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親友に彼女をNTRられた俺は、俺にだけ優しいクール系ギャルヒロインとお試しで付き合うことになりました。  作者: 沢田美


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19/41

俺たちで作り上げる文化祭

「本当にありがとうございました!」

 

 委員長が深々と頭を下げた。

 

「いえ、頑張ったのはみんなです」

 

 蓮は疲れた表情ながらも、満足そうに微笑んでいた。その笑顔が、どんなに疲れていても輝いている。

 校舎を出ると、蓮が俺の腕に寄りかかってきた。蓮の身体が、俺の腕に預けられる。その重みが、どうしようもなく愛おしい。

 

「疲れたね」

 

「ああ。でも、いい疲れだ」

 

「うん」

 

 蓮は俺を見上げた。その瞳には、疲労と幸福が混じっている。

 

「海斗、いつもありがとう。私だけじゃ、こんなにうまくいかなかった」

 

「蓮だって、すごいよ。クラスをまとめる力、誰にも負けない」

 

「……ありがとう」

 

 蓮は嬉しそうに笑った。

 その時、蓮が俺の腕をぎゅっと掴んだ。


「ねえ、海斗」


「ん?」


「今日、海斗がいてくれて本当によかった」


 蓮は俺の腕に頬を寄せた。


「一人だったら、きっと諦めてた。でも、海斗が隣にいてくれるから、頑張れる」


「俺も、蓮がいるから頑張れる」


 俺は蓮の頭を撫でた。柔らかい髪が、指の間をすり抜けていく。


「二人で作り上げる文化祭だからな」


「……うん」


 蓮は幸せそうに目を細めた。

 

 ※ ※ ※

 

 翌日、俺の友人が学校に来て、三年C組の音響設備を見てくれた。友人は手慣れた様子で機材を点検していく。その姿は、プロのエンジニアのようだった。

 

「ああ、これなら直せる」

 

 友人は自信満々に言った。

 

「配線が一本外れてただけだ。すぐ直すよ」

 

 十分後、音響設備は完璧に動くようになった。

 

「すごい! 音が出た!」

 

 三年C組の生徒たちが歓声を上げた。教室の中が、一気に明るい雰囲気に包まれる。まるで、諦めかけていた希望が、再び灯ったような変化だった。

 

「本当にありがとうございます!」

 

「いいよ。頑張ってな、文化祭」

 

 友人は笑って帰っていった。

 

「よかったね」

 

 蓮が俺の手を握った。蓮の手は温かい。その温もりが、俺の手のひらから伝わってくる。

 

「海斗の友達、いい人だね」

 

「ああ。昔から頼りになるやつなんだ」


「海斗って、頼りになる友達がいて羨ましい」


 蓮は少し寂しそうに微笑んだ。


「私、生徒会の仕事ばっかりで、あんまり友達作れてないから」


「蓮には、俺がいるだろ」


 俺は蓮の手を握り返した。


「俺が、蓮の一番の味方だ」


「……ずるい」


 蓮は顔を赤らめた。


「そういうこと言うの、反則」


「本当のことだよ」


「……ありがとう、海斗」


 蓮は嬉しそうに俺の腕に抱きついた。

 

 その時、生徒会の会計、野村が慌てて走ってきた。その表情には、明らかな焦りが浮かんでいる。息を切らしながら、必死に駆け寄ってくる姿を見て、俺は嫌な予感がした。

 

「蓮! 大変だ!」

 

「どうしたの?」

 

「協賛企業の一つが、広告掲載を断ってきた!」

 

「え? なんで?」

 

「詳しい理由は言わなかったけど、とにかく広告は出せないって……」

 

 蓮は顔色を変えた。その表情から、血の気が引いていく。

 

「それって、五万円協賛してくれた企業だよね?」

 

「そう……返金しなきゃいけないかもしれない」

 

「でも、もう予算は全部配分しちゃってる。返金する余裕なんて……」

 

 蓮は頭を抱えた。その姿を見ていると、俺の胸も痛む。蓮が、こんなに追い詰められている。

 

「どうしよう……」

 

「落ち着いて」

 

 俺が蓮の肩を叩いた。蓮の肩が、小刻みに震えている。その震えが、俺の手のひらから伝わってくる。

 

「まず、その企業に直接話を聞きに行こう。理由が分かれば、対処法も見つかる」

 

「……うん」

 

 蓮は深呼吸をした。その胸が、大きく上下する。蓮は必死に、冷静さを取り戻そうとしている。

 

