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親友に彼女をNTRられた俺は、俺にだけ優しいクール系ギャルヒロインとお試しで付き合うことになりました。  作者: 沢田美


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文化祭 午前の部 迫る不穏な影

 開会式が終わって間もなく、蓮のスマホが鳴り響いた。


「もしもし……え? 分かりました」


 電話を切った蓮の表情が曇る。さっきまでの達成感が、一瞬で不安に変わっていく。その変化が、俺の胸を締め付ける。


「海斗、大変! 面倒なことが一気に起きた」


「どうした?」


「一年C組でカフェの食材が足りなくなってる。それと、三年B組は来場者が予想以上に多くて、混雑が危険な状態になってる」


 蓮は焦りを隠せない様子で説明した。その声が、少し上ずっている。


 その時、再び蓮のスマホが鳴った。


「はい……また!?」


 蓮は電話を切ると、俺を見た。


 その瞳には、不安と焦りが混じっている。でも、諦めの色はない。蓮は、まだ戦おうとしている。その強さが、俺の心を打つ。


「海斗、ステージの音響がまたトラブルを起こしてる」


「……一度に三つか」


 俺は状況を整理した。一年C組の食材不足、三年B組の混雑、そしてステージの音響トラブル。


 まるで試されているようだ。でも、ここで諦めるわけにはいかない。蓮の不安を、俺が取り除かなければ。


「こうなったら、手分けして対応しよう」


「手分け?」


「ああ。俺が音響トラブルと混雑の誘導に行く。蓮は食材不足の対応を頼む」


「……分かった」


 蓮は少し不安そうな表情を浮かべたが、すぐに決意を固めた。その瞳に、強い意志の光が宿る。蓮のこの強さが、俺は大好きだ。


「じゃあ、それぞれ頑張ろう」


「ああ。何かあったら、すぐ連絡して」


「うん。海斗も気をつけて」


 俺と蓮は背を向け、それぞれのトラブルに向かって駆け出した。


 蓮の背中が小さくなっていく。大丈夫だろうか。不安が胸をよぎるが、蓮なら大丈夫だと信じる。蓮は、俺が想う以上に強い。その背中が、それを物語っている。


 ※ ※ ※


 体育館に向かう途中、俺はスマホを取り出して友人に電話をかけた。


 頼む、出てくれ。


 コール音が二回鳴った後、電話が繋がった。


『お? どうした、海斗』


「迅、今文化祭で音響トラブルが起きたんだ。お前の力を借りたい」


 かつての親友だった傑と同じくらいの付き合いの友人――篠原迅(しのはら・じん)。彼は中学時代から音響機材に詳しく、頼りになる男だった。こういう時、友人の存在がどれだけありがたいか。


『またかよ。この前直したばっかりだろ?』


「それが、違う機材なんだ。詳しく説明するから――」


 俺は人混みをかき分けながら、体育館に向かった。


 周囲は文化祭に来た生徒や保護者、地域の人たちで溢れかえっている。みんな楽しそうに笑っている。その笑顔を守るために、俺は走る。この笑顔を守ることが、俺たちの使命だ。


