表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親友に彼女をNTRられた俺は、俺にだけ優しいクール系ギャルヒロインとお試しで付き合うことになりました。  作者: 沢田美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/114

終わりを告げようとしている恋仲

 翌朝、俺は蓮からのメッセージで目を覚ました。


『おはよう、海斗。今日も体育祭の企画書、まとめなきゃいけなくて。会えなくてごめんね』


 俺は、そのメッセージを見つめた。短い文章。絵文字もなく、ハートマークもない。以前の蓮なら、必ず「大好き」と添えてくれていた。でも、今はそれがない。


 俺は返信を打った。


『おはよう。大丈夫、無理しないで。体育祭の準備、頑張ってね』


 送信すると、すぐに既読がついた。でも、返信は来ない。既読スルー。最近、これが当たり前になっている。


 俺はため息をついて、ベッドから起き上がった。窓の外を見ると、曇り空が広がっている。夏の終わりを告げるような、どんよりとした空だ。


 リビングに行くと、母親が朝食の準備をしていた。


「おはよう、海斗」


「おはよう」


「最近、元気ないわね」


 母親が心配そうに俺を見た。その目には、息子を気遣う優しさが滲んでいる。


「蓮ちゃんとは、うまくいってる?」


「……ああ」


 俺は曖昧に答えた。母親に心配をかけたくない。


「そう。ならいいけど」


 母親は優しく微笑んだ。でも、その笑顔の奥には、まだ心配の色が残っている。


 朝食を済ませ、俺は自分の部屋に戻った。スマホを見ても、蓮からの返信はない。既読だけがついている。その事実が、俺の胸を締め付ける。


 昼になっても、夕方になっても、蓮からの返信はなかった。俺は何度もスマホを確認するが、通知は来ない。その度に、不安が膨らんでいく。


 ※ ※ ※


 夕方、俺はまたコンビニに出かけた。部屋にいても、蓮のことばかり考えてしまう。気を紛らわせたかった。


 コンビニの中を歩いていると、また凛音に会った。


「あ、春川くん! また会ったね」


 凛音は嬉しそうに近づいてきた。その表情には、純粋な喜びが滲んでいる。


「橘……」


「今日も、鈴波副会長とは会えなかったの?」


「……ああ」


 俺は正直に答えた。嘘をついても、意味がない。


「そっか。寂しいね」


「まあ……」


「ねえ、春川くん。今日も、ちょっと話さない?」


 凛音の提案に、俺は少し躊躇した。昨日も凛音と話した。また今日も、というのは――


「友達として、だよ。春川くん、一人で寂しそうだし」


 凛音は微笑んだ。その笑顔は、どこか無邪気に見える。


「……分かった」


 俺は頷いた。確かに、今は一人でいるのが辛い。誰かと話していたい。その想いが、俺を動かしていた。


 二人でコンビニを出て、昨日と同じ公園のベンチに座った。夕日が沈みかけ、空が薄暗くなっている。


「ねえ、春川くん」


「ん?」


「鈴波副会長から、連絡あった?」


「朝に一通だけ。それ以降は……」


 俺は言葉を濁した。それ以降、蓮からの連絡はない。既読スルーされたまま、一日が過ぎようとしている。


「そっか……」


 凛音は少し考え込むような表情を浮かべた。


「春川くん、それって辛くない?」


「……仕方ないだろ。蓮は、体育祭の企画書作成で忙しいんだ」


「でも、メッセージ一つぐらい、送れるんじゃない?」


 凛音の言葉が、俺の心に突き刺さる。確かに、メッセージ一つぐらい、送れるはずだ。既読はついているのだから、スマホは見ている。でも、返信はない。


「それって、春川くんのこと、後回しにしてるってことだよね」


「橘……」


「ごめん、きついこと言っちゃった」


 凛音は申し訳なさそうに微笑んだ。でも、その目には、計算されたような光が宿っている。


「でも、私は思うんだ。本当に好きな人なら、どんなに忙しくても連絡するって」


「……」


「春川くんは、我慢してるんでしょ? 鈴波副会長に嫌われたくなくて」


 凛音の言葉が、俺の心の奥底にある不安を、えぐり出していく。確かに、俺は我慢している。蓮に嫌われたくない。だから、寂しいとも言えない。会いたいとも言えない。


「春川くんって、本当に優しいよね」


 凛音は俺を見つめた。その瞳には、同情と、何か別の感情が混じっている。


「でも、優し過ぎるのも、辛いよ」


「……」


「ねえ、春川くん」


 凛音は俺の手に、自分の手を重ねた。その手は温かく、柔らかい。昨日と同じように。


「私とだったら、こんな思いさせないのに」


「橘……」


「私なら、春川くんを一番に考える」


 凛音は真剣な表情で俺を見つめた。その瞳には、揺るぎない決意が宿っている。


「体育祭の準備より、生徒会の仕事より、春川くんが大事」


「俺は――」


「分かってる。春川くんの気持ちは、鈴波副会長にしかない」


 凛音は微笑んだ。でも、その笑顔は、どこか挑戦的だ。


