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親友に彼女をNTRられた俺は、俺にだけ優しいクール系ギャルヒロインとお試しで付き合うことになりました。  作者: 沢田美


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クラス企画の危機

 文化祭まで残り十日。

 俺と蓮は各クラスの準備状況を確認して回っていた。


「三年A組は、演劇の準備が順調みたいだね」


 蓮がチェックリストに印をつける。


「二年B組のカフェも、メニューが決まってる」


「順調なクラスが多いな」


「うん。でも――」


 蓮は表情を曇らせた。どこか不安げな顔を浮かべている。蓮のその様子に嫌な予感を感じる。


「一年C組だけ、全く準備が進んでないみたい」


「一年C組?」


「うん。何度も確認のメールを送ってるんだけど、返事がない」


 蓮は心配そうに俺を見た。

 その表情に、俺の胸も不安で締め付けられる。


「ちょっと見に行ってみようか」


「ああ」


 一年C組の教室に向かうと、中から怒鳴り声が聞こえてきた。それは怒声らはどうも対立しているようだ。


「だから! お化け屋敷なんて古臭いって言ってるでしょ!」


「でも、みんなで決めたことだろ!」


「勝手に決めただけじゃん! 私、聞いてない!」


 蓮は扉をノックした。


「失礼します」


 教室に入ると、クラスが二つのグループに分かれて睨み合っていた。

 一方は、お化け屋敷を推進する男子グループ。もう一方は、カフェをやりたいという女子グループ。空気が重い。このままでは、文化祭どころではない。


「生徒会副会長の鈴波です」


 蓮が間に入った。彼女の放つ氷のような冷たい視線と雰囲気に言い争っていた雰囲気が一瞬だけ凍った。


「一年C組、企画が決まってないと聞いたんですが」


「決まってますよ! お化け屋敷です!」


 男子の一人が言った。それを聞いていた女子達が不満そうな顔をする。


「でも、私たちは納得してません!」


 女子の一人が反論した。


「カフェの方が、絶対盛り上がります!」


「お化け屋敷の方が面白いだろ!」


 また言い合いが始まりそうになったところで、蓮が手を上げた。


「静かに」


 蓮の鋭い声に、クラス全員が黙り込んだ。

 さすが蓮だ。一言で場を制する。その姿に、俺は改めて彼女の強さを感じた。


「まず、いつからこの状態なんですか?」


「……一週間前からです」


 女子の一人が答えた。


「最初は多数決でお化け屋敷に決まったんですけど、私たち女子の意見が全然反映されてなくて」


「でも、多数決で決まったんだから、従うべきだろ」


 男子が反論した。


「それは民主主義だ」


「民主主義は、多数派の意見だけを通すことじゃない」


 俺が口を開いた。

 蓮を支えたい。その想いが、俺に言葉を与える。俺はそのまま言葉を並べた。


「少数派の意見も尊重して、みんなが納得できる結論を出すのが民主主義だ」


「でも……」


「じゃあ、こうしよう」


 蓮が提案した。それは冷静でありながら、確かな自信が入り交じった目だった。


「お化け屋敷とカフェ、両方やれば?」


「え?」


 クラス全員が驚いた表情を浮かべた。


「でも、教室一つしか使えないのに、どうやって……」


「教室を半分に分ける」


 蓮は教室を見回した。


「前半分をカフェスペース、後ろ半分をお化け屋敷。入口は別々にして、来場者が選べるようにする」


「なるほど……」


 女子たちが目を輝かせた。


「それなら、両方できる」


「でも、準備が大変じゃないですか?」


 男子の一人が心配そうに言った。


「残り十日で、両方の準備をするなんて……」


「大丈夫」


 俺が言った。


「お互いに協力すれば、間に合う」


「協力?」


「ああ。例えば、カフェの内装をお化け屋敷チームが手伝う。お化け屋敷の小道具をカフェチームが作る。そうやって、お互いに助け合えば、効率的に準備できる」


「……確かに」


 男子たちが頷いた。


「それなら、できるかも」


「じゃあ、決まりね」


 蓮がクラス全員を見渡した。そして、その場にいた者達を鼓舞するように声を上げる。


「明日から、全員で協力して準備を進める。いい?」


「はい!」


 クラス全員が元気よく返事をした。

 教室を出ると、蓮が安堵のため息をついた。その様子は疲れているようで俺は思わず蓮を心配する。


「何とかなったね」


「ああ。でも、まだ他にも問題があるかもしれない」


「そうだね。他のクラスも回ってみよう」


 その後、二年D組で別の問題が発覚した。


「予算が足りないんです……」


 クラス委員長の女子が困った表情で言った。


「材料費が予想以上にかかって、生徒会から割り当てられた予算じゃ全然足りなくて」


「どれくらい足りないの?」


 蓮が尋ねた。


「三万円くらい……」


「三万円か……」


 蓮は考え込んだ。


「でも、もう予備費もほとんど残ってない」


「じゃあ、材料を工夫して節約するしかないな」


 俺が提案した。


「例えば、何を作る予定なの?」


「縁日です。射的、輪投げ、金魚すくいとか」


「なるほど。じゃあ、的や輪は段ボールで自作すれば、コストを抑えられる」


「でも、段ボールなんて大量にどこで……」


「スーパーや商店街の店に頼めば、無料でもらえる」