 人波に揉まれながら、俺は必死に前に進む。蓮も今頃、同じように頑張っているはずだ。負けられない。


 体育館に到着すると、ステージ裏で三年生のバンドメンバーが困惑した表情で機材を見つめていた。


「春川くん! 助けに来てくれたのか!」


「ああ。どんな状態だ?」


「音が全く出なくて……さっきまで動いてたのに」


 俺は機材の前に立ち、迅に状況を伝えた。


『なるほどな。じゃあ、まず電源ケーブルの接続を確認してくれ』


「分かった」


 迅の指示に従って、一つ一つ確認していく。


 焦る気持ちを抑えて、冷静に作業を進める。蓮も今頃、同じように頑張っているんだ。俺も負けられない。蓮のために、この文化祭を成功させる。その想いが、俺を突き動かす。


『次に、ミキサーの入力設定を――』


 十分ほど作業を続けると、スピーカーから音が流れた。


「治った!」


『よし。これで大丈夫だろ』


「助かった、迅!」


『どうってことねぇよ。これで貸し一つな?』


「はいはい、分かったよ」


 俺は迅との電話を切り、バンドメンバーに声をかけた。


「もう大丈夫だ。演奏、頑張ってくれ」


「ありがとうございます!」


 音響トラブルを解決した俺は、次のトラブル現場――三年B組に向かった。廊下を走りながら、蓮のことを想う。大丈夫だろうか。蓮の顔が、脳裏に浮かぶ。


 ※ ※ ※


 三年B組の展示室に着くと、入口に長い行列ができていた。


 中からは、来場者の声が溢れている。人、人、人。どこを見ても人だらけだ。これは、確かに危険な状態だ。


「押さないでください!」


「すみません、もう少しお待ちください!」


 クラスの生徒たちが必死に対応していたが、明らかに混乱していた。生徒たちの顔には、焦りと疲労が浮かんでいる。


 このままでは事故が起きる。俺は急いで列の先頭に向かった。


「春川くん!」


 クラス委員長が俺に気づいて駆け寄ってきた。その表情には、救いを求める色が浮かんでいる。


「助けてくれ! このままじゃ、事故が起きる!」


「分かった。まず、入場制限をしよう」


 俺は行列の先頭に立ち、来場者に呼びかけた。


「すみません、展示室が混雑していますので、入場を一時制限させていただきます」


 何人かの来場者が不満そうな表情を浮かべたが、事情を説明すると理解してくれた。みんな、協力的だ。


「それでは、十人ずつ順番にご案内します。少々お待ちください」


 俺はクラスの生徒たちに指示を出した。


「展示室の中にいる人数を確認して、十人出てきたら次の十人を入れる。それを繰り返せば、混雑を防げる」


「分かりました!」


 生徒たちが動き始めた。


 それから三十分ほど、俺は行列の整理と来場者の誘導を続けた。


 ボランティアの生徒たちも手伝ってくれて、徐々に混雑が解消されていった。みんなの協力で、少しずつ状況が改善していく。


 額に汗が滲む。疲れた。でも、蓮はもっと頑張っているはずだ。蓮の笑顔を守るために、俺は頑張る。その想いが、俺を支えてくれる。


「ありがとうございます、春川くん!」


 クラス委員長が感謝の言葉を述べた。


「いや、みんなが協力してくれたから」


「でも、春川くんがいなかったら、パニックになってたと思います」


 委員長は安堵の表情を浮かべた。


「これで、安全に展示を続けられます」


「うん、頑張ってくれ」


 俺は三年B組を後にして、校内を見回り始めた。


 その時だった。


「あれ? 春川くんだよね?」


 聞き覚えのない声が、俺を呼び止めた。


 振り返ると、ギャル風のメイクをした女子が立っていた。茶髪で、派手なアクセサリーをつけている。でも、その瞳は意外とクールだった。


「え? ああ……」


「やっぱり! 隣のクラスの橘凛音(たちばな・りんね)。りんねって呼んで」


 凛音は笑顔で手を振った。


「さっき、めっちゃかっこよかったよ。混雑の誘導」


「あ、ああ……ありがとう」


「生徒会って、あんなに動けるんだ。すごいね」


 凛音は俺の腕を掴んだ。


「ねえ、LINE交換しない?」