「でも、春川くん。いつまで我慢するの?」


「……」


「鈴波副会長は、春川くんを大切にしてくれてる?」


 凛音の言葉に、俺は答えられなかった。蓮は、俺を大切にしてくれているのか。四日も会えず、メッセージの返信もない。それは、本当に仕方のないことなのか。


「春川くんが辛そうな顔してるの、見たくない」


 凛音は俺の頬に手を添えた。その手の温もりが、俺の頬に伝わってくる。


「だから、もし鈴波副会長が春川くんを幸せにしてくれないなら」


「橘、やめろ」


 俺は凛音の手を払った。その動作は、少し強引だった。


「俺は、蓮を愛してる」


「……そっか」


 凛音は寂しそうに微笑んだ。その表情には、諦めと、それでも諦めきれない想いが混じっている。


「でも、春川くん。いつか分かる日が来るよ」


「何が?」


「鈴波副会長が、春川くんを本当に愛してるかどうか」


 凛音は立ち上がった。その表情には、強い決意が滲んでいる。


「私は、ここで待ってる」


「橘……」


「春川くんが、鈴波副会長に疲れたら」


「そんな日は来ない」


 俺ははっきりと否定した。でも、その声は、どこか弱々しい。


「そうだといいけどね」


 凛音はウインクした。その仕草は、どこか余裕を感じさせる。


「じゃあ、またね。春川くん」


 凛音は去っていった。その背中を見送りながら、俺は複雑な気持ちになった。凛音の言葉が、俺の心に重くのしかかっている。


 蓮は、本当に俺を愛してくれているのか。その不安が、どんどん膨らんでいく。


 ※ ※ ※


 家に帰り、ベッドに横になった。時計を見ると、夜の九時を過ぎている。スマホを確認するが、蓮からの連絡はない。朝のメッセージ以降、何もない。


「蓮……」


 俺は小さく呟いた。蓮は、今何をしているのだろう。体育祭の企画書を作っているのか。それとも、もう終わって、ただ俺への返信を忘れているだけなのか。


 どちらにしても、俺のことを優先してはくれていない。その事実が、俺の胸を締め付ける。


 俺は、勇気を出してメッセージを送った。


『蓮、大丈夫? 体調崩してない? 返信なくて心配してる』


 送信すると、すぐに既読がついた。蓮は、スマホを見ている。でも、返信は来ない。一分経っても、五分経っても、返信は来ない。


 既読スルー。


 その事実が、俺の心を深く傷つける。蓮は、俺のメッセージを見ている。でも、返信する気はない。それとも、返信する時間もないほど忙しいのか。


 分からない。その不確かさが、俺を苦しめる。


 凛音の言葉が、また頭をよぎる。


『本当に好きな人なら、どんなに忙しくても連絡するって』


 確かに、そうかもしれない。俺なら、どんなに忙しくても、蓮にメッセージを送る。蓮のことが心配で、蓮に会いたくて、たまらなくなる。


 でも、蓮は違う。蓮は、体育祭の準備を優先している。俺への返信は、後回し。それが、現実だ。


「蓮……」


 俺の目に、涙が浮かんだ。その涙が、頬を伝って落ちていく。寂しい。辛い。会いたい。話したい。でも、蓮は応えてくれない。


 その時、スマホが鳴った。慌てて確認すると、蓮からのメッセージだった。


『ごめん、海斗。今、やっと終わった。疲れちゃって。明日も朝から生徒会だから、もう寝るね。おやすみ』


 俺は、そのメッセージを見つめた。謝罪の言葉。でも、どこか冷たい。「大好き」も「ありがとう」もない。ただ、事務的な報告だけ。


 俺は返信を打った。


『お疲れ様。ゆっくり休んで。おやすみ、蓮。愛してる』


 送信すると、既読がついた。でも、返信は来ない。俺の「愛してる」という言葉に、蓮は何も返さない。


 その事実が、俺の心を深く傷つけた。


「蓮……」


 俺は枕に顔を埋めた。涙が、止まらない。寂しい。辛い。蓮は、俺のことを本当に愛してくれているのか。それとも、もう疲れてしまったのか。


 分からない。その不確かさが、俺を苦しめる。


 夏休みは、明日で最後。学校が始まれば、また蓮は生徒会副会長として忙しくなる。そうなれば、もっと会えなくなる。もっと連絡も取れなくなる。


 二人の関係は、このまま終わってしまうのか。その恐怖が、俺を支配していく。


 窓の外から、虫の声が聞こえてくる。夏の終わりを告げる、寂しい音だ。俺と蓮の関係も、夏と共に終わろうとしているのか。


 その不安が、俺の心を満たしていった。凛音の言葉が、何度も頭の中で繰り返される。


『鈴波副会長は、春川くんを大切にしてくれてる?』


 答えは、分からない。でも、今の俺には、その答えが「いいえ」に思えてならなかった。


 涙が、枕を濡らしていく。蓮への想い。寂しさ。不安。全てが混ざり合って、俺の心を満たしていく。


 夏の終わりが、二人の関係も終わらせようとしていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

応援が次回更新の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