「そうだね。行ってみよう」


 野村が去った後、蓮は俺の胸に顔を埋めた。


「海斗……不安」


「大丈夫だ。俺が一緒にいる」


 俺は蓮を抱きしめた。


「蓮と俺で、一緒に解決しよう」


「……ありがとう」


 蓮は俺の胸の中で、小さく頷いた。


「海斗がいてくれるだけで、安心する」


「俺も、蓮がいるから頑張れる」


 しばらくそうしていると、蓮が顔を上げた。


「よし、行こう」


 蓮の瞳には、もう迷いはなかった。俺の温もりが、蓮に勇気を与えたのだ。


 ※ ※ ※

 

 放課後、俺と蓮はその企業を訪ねた。

 駅前の小さな飲食店だった。店の前に立つと、少し古びた看板が目に入る。長年この場所で営業してきたことが、その佇まいから伝わってくる。年季の入った木製の扉、手書きの営業時間の張り紙。この店には、長い歴史があるのだろう。

 

「あの、先日協賛をお願いした者ですが……」

 

 蓮が声をかけると、店主が申し訳なさそうに出てきた。

 

「ああ、学生さんたち。ごめんね、急に」

 

「どうして広告掲載を断られたんですか?」

 

「実は……うちの店、来月で閉店することになったんだ」

 

「え……」

 

 俺も蓮も、言葉を失った。

 

「経営が厳しくて。だから、広告を出しても意味がないかなって」

 

 店主は悲しそうに言った。その表情には、長年の苦労と諦めが滲んでいる。店を続けるために、どれだけの努力をしてきたのだろう。それでも、時代の波には勝てなかったのだ。

 

「でも、君たちの文化祭は応援したい。だから、協賛金は返さなくていい」

 

「本当ですか?」

 

「ああ。若い子たちが頑張ってる姿を見ると、元気をもらえるからね」

 

 店主は優しく微笑んだ。その笑顔には、若者への期待と優しさが込められている。

 

「代わりに、文化祭の写真でも見せてもらえたら嬉しいな」


「……ありがとうございます」

 

 蓮は涙ぐんだ。その瞳から、涙が溢れそうになっている。

 

「必ず、成功させます。そして、写真をたくさん持ってきます」

 

「楽しみにしてるよ」

 

 店を出ると、蓮は俺の胸に顔を埋めた。蓮の身体が、小さく震えている。

 

「海斗……」

 

「どうした?」

 

「店主さん、すごく優しかった。お店が閉まるのに、私たちのことを応援してくれて……」

 

 蓮は静かに泣いていた。その涙が、俺のシャツを濡らしていく。蓮の優しさが、俺の胸を満たしていく。こんなに人のことを想える蓮が、俺は大好きだ。

 

「絶対、成功させないと。店主さんのためにも」

 

「ああ、絶対成功させよう」

 

 俺は蓮を抱きしめた。蓮の温もりが、俺の胸に伝わってくる。この温もりを、ずっと守りたい。


「蓮、泣くなよ」


 俺は蓮の頭を優しく撫でた。


「海斗……ごめん……でも……」


「泣きたい時は、泣いていいんだぞ」


 俺は蓮の背中を優しく叩いた。


「俺が、ずっと蓮の隣にいる」


「……うん」


 蓮は俺の胸の中で、小さく頷いた。


 しばらくそうしていると、蓮が顔を上げた。


「ありがとう、海斗」


 蓮は涙を拭いて、微笑んだ。


「海斗がいてくれて、本当によかった」


「俺も、蓮がいてくれてよかった」


 俺は蓮の頬に手を添えた。


「蓮と一緒なら、何でも乗り越えられる」


「……私も」


 蓮は俺の手に自分の手を重ねた。


「海斗と一緒なら、どんなことも頑張れる」

 

 ※ ※ ※

 

 文化祭まで、残り三日。


 準備は最終段階に入っていた。校舎の中は、どこも活気に満ちている。生徒たちの表情には、期待と緊張が混じっている。教室からは、準備の音が絶えず聞こえてくる。


 生徒会室では、最後の打ち合わせが行われていた。

 

「当日のタイムスケジュール、確認します」

 

 蓮が資料を読み上げる。その声には、いつもの凛とした響きが戻っている。さっきまでの涙の跡は、もうどこにもない。

 

「開会式は九時から。各クラスの出し物は九時半から開始。ステージ企画は十時から――」

 

「待って」

 

 桐谷が手を上げた。

 

「開会式の挨拶、誰がやるんだっけ?」

 

「会長の桐谷さんです」

 

「……実は、俺、人前で話すの苦手なんだよな」

 

 桐谷は困った表情を浮かべた。

 

「蓮、代わりにやってくれないか?」

 

「え? でも、会長の役目ですよ」

 