「え?」


「だって、春川くんみたいな人と友達になりたいし」


 凛音は強引にスマホを取り出した。


「ほら、QRコード」


「いや、でも――」


「いいじゃん。減るもんじゃないし」


 凛音はニヤニヤしながら言った。


 俺は困惑しながらも、断る理由も見つからず、QRコードを読み取った。


「よし! じゃあ、また後で連絡するね!」


 凛音はウインクして、去っていった。


「……何だったんだ、今の」


 俺は首を傾げながら、校内の見回りを続けた。


 蓮は大丈夫だろうか。そんな不安が頭をよぎる。蓮の顔が、脳裏に浮かぶ。その笑顔を守りたい。


 ※ ※ ※


 その頃、蓮は一年C組のカフェに到着していた。


「鈴波副会長!」


 クラス委員長の女子が慌てて駆け寄ってきた。


「食材が足りなくて……予想以上にお客さんが来て、このままじゃ午後にはメニューが提供できなくなります」


「具体的に、何が足りないの?」


「パンケーキの材料です。小麦粉、卵、牛乳……全部使い切っちゃって」


 蓮は少し考えた後、周囲を見回した。


 海斗なら、どう対応するだろう。そう考えると、答えが見えてきた。海斗の顔が、脳裏に浮かぶ。その笑顔が、蓮に勇気をくれる。海斗がいるから、蓮は頑張れる。


「他のクラスで、余ってる食材がないか聞いてみよう」


「え? でも、他のクラスだって必要だと思うんですが……」


「困った時はお互い様でしょ」


 蓮はスマホを取り出し、各クラスの委員長に連絡を取り始めた。


 数分後、蓮は顔を上げた。


「二年A組が小麦粉を分けてくれるって。三年D組も卵を少し余ってるらしい」


「本当ですか!?」


「うん。今から取りに行こう」


 蓮とクラスの生徒たちは、二年A組と三年D組を回って食材を分けてもらった。


「ありがとうございます!」


「いいのよ。文化祭は、みんなで作るものだから」


 二年A組の委員長が優しく微笑んだ。


「困った時は、助け合わないとね」


 食材を持ち帰ると、一年C組のカフェは再び営業を再開できた。


「鈴波副会長、本当にありがとうございます!」


「いえ、みんなが協力してくれたおかげ」


 蓮は満足そうに微笑んだ。


「これで、午後も大丈夫ね」


 その時、蓮のスマホが鳴った。


『蓮、そっちは大丈夫か?』


 海斗の声だった。


 その声を聞いた瞬間、蓮の胸に安堵が広がる。海斗の声が、蓮の心を満たしていく。海斗の声を聞くだけで、蓮は安心できる。


「うん、何とか解決した。海斗は?」


『音響も混雑も、一応落ち着いた』


「よかった……」


 蓮は安堵のため息をついた。


『じゃあ、これから校内を見回る。蓮も気をつけてな』


「うん。海斗も」


 電話を切ると、蓮は校内を見回り始めた。


 他にもトラブルが起きていないか、確認しなければならない。


 海斗も頑張っている。私も頑張らなければ。海斗のために、この文化祭を成功させる。その想いが、蓮を支えている。


 ※ ※ ※


 昼休みの時間、俺と蓮は生徒会室で落ち合った。


「お疲れ様」


「蓮も」


 二人で椅子に座ると、疲労がどっと押し寄せてきた。身体が重い。でも、蓮に会えた安心感が、その疲れを癒してくれる。蓮の顔を見るだけで、俺は元気になれる。


「午前中だけで、こんなに疲れるとは……」


 蓮が呟いた。


「でも、何とか乗り越えたな」


「うん。海斗のおかげ」


「蓮だって、頑張っただろ」


 俺は蓮の頭を撫でた。


 蓮の髪が、指の間をすり抜けていく。この温もりが、俺を癒してくれる。蓮の髪は柔らかくて、優しい香りがする。この感触を、ずっと覚えていたい。


「二人で協力したから、うまくいったんだよ」


「……そうだね」


 蓮は嬉しそうに微笑んだ。


 その時、俺のスマホに通知が来た。


 見ると、知らない番号からのLINEだった。


『やっほー! さっきの凛音だよ! 春川くん、今日めっちゃ活躍してたね! かっこよかった♪』


「……誰?」


 蓮が俺のスマホを覗き込んだ。


「橘凛音?」


