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親友に彼女をNTRられた俺は、俺にだけ優しいクール系ギャルヒロインとお試しで付き合うことになりました。  作者: 沢田美


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揺らぐ恋に徐々に忍び寄るNTR

 翌朝、俺は蓮からのメッセージで目を覚ました。


『おはよう、海斗。今日は、私の家でゆっくりしない? お昼ご飯、作るから』


 俺は少し驚いた。蓮が料理を作ってくれるという。その申し出が、嬉しい。


『おはよう。いいのか? じゃあ、昼前に行くよ』


『うん! 待ってるね』


 俺は準備を始めた。シャワーを浴び、着替えを済ませる。リビングに行くと、母親が朝食の準備をしていた。


「おはよう、海斗」


「おはよう」


「今日も蓮ちゃんのところ?」


「ああ。昼ご飯、作ってくれるって」


「そう。いい子ね、蓮ちゃんは」


 母親は優しく微笑んだ。その笑顔には、安心したような色が滲んでいる。


「でも、海斗」


「ん?」


「一人暮らしの女の子の家に行くんだから、ちゃんと気をつけなさいよ」


「……分かってる」


 俺は少し照れながら頷いた。母親の言葉の意味は、よく分かっている。


 朝食を済ませ、家を出た。外の空気は、すでに暑い。蝉の声が、いつもより大きく聞こえる。夏が、最高潮に達している。歩きながら、蓮のことを考える。一人暮らしで、いつも広い部屋に一人でいる蓮。その寂しさを、少しでも埋められたら。そう思いながら、俺は駅に向かった。


 ※ ※ ※


 蓮のマンションに着くと、インターホンを押した。


「はーい」


 蓮の明るい声が聞こえる。その声だけで、俺の胸が温かくなる。


「海斗? 今開けるね」


 オートロックが解除され、俺はエレベーターで上階に向かった。蓮の部屋の前に立つと、ドアが開いた。


「いらっしゃい、海斗」


 蓮はエプロンを着けていた。髪を後ろで結び、料理をしていたのだろう。その姿が、どうしようもなく可愛い。学校では近寄りがたい生徒会副会長が、エプロン姿で俺を迎えてくれる。そのギャップが、俺の心を揺さぶる。


「お邪魔します」


「どうぞ」


 部屋に入ると、キッチンから良い匂いが漂ってきた。何かを煮込んでいるような香りだ。


「いい匂いだな」


「えへへ、頑張ってるんだ」


 蓮は嬉しそうに微笑んだ。その笑顔が、俺の心を満たしていく。


「もう少しで出来るから、ちょっと待っててね」


「分かった」


 俺はソファに座り、蓮が料理をする姿を眺めた。慣れた手つきで包丁を動かし、鍋をかき混ぜる。その姿が、とても家庭的だ。普段は一人で、こうやって料理を作っているのだろう。その光景を想像すると、胸が締め付けられる。


