これからの未来へ
文化祭翌日の日曜日。
俺は蓮と一緒に、あの閉店予定の飲食店を訪れていた。店の前に立つと、あの古びた看板が目に入る。この店も、もうすぐ見納めになるのか。
「店主さん、いますか?」
蓮が店の扉を開けると、店主が笑顔で出迎えてくれた。
「ああ、鈴波さんと春川くん。来てくれたんだね」
「はい。約束通り、文化祭の写真を持ってきました」
蓮はアルバムを取り出した。
文化祭当日の写真が、たくさん収められている。各クラスの出し物、賑わう会場、笑顔の生徒たち。そして、ステージで歌う蓮の写真も。その一枚一枚が、あの日の思い出を鮮明に蘇らせる。
「すごいな……本当に素晴らしい文化祭だったんだね」
店主は一枚一枚、丁寧に写真を見ていた。その目には、優しい光が宿っている。
「はい。おかげさまで、大成功でした」
「それは良かった」
店主は目を細めた。
「君たちの頑張りが、ちゃんと実を結んだんだね」
「店主さんの協賛金のおかげです」
蓮は深々と頭を下げた。
「本当に、ありがとうございました」
「いやいや、こちらこそありがとう」
店主は優しく微笑んだ。
「君たちの文化祭に協力できて、最後にいい思い出ができた」
「店主さん……」
蓮の目に、涙が浮かんだ。
「お店、本当に閉めちゃうんですか?」
「ああ。来月末で閉店だ」
店主は少し寂しそうに言った。
「長年やってきたけど、時代の流れには勝てなかったよ」
「……そんな」
「でもね、後悔はしてない」
店主は写真を見ながら続けた。
「最後に、君たちみたいな素敵な若者と出会えた。それだけで、十分幸せだよ」
「店主さん……」
蓮は涙をこらえきれず、泣き始めた。
俺の胸も熱くなる。店主さんの優しさが、蓮の心に深く響いている。そして、俺の心にも深く響いている。
「ありがとう……ございました……」
俺は蓮の肩を抱き寄せた。
「店主さん、俺たちからも、本当にありがとうございました」
「いいんだよ。泣かないで」
店主は蓮の頭を優しく撫でた。
「君たちは、これから素敵な未来を作っていくんだ。前を向いて、頑張りなさい」
「……はい」
蓮は涙を拭いて、顔を上げた。
「店主さん、お元気で」
「君たちもね」
※ ※ ※
店を出ると、蓮はまだ目を潤ませていた。
「蓮、大丈夫か?」
「うん……ちょっと感動しちゃって」
蓮は俺の腕に抱きついた。
その温もりが、俺の腕から伝わってくる。蓮の優しさが、俺の心を満たしていく。
「店主さん、すごく優しかった」
「ああ」
「海斗」
「ん?」
「私たち、店主さんの分まで幸せにならないとね」
「……そうだな」
俺は蓮の手を握った。
「絶対、幸せになろう」
「うん!」
※ ※ ※
駅前のカフェで休憩していると、蓮が口を開いた。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「文化祭、終わっちゃったね」
「ああ。あっという間だった」
「でも、すごく充実してた」
蓮は嬉しそうに微笑んだ。
「海斗と一緒に準備して、色んなトラブルを乗り越えて。大変だったけど、楽しかった」
「俺も」
俺はカフェラテを飲んだ。
「蓮と一緒だったから、頑張れた」
「……ありがとう」
蓮は照れた表情を浮かべた。
「これから、また普通の日常に戻るね」
「そうだな」
「でも、その日常が楽しみ」
蓮は俺を見つめた。
「海斗と一緒の日常が、一番幸せだから」
「蓮……」
「だから、これからもずっと一緒にいてね」
「当たり前だろ」
俺は蓮の手を握った。
蓮の手は温かい。この温もりを、ずっと感じていたい。この温もりが、俺の全てだ。
「俺は、ずっと蓮の隣にいる」
「……うん」
蓮は幸せそうに微笑んだ。
カフェを出て、駅前を歩く。
「ねえ、海斗。今日、このまま帰るの?」
「いや、特に予定はないけど」
「じゃあ――」
蓮は少し恥ずかしそうに言った。
「私の家、来ない?」
「いいのか?」
「うん。今日は、海斗にゆっくりしてもらいたいから」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「やった!」
蓮の家に着くと、二人でソファに座った。
「お茶、淹れるね」
「ありがとう」
蓮がキッチンに向かう間、俺は部屋を見回した。
いつ来ても、綺麗に片付いている。一人暮らしとは思えないほどだ。蓮らしい、清潔で落ち着いた空間。
