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親友に彼女をNTRられた俺は、俺にだけ優しいクール系ギャルヒロインとお試しで付き合うことになりました。  作者: 沢田美


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閑話 文化祭準備の合間に

 夕日の光が指す放課後。

 文化祭への準備が着々と進む中で、俺は蓮の隣を歩いていた。文化祭の準備で疲れているのがわかるように少しだけやつれたような顔をしている。


「蓮、少しだけ俺に時間くれるか?」


「え? 別にいいけど」


 俺は彼女の手を引き、そのまま学校の外へと出た。俺の行動に困惑している蓮。でも俺の中には彼女を少しでも元気づけたい、休ませてあげたいと思っていた。

 だからこそ――。

 そんなことを思いながら俺は蓮と共に、行ったことのあるカフェへと来た。


「ここって……」


 蓮は少し驚いた表情を浮かべた。


 ここは、以前二人で来たことのあるカフェだった。落ち着いた雰囲気で、静かな音楽が流れている。窓際の席に座ると、夕日が店内を優しく照らしていた。


「注文、いいか?」


「うん……」


 蓮は少し戸惑いながらも頷いた。

 俺は蓮の好きなカフェラテと、ケーキを注文した。自分はアイスコーヒーだけ。今は蓮を休ませることが最優先だ。

 注文した品が運ばれてくると、蓮は小さく「ありがとう」と呟いた。その声には、疲労の色が滲んでいた。


「蓮、最近無理してないか?」


 俺が聞くと、蓮は少し驚いた表情を浮かべた。


「……分かる?」


「分かるよ。俺の彼女だからな」


 蓮は苦笑した。


「バレてたか」


 蓮はカフェラテを一口飲んだ。その仕草さえ、どこか力なく見えた。


「生徒会の仕事と、文化祭の準備と……正直、結構大変で」


 蓮は正直に打ち明けた。


「でも、文化祭は絶対成功させたいから」


「蓮……」


「だって、みんなが楽しみにしてるもん。生徒会副会長として、ちゃんとやり遂げたい」


 蓮の目には、強い意志が宿っていた。しかし同時に、疲労の色も濃く滲んでいた。真面目な蓮だからこそ、全てを完璧にこなそうとして、自分を追い込んでしまう。それが俺には分かっていた。


「蓮の気持ちは分かる。でも、無理しすぎるなよ」


 俺は蓮の手を握った。


「蓮が倒れたら、元も子もない」


「……そうだね」


 蓮は小さく頷いた。


「でも、どうしても完璧にやりたくて。みんなの期待に応えたくて」


「蓮は十分頑張ってるよ」


 俺は真剣に言った。


「誰よりも早く学校に来て、誰よりも遅くまで残って。そんな蓮を、みんな見てる」


「……海斗」


「だから、たまには休んでいい。俺が蓮の分も頑張るから」


 蓮は目を潤ませた。


「ありがとう……」


 蓮はケーキを一口食べた。甘いものを食べると、少し表情が和らいだ。


「美味しい……」


「よかった」


 俺は安堵した。


 しばらく二人で静かに過ごした。蓮はゆっくりとケーキを食べ、カフェラテを飲んでいた。急かすことはしない。今は、蓮がリラックスできることが一番大切だ。


「ねえ、海斗」


「ん?」


「文化祭、楽しみ?」


 蓮が聞いてきた。


「ああ、すごく」


「私も」


 蓮は微笑んだ。


「海斗と一緒に作り上げる文化祭。絶対、最高のものにしたい」


「ああ、絶対に」


「だから……もう少し頑張る」


 蓮は俯いた。


「でも、海斗が支えてくれるから、頑張れる」


「当たり前だろ」


 俺は蓮の頭を撫でた。


「蓮が頑張ってる姿、俺はずっと見てる。だから、疲れた時は俺に頼っていい」


「……うん」


 蓮は嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとう、海斗」


 ケーキを食べ終え、蓮は少し元気を取り戻したようだった。顔色も、先ほどより良くなっている。


「少しは元気出た?」


「うん。すごく」


 蓮は俺を見つめた。


「海斗と一緒にいると、元気が出る」


「それはよかった」


「でも、海斗も無理しないでね」


 蓮は心配そうに言った。


「海斗だって、文化祭の準備で忙しいでしょ?」


「俺は大丈夫だよ」


「本当?」


「ああ。蓮のためなら、いくらでも頑張れる」


「……ずるい」


 蓮は照れた表情を浮かべた。


「そういうこと言うの、反則」


「本当のことだよ」


 カフェを出ると、すっかり日が暮れていた。街灯が灯り、夜の帳が降りていく。


「送ってくよ」


「ありがとう」


 二人で駅に向かって歩いた。蓮の足取りは、先ほどよりもしっかりしていた。少しでも元気になってくれて、俺は嬉しかった。


「ねえ、海斗」


「ん?」


「今日、ありがとう」


 蓮は俺の腕に抱きついた。


「疲れてるの、気づいてくれて。こうやって休ませてくれて」


「当たり前だろ。蓮は俺の大切な彼女だから」


「……うん」


 蓮は幸せそうに微笑んだ。


「文化祭まで、あと少し。一緒に頑張ろうね」


「ああ」


 俺は蓮の手を握った。


「二人で、最高の文化祭にしよう」


「うん!」


 駅の改札前で、蓮が立ち止まった。


「じゃあ、また明日」


「ああ。今日はゆっくり休めよ」


「うん」


 別れ際、蓮が俺の頬にキスをした。


「おやすみ、海斗。今日は、本当にありがとう」


「こっちこそ。おやすみ、蓮」


 蓮が改札を通っていくのを見送りながら、俺は思った。


 文化祭の準備は大変だ。蓮も俺も、毎日疲れている。でも、二人で支え合えば、乗り越えられる。そして、最高の文化祭を作り上げることができる。あと少し。蓮と一緒に、頑張ろう。


 ※ ※ ※

 

 家に帰り、ベッドに横になる。

 スマホを見ると、蓮からメッセージが届いていた。


『今日は本当にありがとう。海斗のおかげで、すごく元気が出た。明日からまた頑張れる。海斗も無理しないでね。おやすみ』


 俺は返信を打った。


『蓮が元気になってくれて、よかった。明日からまた一緒に頑張ろう。おやすみ』


 送信すると、すぐに既読がついた。

 そして、ハートマークのスタンプが送られてきた。


「蓮……」


 文化祭まで、あと少し。

 蓮と一緒に、最高の思い出を作ろう。

 そう決意して、俺は目を閉じた。

 明日も、蓮と一緒に頑張ろう。

 二人で作り上げる、最高の文化祭のために。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

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