「分かってる。でも、蓮の方が絶対うまくできる」

 

「……」

 

 蓮は少し考えた後、俺を見た。その瞳には、不安と決意が混じっている。蓮は、俺の意見を求めている。

 

「海斗、どう思う?」

 

「蓮なら、できるよ」

 

 俺は即答した。

 

「蓮の話し方、いつも説得力がある。みんなを鼓舞できる」

 

「……分かりました」

 

 蓮は頷いた。その表情には、決意が浮かんでいる。不安を乗り越えて、前に進もうとする強さが、その瞳から伝わってくる。

 

「やります」

 

「ありがとう、蓮」

 

 桐谷は安堵の表情を浮かべた。


 打ち合わせが終わり、生徒会室を出た。廊下には、もう誰もいない。静かな校舎の中を、二人で歩いていく。窓の外は、すっかり暗くなっている。

 

「ねえ、海斗」

 

「ん?」

 

「私、ちゃんと挨拶できるかな」

 

「大丈夫だよ」

 

 俺は蓮の手を握った。蓮の手は、少し冷たい。緊張しているんだ。

 

「蓮は、今まで色んな問題を解決してきた。挨拶なんて、簡単だろ」

 

「でも……緊張する」

 

「緊張したら、俺を見て」

 

 俺は蓮を見つめた。

 

「俺が、ずっと蓮を見てるから」

 

「……ずるい」

 

 蓮は顔を赤らめた。

 

「そんなこと言われたら、余計緊張しちゃう」

 

「じゃあ、緊張をほぐしてやろうか?」

 

 俺は蓮を抱き寄せた。蓮の身体が、俺の腕の中に収まる。この感触を、ずっと忘れたくない。

 

「海斗!? ここ、廊下だよ!?」

 

「誰もいないから大丈夫」

 

 俺は蓮の額にキスをした。蓮の肌は柔らかくて、温かい。その温もりが、俺の唇から伝わってくる。

 

「頑張れ、蓮」

 

「……うん」

 

 蓮は嬉しそうに微笑んだ。

 

「海斗がいれば、何でもできる気がする」


「俺も、蓮がいれば何でもできる」


 俺は蓮を抱きしめたまま、そっと囁いた。


「蓮は、俺の勇気の源だから」


「……海斗」


 蓮は俺の胸に顔を埋めた。


「私も、海斗が勇気をくれる」


「じゃあ、お互い様だな」


「うん」


 蓮は顔を上げて、俺を見つめた。


「海斗、もう一回……キスして」


「ん」


 俺は蓮の頬に手を添え、今度はゆっくりと唇を重ねた。


 柔らかくて、温かい。何度キスをしても、この温もりに慣れることはない。


 離れると、蓮は恥ずかしそうに笑った。


「海斗とのキス、大好き」


「俺も」


「これで、元気が出た」


 蓮は嬉しそうに微笑んだ。


「明日から、また頑張れる」

 

 ※ ※ ※

 

 校舎を出て、二人で帰路につく。夜空には、星が輝き始めている。


 明後日は、いよいよ文化祭前日。


 準備も大詰めを迎える。

 

「海斗」

 

「ん?」

 

「文化祭、絶対成功させようね」

 

「ああ」

 

 俺は蓮の手を握り締めた。蓮の手は、もう冷たくない。温かい。俺の温もりが、ちゃんと伝わっている。

 

「二人で作り上げた文化祭だ。絶対成功する」

 

「……うん」

 

 蓮は幸せそうに微笑んだ。

 夜空には、満月が輝いていた。その光が、二人を優しく照らしている。これから始まる文化祭への期待が、俺の胸を満たしていく。

 蓮と一緒なら、どんなことも乗り越えられる。その確信が、俺の中にあった。駅までの道を、手を繋いで歩く。蓮の手は温かい。この温もりを、ずっと感じていたい。


「ねえ、海斗」


「ん?」


「今日も、私の家に来る?」


 蓮は少し照れた表情で尋ねた。


「夕飯、作るから」


「いいのか?」


「うん。海斗と一緒にいたい」


「……じゃあ、お言葉に甘えて」


「やった!」


 蓮は嬉しそうに俺の腕に抱きついた。


 明後日から始まる文化祭。店主さんの期待に応えるためにも、絶対に成功させる。そして、たくさんの写真を持っていく。

 蓮と一緒に作り上げた文化祭。それは、俺たちの大切な思い出になる。

 そう信じて、俺たちは前を向いて歩いていった。

 蓮と一緒なら、どんな困難も乗り越えられる。

 そして、最高の文化祭を作り上げることができる。

 俺は、そう確信していた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

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