「海斗、お待たせ」


 蓮がテーブルに料理を運んできた。カレーライス、サラダ、それにスープ。どれも美味しそうだ。


「すごいな、蓮」


「ありがとう。でも、カレーぐらいしか作れないんだけどね」


 蓮は少し照れた表情を浮かべた。その頬が、ほんのり赤く染まっている。


「いただきます」


 二人で食べ始めた。カレーは、丁度いい辛さで美味しい。野菜もたっぷり入っていて、蓮の気遣いが感じられる。


「美味い」


「本当?」


「ああ、すごく美味い」


 蓮は嬉しそうに微笑んだ。その笑顔が、輝いている。


「よかった。海斗に美味しいって言ってもらえて」


「蓮は料理、上手いな」


「一人暮らしだから、自分で作らないといけないし」


 寂しそうに蓮は言う。


「ありがとう」


「こっちこそ」


 食事を終え、二人でソファに座った。外から差し込む陽射しが、リビングを明るく照らしている。


「ねえ、海斗」


「ん?」


「学校、もうすぐ始まるね」


 蓮は少し寂しそうに呟いた。その表情には、憂いが滲んでいる。


「夏休みも、残り一週間」


「そうだな」


「海斗と、こうやってゆっくり過ごせるのも、あと少し」


「学校が始まっても、変わらないさ」


 俺は蓮の手を握った。蓮の手は温かく、その温もりが俺の心を満たしていく。


「俺たちの時間は、ちゃんと作る」


「……でも」


 蓮は俯いた。その表情には、不安が滲んでいる。


「学校が始まったら、私、また生徒会副会長に戻らなきゃいけない」


「それが蓮の役割だろ」


「うん……でもね、海斗」


 蓮は俺を見上げた。その瞳には、悲しみが宿っている。


「学校では、私、誰とも距離を置いてる」


「……知ってる」


「クールで、近寄りがたくて、冷たい」


 蓮は自嘲的に笑った。その笑顔の奥に、痛みが見え隠れする。


「男子たちは、みんな私を避ける」


「それは……」


「女子たちも、私のこと好きじゃないと思う」


 蓮の声が、小さくなっていく。その声には、孤独が滲んでいる。


「生徒会副会長として、仕事はちゃんとやってる。でも、本当の私を知る友達は一人もいない」


「蓮……」


「海斗だけなんだ」


 蓮は俺の胸に顔を埋めた。その身体が、小さく震えている。


「私の本当の姿を知ってくれてるのは」


「蓮……」


 俺は蓮を抱きしめた。蓮の身体が、俺の腕の中に収まる。その温もりが、切なく感じられる。


「でも、学校が始まったら、海斗も私のこと、どう思うか分からない」


「そんなことない」


 俺ははっきりと答えた。その言葉に、一切の迷いはない。


「俺は、どんな蓮も好きだ」


「……本当?」


「本当だ」


 俺は蓮の頭を撫でた。蓮の髪が、指の間をすり抜けていく。


「学校での蓮も、今の蓮も、全部ひっくるめて好きだ」


「海斗……」


 蓮の目に、涙が浮かんだ。その涙が、頬を伝って落ちていく。


「ありがとう……」


「泣くなよ」


 俺は蓮の涙を拭った。蓮の頬は柔らかく、温かい。


「俺は、ずっと蓮の隣にいる」


「……約束?」


「約束だ」


 蓮は嬉しそうに微笑んだ。その笑顔が、涙に濡れて輝いている。


「じゃあ、信じる」


「ああ」


 しばらく、二人で抱き合っていた。蓮の温もり。蓮の鼓動。全てが、俺の心を満たしていく。窓の外から、蝉の声が聞こえてくる。夏の午後の音だ。


 蓮が顔を上げた。その目は、少し赤くなっている。


「ねえ、海斗」


「ん?」


「キスして」


「……ああ」


 俺は蓮の唇に、そっとキスをした。柔らかく、温かい感触。蓮の身体が、ふわりと力を抜く。キスが終わると、蓮は恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋めた。


「海斗、大好き」


「俺も」


 二人で抱き合ったまま、時間が過ぎていく。この時間が、永遠に続けばいい。そう思いながら、俺は蓮を抱きしめ続けた。


 ※ ※ ※


 夕方になり、俺は蓮の家を後にした。玄関で、蓮が名残惜しそうに俺を見つめている。


「また明日、会える?」


「ああ、もちろん」


「どこか、行きたいところある?」


「んー……蓮はどこか行きたい?」


「海斗と一緒なら、どこでもいい」


 蓮は微笑んだ。その笑顔が、俺の心を温かくする。


「じゃあ、明日考えよう」


「うん」


「今日は、料理ありがとう」


「こっちこそ、来てくれてありがとう」


 蓮は少し寂しそうに微笑んだ。その表情を見て、俺の胸が締め付けられる。


「おやすみ、海斗」


「おやすみ、蓮」


 エレベーターに乗り、一階に降りた。マンションを出て、駅に向かう。歩きながら、今日のことを思い返す。エプロン姿の蓮。料理を作ってくれた蓮。涙を流した蓮。その全てが、愛おしい。


 家に帰る途中、スマホが鳴った。見ると、凛音からのメッセージだった。


『春川くん、最近ずっと鈴波副会長と一緒だね』


 俺は少し考えた後、返信を打った。


『ああ、そうだけど』


『そっか。幸せそうだね』


『……ああ』


『私も、春川くんと一緒にいたいな』


 凛音からのメッセージに、俺は困惑した。どう返信すればいいのか、分からない。


『橘、俺は――』


 返信を打ちかけて、やめた。何を言っても、凛音を傷つけるだけだ。俺の気持ちは、蓮にしかない。その事実は、変わらない。


『ごめん、橘。俺の気持ちは変わらない』


 送信すると、しばらくして返信が来た。


『分かってる。でも、諦められない。ごめんね』


 その後、凛音からの返信はなかった。俺はスマホをポケットにしまい、歩き続けた。凛音の想い。それは、俺にはどうすることもできない。でも、凛音を傷つけたくもない。その矛盾に、俺は苦しんでいた。



 ※ ※ ※

 

 家に着き、ベッドに横になった。天井を見つめながら、今日のことを思い返す。蓮との時間。凛音からのメッセージ。全てが、俺の心に重くのしかかっている。


 スマホを見ると、蓮からメッセージが届いていた。


『今日は、本当にありがとう。海斗が来てくれて、すごく嬉しかった。一人でいると寂しいけど、海斗のことを思うと頑張れる。明日も、楽しみにしてるね。おやすみ、海斗。大好き』


 俺は微笑んで、返信を打った。


『こっちこそ、料理ありがとう。美味しかった。蓮が一人で寂しいときは、いつでも連絡してくれ。明日も、一緒に過ごそう。おやすみ、蓮。俺も大好きだ』


 送信すると、すぐにハートマークのスタンプが返ってきた。俺はスマホを置いて、目を閉じた。


 夏休みは、あと一週間。蓮と一緒に過ごす、幸せな日々も、もうすぐ終わる。学校が始まったら、また日常に戻る。生徒会副会長として、クールに振る舞う蓮。その蓮を、俺は支えたい。どんな蓮も、俺は愛している。その確信を胸に、俺は深い眠りについた。


 窓の外から、虫の声が聞こえてくる。夏の夜が、静かに更けていく。不純な恋。凛音の想いは、そう呼べるのかもしれない。手に入らないものを欲しがる。それは、不純なのか、純粋なのか。俺には分からない。ただ一つだけ確かなのは、俺と蓮の関係だけは、純粋だということだ。お互いを想い合い、支え合っている。その想いを胸に、俺は深い眠りについた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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