない話をしながら。


 でも、今は一人だ。


「海斗!」


 突然、誰かが俺を呼んだ。振り返ると、凛音が走ってきた。


「橘……」


「久しぶり! 夏休みぶりだね」


 凛音は息を切らしながら、俺の前に立った。派手なメイク。ショートパンツ。いつものギャルの格好だ。


「最近、元気?」


「……まあ」


 俺は曖昧に答えた。正直に言えば、全然元気じゃない。


「そっか。鈴波副会長とは、うまくいってる?」


 凛音の言葉が、俺の胸に突き刺さる。うまくいっているか。答えは、明白だ。


「……まあな」


「嘘だ」


 凛音ははっきりと言った。その目は、俺を見透かしている。


「春川くん、元気ないもん。顔にも出てる」


「……」


「鈴波副会長と、最近会ってないでしょ?」


 凛音の言葉に、俺は答えられなかった。図星だった。


「やっぱり。学校でも、二人が一緒にいるの見ないし」


「蓮は、体育祭の準備で忙しいんだ」


 俺は蓮を庇った。でも、その声は弱々しい。


「そっか。でも、春川くん、寂しそう」


 凛音は俺を見つめた。その瞳には、同情と、何か別の感情が混じっている。


「ねえ、春川くん。今日、ちょっとだけ話さない?」


「……いや、悪いけど」


「いいじゃん。友達として、ちょっとだけ」


 凛音は俺の腕を掴んだ。その手の感触が、俺の腕に伝わってくる。


「春川くん、一人で悩んでるでしょ? 誰かに話した方が、楽になるよ」


 凛音の言葉に、俺は迷った。確かに、誰かに話したい。この苦しさを、誰かに聞いてほしい。


 でも、それは蓮への裏切りではないのか。


「大丈夫だよ。友達として、話を聞くだけだから」


 凛音は微笑んだ。その笑顔は、どこか優しく見える。


「……分かった。少しだけ」


 俺は頷いた。凛音と一緒に、近くの公園に向かった。


 ※ ※ ※


 公園のベンチに座り、二人で缶コーヒーを飲んだ。夕日が沈みかけ、空が薄暗くなっている。


「それで、鈴波副会長とどうなの?」


 凛音が尋ねた。その声は優しい。


「……うまくいってない」


 俺は正直に答えた。もう隠す気力もない。


「夏休みの終わりから、ずっとすれ違ってる」


「そっか……」


「学校が始まっても、変わらない。蓮は、体育祭の準備で忙しくて、俺と会う時間がない」


 俺の声が、震える。胸の奥から、苦しさが込み上げてくる。


「昼休みも、一緒に過ごせない。生徒会でも、蓮は俺を避ける」


「辛いね……」


 凛音は俺の肩に手を置いた。その手の温もりが、俺の肩に伝わってくる。


「春川くん、我慢してるんだね」


「……ああ」


「でも、それって本当に幸せなのかな」


 凛音の言葉が、俺の心に響く。幸せか。今の俺は、幸せなのか。


「蓮のこと、愛してる。でも……」


 俺の言葉が、途切れる。涙が、目に浮かぶ。


「でも、辛い。会えない。話せない。蓮が、俺を避けてる気がする」


「……春川くん」


「俺、どうすればいいのか分からない」


 涙が頬を伝って落ちていく。もう、我慢できない。胸の奥に溜まっていた苦しさが、溢れ出していく。


「鈴波副会長は、春川くんのこと、ちゃんと大切にしてくれてる?」


 凛音の言葉が、俺の心に突き刺さる。大切にしてくれているか。その答えが、俺には分からない。


「分からない……」


「そっか……」


 凛音は俺を抱きしめた。その温もりが、俺を包み込む。


「春川くん、辛かったね」


「橘……」


「大丈夫。私が、ここにいるから」


 凛音の優しさが、俺の心を揺さぶる。この温もり。この優しさ。蓮から、もらえなくなったもの。


 でも――


「ごめん、橘」


 俺は凛音の身体を離した。その動作は、優しくだが、はっきりとしていた。


「俺は、蓮を愛してる」


「……分かってる」


 凛音は寂しそうに微笑んだ。その表情には、諦めと、それでも諦めきれない想いが混じっている。


「でも、春川くん。いつまで我慢するの?」


「……」


「鈴波副会長が、春川くんを幸せにしてくれないなら」


「橘、やめろ」


 俺ははっきりと言った。その言葉に、強さを込める。


「俺の気持ちは、蓮にしかない」


「……そっか」


 凛音は立ち上がった。その表情には、寂しさが滲んでいる。


「でもね、春川くん。もし鈴波副会長が春川くんを泣かせたら」


「そんなことにはならない」


 俺は即座に否定した。でも、その声は、どこか弱々しい。


「そうだといいけどね」


 凛音は微笑んだ。その笑顔は、どこか意味深だ。


「私、ここで待ってるから」


「橘……」


「春川くんが、鈴波副会長に疲れたら」


「そんな日は来ない」


 俺ははっきりと否定した。でも、心のどこかで、不安が膨らんでいく。


「じゃあ、またね。春川くん」


 凛音は去っていった。その背中を見送りながら、俺は複雑な気持ちになった。


 凛音の優しさ。あの温もり。全てが、俺の心を揺さぶった。


 でも、俺の気持ちは、蓮にしかない。その確信を持ち続けなければ。


 ※ ※ ※


 家に帰り、ベッドに横になった。天井を見つめながら、今日のことを思い返す。


 凛音との会話。あの優しさ。あの温もり。


 そして、蓮との距離。


 スマホを見ると、蓮からメッセージが届いていた。


『おやすみ、海斗。今日も疲れちゃった。明日も頑張るね』


 蓮からのメッセージ。でも、短い。絵文字もなく、ハートマークもない。「愛してる」も「大好き」もない。


 俺は、返信を打った。


『お疲れ様。無理しないで。おやすみ、蓮。愛してる』


 送信すると、既読がついた。でも、返信は来ない。俺の「愛してる」に、蓮は何も返さない。


 その事実が、俺の心を深く傷つけた。


 涙が、また溢れてくる。蓮は、もう俺を愛していないのか。


 その不安が、俺を支配していく。凛音の言葉が、頭の中で繰り返される。


『鈴波副会長は、春川くんのこと、ちゃんと大切にしてくれてる?』


 答えは、分からない。でも、今の俺には、その答えが「いいえ」に思えてならなかった。


 窓の外から、虫の声が聞こえてくる。秋の訪れを告げる、寂しい音だ。


 夏は終わった。そして、俺と蓮の関係も、終わろうとしているのか。


 その恐怖が、俺の心を満たしていった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

応援が次回更新の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