「はい、お茶」
蓮がマグカップを持ってきた。
「ありがとう」
俺が一口飲むと、蓮は俺の隣に座った。
蓮の温もりが、俺のすぐ隣にある。この距離が、どうしようもなく愛おしい。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「文化祭、本当にお疲れ様」
「蓮も」
「でも、海斗がいなかったら、成功しなかったと思う」
蓮は真剣な表情で続けた。
「トラブルの対応も、クラスの調整も、全部海斗が手伝ってくれたから」
「いや、蓮の方がすごかったよ」
「そんなことない」
蓮は首を横に振った。
「私、一人だったら絶対できなかった。海斗がいてくれたから、頑張れた」
「……俺も」
俺は蓮の肩を抱き寄せた。
蓮の身体が、俺の腕の中に収まる。この感触を、ずっと忘れたくない。
「蓮がいたから、頑張れた」
「海斗……」
蓮は俺の胸に顔を埋めた。
「これからも、ずっと一緒だからね」
「ああ」
しばらくそうしていると、蓮が顔を上げた。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「私ね、海斗と付き合えて、本当に幸せ」
「俺も」
「夢に振られて、デマを流されて、辛い時期があったけど――」
蓮は俺の目を見つめた。
「それがあったから、海斗と出会えた」
「蓮……」
「だから、あの時の辛さも、今は感謝してる」
蓮は微笑んだ。
「海斗と出会うための、必要な過程だったんだって」
「……そうだな」
俺も頷いた。
「夢に振られた時は、絶望してた。でも、蓮と出会って、全部が変わった」
「うん」
「だから、ありがとう。蓮」
「こちらこそ」
蓮は俺の頬に手を添えた。
「海斗、大好き」
「俺も」
俺は蓮の頬に手を添え、ゆっくりと顔を近づけた。
唇が触れ合う。
柔らかくて、温かい。
何度キスをしても、この温もりに慣れることはない。
むしろ、キスをするたびに、蓮への愛情が深まっていく。
離れると、蓮は恥ずかしそうに笑った。
「海斗とのキス、やっぱり好き」
「俺も」
「じゃあ、もう一回」
「蓮……」
「だめ?」
「だめじゃない」
俺はもう一度、蓮とキスをした。
※ ※ ※
夕方になり、俺は蓮の家を出た。
「じゃあ、また明日」
「うん」
蓮は名残惜しそうに俺を見送った。
「明日から、また学校だね」
「ああ。でも、蓮と一緒なら楽しい」
「私も」
蓮は嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、おやすみ。海斗」
「おやすみ、蓮」
別れ際、蓮が俺の頬にキスをした。
家に帰り、ベッドに横になる。
スマホを見ると、蓮からメッセージが届いていた。
『今日も楽しかった。海斗、ありがとう。明日から、また新しい日常が始まるね。楽しみにしてる。おやすみ』
俺は返信を打った。
『こっちこそ。蓮と一緒の日常が、一番幸せだ。明日も、よろしく。おやすみ』
送信すると、すぐに既読がついた。
そして、ハートマークのスタンプが送られてきた。
「蓮……」
俺は思わず、スマホを抱きしめた。
文化祭は終わった。
でも、これは終わりじゃない。
蓮との新しい日常が、これから始まる。
どんな未来が待っているか分からない。
でも、蓮と一緒なら、どんなことも乗り越えられる。
そう信じて、俺は目を閉じた。
※ ※ ※
翌日の月曜日。
いつものように昇降口で蓮を待っていると、彼女が笑顔で現れた。
「おはよう、海斗」
「おはよう」
蓮は自然に俺の手を握り、二人で校舎に入る。その手の温もりが、俺に力をくれる。
廊下を歩いていると、すれ違う生徒たちが声をかけてきた。
「鈴波副会長、春川くん! 文化祭、お疲れ様でした!」
「すごく楽しかったです!」
「来年も、よろしくお願いします!」
次々とかけられる感謝の言葉。
蓮は嬉しそうに応えていた。
「みんな、ありがとう!」
教室の前で、蓮が立ち止まった。
「じゃあ、昼休みに」
「ああ」
蓮は軽く背伸びをして、俺の頬にキスをした。
「頑張ってね」
「蓮も」
教室に入ると、クラスメイトたちが声をかけてきた。
「春川、文化祭お疲れ様!」
「すごく楽しかったぞ!」
「来年も期待してるからな!」
温かい言葉が、次々とかけられる。
俺は軽く頷きながら、席に着いた。