「ああ、さっき校内で会って、強引にLINE交換されたんだ」


「……そう」


 蓮の表情が、少し曇る。


「海斗、知らない女の子とLINE交換したの?」


「いや、強引に……」


「……ふーん」


 蓮は少しむくれた表情を浮かべた。


「でも、可愛い子だったの?」


「え? いや、そんなこと気にしてなかったけど」


「本当?」


「本当だよ」


 俺は蓮の手を握った。


「俺が見てるのは、蓮だけだから」


「……本当に?」


「ああ」


 蓮は少し安心したように微笑んだ。


「じゃあ、許す」


「でも、午後も何か起きるかもしれない」


「ああ。油断はできないな」


 その時、扉が開いて桐谷が入ってきた。


「二人とも、午前中お疲れ様」


「会長、何かありましたか?」


「いや、今のところ大きな問題はない。二人が素早く対応してくれたおかげだ」


 桐谷は感謝の言葉を述べた。


「午後も頼むぞ」


「はい」


 桐谷が出て行くと、蓮が俺を見た。


「海斗、お弁当食べる?」


「え? 蓮、今日も作ってきたのか?」


「当たり前でしょ。文化祭でも、海斗にちゃんと食べてもらいたいから」


 蓮は弁当箱を取り出した。


 その仕草が、どうしようもなく愛おしい。こんな忙しい日でも、俺のことを想ってくれている。蓮の優しさが、俺の胸を満たしていく。蓮のこの優しさが、俺は大好きだ。


「ありがとう」


 二人で並んで弁当を食べる。


 蓮の料理は、今日も美味しかった。蓮の愛情が、料理から伝わってくる。


「ねえ、海斗」


「ん?」


「さっきの橘さん、返信するの?」


「しなくていいか?」


「……別に、してもいいけど」


 蓮は少し不機嫌そうだった。


「でも、変なこと送られても、ちゃんと断ってよね」


「分かってるよ」


 俺は蓮の頭を撫でた。


「蓮以外に興味ないから」


「……本当?」


「本当だ」


 蓮は嬉しそうに微笑んだ。


「じゃあ、信じる」


「午後も、一緒に頑張ろうね」


「ああ、当たり前だろ」


 俺は蓮の手を握った。


 蓮の手は温かい。この温もりが、俺に力をくれる。蓮の手を握っていると、どんな困難も乗り越えられる気がする。この手を、絶対に離したくない。


「何があっても、二人で乗り越えよう」


「……うん」


 蓮は幸せそうに微笑んだ。


 午後の文化祭が、もうすぐ始まる。


 まだまだ気を抜けないが、蓮と一緒なら大丈夫。


 そう信じて、俺たちは午後に備えた。


 廊下からは、生徒たちの楽しそうな声が聞こえてくる。笑い声、歓声、歌声。文化祭を楽しむ声が、校舎中に響いている。この声を守るために、俺たちは頑張る。


「文化祭、成功しそうだね」


 蓮が窓の外を見ながら呟いた。


「ああ。みんな、楽しんでる」


「よかった……」


 蓮は安堵の表情を浮かべた。


「海斗と一緒に準備してきて、本当によかった」


「俺も」


 俺は蓮の肩を抱き寄せた。


 蓮の温もりが、俺を包み込む。この幸せな時間が、ずっと続けばいい。蓮と一緒にいられるなら、それだけで幸せだ。蓮の存在が、俺の全てだ。


「蓮と一緒だから、ここまでこれた」


 昼休みが終わり、午後の文化祭が再開する。


 これから、どんなトラブルが待っているか分からない。


 でも、俺たちは諦めない。


 最高の文化祭にするために。


 蓮と一緒に、前に進み続ける。


 蓮の手を握る力に、自然と力が込もる。この手を、絶対に離さない。この文化祭は絶対に成功させる。その確信が、俺の胸を満たしていた。


 午後も、蓮と一緒に頑張る。その決意を胸に、俺たちは再び文化祭の現場へと向かった。


 そして、俺のスマホには、凛音からのメッセージが次々と届いていた。でも、俺の心は蓮だけを見ている。この気持ちは、誰にも揺るがせない。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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