 俺は続けた。


「金魚すくいの金魚も、本物じゃなくてプラスチック製にすれば、費用を抑えられる」


「……そっか!」


 女子は目を輝かせた。


「工夫すれば、予算内でできるんですね!」


「うん。諦めずに、できる方法を考えよう」


 蓮が励ました。


「困ったことがあったら、いつでも生徒会に相談して」


「ありがとうございます!」


 ※ ※ ※


 二年D組を後にして、廊下を歩く。


「海斗、さっきの提案すごくよかったよ」


「そうか?」


「うん。私、予算が足りないって聞いて、どうしようって焦ってたけど、海斗は冷静に解決策を考えてた」


 蓮は俺の腕に抱きついた。

 その温もりが、俺の疲れを癒してくれる。それは今日の1日の疲れを吹き飛ばすような癒しだった。


「海斗がいてくれて、本当に助かる」


「蓮だって、一年C組の問題を解決したじゃないか」


「二人でやったからだよ」


 蓮は嬉しそうに微笑んだ。


「海斗と一緒だから、うまくいく」


 その時、廊下の向こうから生徒会の書記、美咲が走ってきた。


「蓮! 大変!」


「どうしたの?」


「三年B組が、企画を変更したいって言ってるの!」


「え? でも、もう準備始まってるはずだよね?」


「それが、クラスで意見が割れて、今揉めてるみたい」


「……分かった。すぐ行く」


 蓮は俺を見た。

 その瞳には、疲れと不安が混じっている。でも、諦めの色はない。


「海斗、一緒に来て」


「ああ」


 ※ ※ ※


 三年B組の教室に向かうと、またしてもクラスが二分していた。


「展示企画を続けるべきだ!」


「いや、今から変更してもカフェの方がいい!」


 蓮が間に入ろうとした時、一人の男子生徒が蓮を睨んだ。それはまるで俺たち生徒会を敵視するような鋭い視線。


「生徒会が口出しするな! これはクラスの問題だ!」


「でも、企画変更は生徒会の承認が必要です」


 蓮は冷静に答えた。


「それに、今から変更したら、準備が間に合わない可能性が高い」


「それでもいい! このまま展示企画を続けても、絶対失敗する!」


「なぜそう思うんですか?」


 俺が尋ねた。


「……クラスの半分が、もうやる気をなくしてるからだ」


 男子は悔しそうに言った。


「展示企画を推してたやつらが、準備をサボりまくってる。このままじゃ、まともな展示なんてできない」


「なるほど……」


 蓮は考え込んだ。


「じゃあ、クラス全員で話し合ってみませんか? 今から」


「話し合っても無駄だよ。もう平行線なんだ」


「それでも、やってみる価値はあります」


 蓮は真剣な表情で続けた。

 その眼差しには、決して諦めない強い意志が宿っている。蓮の真剣さが、男子の心を動かす。


「このまま文化祭を迎えて、クラス全員が後悔するより、今ちゃんと向き合った方がいい」


 男子は黙り込んだ。


「……分かった。やってみる」


 クラス全員を集めて、話し合いが始まった。

 最初は険悪な雰囲気だったが、蓮と俺が間に入って、一人一人の意見を丁寧に聞いていった。

 そして、三時間後。

 長い話し合いだった。何度も行き詰まりそうになったが、その度に蓮が糸口を見つけてくれた。


「じゃあ、展示企画は続けるけど、内容を大幅に変更する。クラス全員が関われる形にする」


 クラス委員長が結論を述べた。


「それでいい?」


「ああ」


「うん、それならいい」


 クラス全員が頷いた。


「生徒会の二人、ありがとう」


 クラス委員長が頭を下げた。


「君たちのおかげで、クラスがまとまった」


「いえ、みんなが真剣に向き合ったからです」


 蓮は微笑んだ。


「頑張ってください」


 三年B組を後にして、校舎の外に出た。

 もう日が暮れていた。


「疲れたね」


 蓮が呟いた。


 その声には、今日一日の疲労が滲んでいる。でも、達成感もあった。


「ああ。でも、充実してた」


「うん」


 蓮は俺の手を握った。


「海斗、ありがとう。今日も一緒にいてくれて」


「当たり前だろ」


 俺は蓮の手を握り返した。

 蓮の手は、いつもより少し冷たい。疲れているんだ。でも、その手は確かに俺の手を握り返してくれる。


「俺たち、チームなんだから」


「……うん」


 蓮は嬉しそうに微笑んだ。


「これから、まだまだ大変だと思うけど、一緒に頑張ろうね」


「ああ」


 校門を出て、二人で駅に向かう。

 夜空には星が輝いていた。


「ねえ、海斗」


「ん?」


「文化祭が終わったら、二人でどこか行こうよ」


「いいな。どこ行きたい?」


「まだ決めてないけど……海斗と一緒なら、どこでも楽しい」


 蓮は俺を見上げた。


「だから、文化祭が終わるまで、一緒に頑張ろうね」


「ああ、絶対成功させよう」


 俺は蓮の肩を抱き寄せた。

 蓮の温もりが、俺を満たしていく。この人と一緒なら、どんなに大変なことも乗り越えられる。

 文化祭まで、残り九日。まだまだ問題は山積みだが、俺たちは諦めない。

 蓮と一緒なら、どんな困難も乗り越えられる。そんな確信が俺にはあった。

 そう信じて、俺たちは前に進み続けた。

 星空の下、蓮の手を握る力に、自然と力が込もる。この手を、絶対に離さない。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

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