隣の男子が話しかけてくる。
「春川、鈴波副会長と本当にいい感じだな」
「そうか?」
「ああ。見てるだけで、幸せそうだもん」
男子は笑った。
「俺も、早く彼女欲しいわ」
「頑張れよ」
「ああ」
授業が始まり、いつも通りの学校生活が流れていく。
文化祭は終わったけど、日常は続いていく。
でも、この日常が、俺は好きだった。
蓮と一緒の、穏やかな日常。
昼休み、屋上で蓮と合流した。
「お疲れ様」
「蓮も」
二人で並んでフェンスにもたれかかると、蓮が弁当箱を取り出した。
「今日も作ってきた」
「ありがとう」
俺は弁当箱を受け取り、蓋を開けた。
今日は、唐揚げ、卵焼き、ほうれん草のお浸し、そしてミニトマトが入っていた。彩りも綺麗で、美味しそうだ。
「海斗の好きなもの、たくさん入れた」
「嬉しい」
俺は箸を取り、唐揚げを口に運んだ。
「……やっぱり美味い」
「よかった」
蓮も自分の弁当を食べ始めた。
二人で並んで食べる昼食。
文化祭の準備で忙しかった日々とは違う、穏やかな時間。この時間が、どうしようもなく愛おしい。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「文化祭、終わっちゃったね」
「ああ」
「寂しいような、ホッとしたような」
蓮は複雑な表情を浮かべた。
「でも、この日常が一番好き」
「俺も」
俺は蓮の手を握った。
「蓮と一緒の日常が、一番幸せだ」
「……うん」
蓮は嬉しそうに微笑んだ。
弁当を食べ終えると、蓮が俺の肩に頭を預けてきた。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「これから、もっと色んなところに行きたいね」
「ああ」
「海斗と、たくさん思い出作りたい」
「俺も」
俺は蓮の髪を撫でた。
蓮の髪が、指の間をすり抜けていく。この感触を、ずっと覚えていたい。
「蓮と一緒なら、どこでも楽しい」
「……ありがとう」
蓮は俺の胸に顔を埋めた。
「海斗、大好き」
「俺も」
空を見上げると、青空が広がっていた。雲一つない、綺麗な空。文化祭は終わった。でも、俺たちの物語は、まだ始まったばかり。これから、どんな未来が待っているのか。楽しみで仕方なかった。
蓮と一緒なら、どんな困難も乗り越えられる。
そう信じて、俺たちは前に進んでいく。夢に振られた時は、世界が終わったと思った。でも、それは間違いだった。あれは終わりじゃなく、始まりだった。蓮との、新しい物語の始まり。
そして、これからも俺たちの物語は続いていく。
ずっと、ずっと。
蓮と一緒に。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「ずっと、一緒だからね」
「ああ、約束する」
俺は蓮を抱き寄せた。
「これから、どんなことがあっても、蓮の隣にいる」
「……うん」
蓮は幸せそうに微笑んだ。
午後の授業が終わり、俺と蓮は一緒に帰路についた。
「今日も、楽しかったね」
「ああ」
「明日も、楽しみ」
「俺も」
駅の改札前で、蓮が立ち止まった。
「じゃあ、また明日」
「ああ」
別れ際、蓮が俺の頬にキスをした。
「おやすみ、海斗」
「おやすみ、蓮」
蓮が改札を通っていくのを見送りながら、俺は思った。
文化祭が終わって、また日常に戻った。
でも、この日常が、何よりも幸せだ。
蓮と一緒の、穏やかな日々。
これからも、ずっと続いていく。そう信じて、俺は改札を通った。新しい日常が、もう始まっている。
蓮と一緒の、幸せな日々が。
――破滅の時は突然に――
夢に振られ、デマを流され、絶望していた俺。
でも、蓮が手を差し伸べてくれた。
蓮と出会い、本当の恋愛を知った。
破滅だと思っていたあの日は、実は新しい始まりだった。蓮との、幸せな物語の始まり。そして、これからも俺たちの物語は続いていく。
ずっと、ずっと。
蓮と一緒に。
蓮の笑顔が、俺の全てだ。この幸せを、絶対に守り続ける。
その決意を胸に、俺は前を向いた。
青空の下、俺は歩き続ける。蓮との未来へ向かって。その未来は、きっと明るい。蓮と一緒なら、どんな未来でも幸せに変えられる。
そう信じて、俺は一歩ずつ前に進んでいく。
(文化祭編完)
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