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親友に彼女をNTRられた俺は、俺にだけ優しいクール系ギャルヒロインとお試しで付き合うことになりました。  作者: 沢田美


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13/21

日常の幸せ 

 お試し期間が終わり、一週間が経った。

 俺と蓮の関係は、学校中に知れ渡っていた。もう誰も驚かない。むしろ、当たり前のように受け入れられていた。


「おはよう、海斗」


 いつものように昇降口で待っていると、蓮が笑顔で現れた。


「おはよう」


 蓮は自然に俺の手を握り、二人で校舎に入る。

 廊下を歩いていると、すれ違う生徒たちが微笑ましそうに見ていた。


「鈴波副会長と春川くん、本当にお似合いだよね」


「うん。見てるだけで癒される」


 そんな声が聞こえてくる。


 周囲の温かい視線が、俺たちの関係を祝福してくれているようだった。


「ねえ、海斗」


「ん?」


「今日の放課後、また買い物行こうよ」


「いいけど、何買うんだ?」


「来週のお弁当の材料」


 蓮は嬉しそうに笑った。


「海斗の好きなもの、もっと作りたいから」


「ありがとう」


 俺は蓮の頭を撫でた。


「でも、無理しなくていいからな」


「無理じゃないよ。海斗のために料理するの、楽しいもん」


 蓮は俺の腕に抱きついた。


「むしろ、もっと作りたい」


「蓮……」


 その言葉が、胸を温かくする。こんなにも俺のことを想ってくれる人がいる。それだけで、幸せだった。


 教室の前で立ち止まり、蓮が俺を見上げた。


「じゃあ、昼休みに」


「ああ」


 蓮は軽く背伸びをして、俺の頬にキスをした。


「頑張ってね」


「蓮も」


 ※ ※ ※


 教室に入ると、クラスメイトたちが声をかけてきた。


「春川、今日も相変わらずラブラブだな」


「いいなぁ、羨ましい」


 俺は照れながら席に着いた。

 隣の男子が笑いながら話しかけてくる。


「春川、最近すごく幸せそうだよな」


「そうか?」


「ああ。表情が全然違う」


 男子は真剣な顔になった。


「雪原と付き合ってた時は、なんかいつも疲れてるように見えたけど、今は違う」


「……そうかもしれない」


 俺は正直に答えた。


 確かに、あの頃は常に緊張していた。でも今は違う。蓮といると、心から安らげる。


「蓮と一緒だと、本当に楽なんだ」


「いいなぁ。俺も早く彼女欲しいわ」


 授業が始まり、いつも通りの学校生活が流れていく。でも、心は軽かった。昼休みに蓮と会える。それだけで、頑張れた。


 時計の針が進むのがもどかしく感じられるほど、俺は蓮に会いたかった。


 ※ ※ ※


 昼休み、屋上に向かうと、蓮がすでに待っていた。


「遅い」


「ごめん、先生に質問されて」


「まあいいけど」


 蓮は弁当箱を取り出した。


「はい、今日の分」


「ありがとう」


 俺は弁当箱を受け取り、蓋を開けた。


 今日は、ハンバーグ、卵焼き、ほうれん草のお浸し、そしてウインナーが入っていた。


「海斗、ウインナー好きだって言ってたから、入れてみた」


「覚えててくれたのか」


 そんな些細なことまで覚えていてくれる。その事実が、どうしようもなく嬉しかった。


「当たり前でしょ。彼氏の好きなもの、全部覚えてる」


 蓮は得意げに胸を張った。


「いただきます」


 二人で並んで弁当を食べる。


 蓮の料理は、毎日美味しくて、飽きることがなかった。


 一口一口に、蓮の想いが込められているのが分かる。それが何よりも幸せだった。


「ねえ、海斗」


「ん?」


「この前、雪原夢がクラスで孤立してるって聞いたんだけど」


「そうなのか?」


「うん。デマがバレてから、誰も相手にしなくなったらしい」


 蓮は複雑な表情を浮かべた。


「正直、ざまあみろって思う反面、ちょっと可哀想かなって」


「蓮は優しいな」


「そうかな」


「ああ。俺は、もう何とも思わない」


 俺は正直に言った。


「夢がどうなろうと、俺には関係ない。もう、あいつのことは過去だから」


 本当に、心からそう思えるようになった。蓮がいるからこそ、過去を手放せる。


「……そっか」


 蓮は安心したように微笑んだ。


「海斗が前を向いてくれてるなら、それでいい」


「ああ」


 弁当を食べ終えると、蓮が俺の肩に頭を預けてきた。


「ねえ、海斗」


「ん?」


「今度の休日、デートしようよ」


「いいけど、どこ行きたい?」


「映画とか、どう?」


 蓮は顔を上げて、俺を見た。


「最近、面白そうなのやってるらしいの」


「いいな。じゃあ、映画館行こう」


「やった!」


 蓮は嬉しそうに笑った。


 その笑顔を見ていると、俺まで笑顔になる。蓮の幸せが、俺の幸せになっていた。


「じゃあ、土曜日ね」


「ああ」


 ※ ※ ※


 午後の授業を終え、生徒会室で蓮を待った。


「お待たせ」


 蓮が現れ、俺の手を取った。


「買い物行こう」


「ああ」


 二人で校門を出ると、駅前のスーパーに向かった。


「何買う?」


「来週のお弁当用の食材」


 蓮は買い物かごを手に取った。


「海斗、一緒に選んで」


「ああ」


 食材コーナーを回りながら、蓮が楽しそうに話しかけてくる。


「ねえ、海斗。来週は何が食べたい?」


「蓮の作る料理なら、何でも嬉しい」


「それじゃ答えになってないよ」


 蓮は少しむくれた。


「ちゃんと言って」


「じゃあ……肉じゃがとか」


「了解」


 蓮はじゃがいもと肉をかごに入れた。


「他には?」


「唐揚げも好きだな」


「じゃあ、それも作る」


 蓮は鶏肉も追加した。


 こうして二人で買い物をしていると、まるで夫婦のようだ。そんなことを考えて、顔が熱くなった。


 買い物を終え、スーパーを出た。


「重いだろ。俺が持つよ」


「ありがとう」


 蓮は買い物袋を俺に渡した。


「海斗、いつも優しいね」


「当たり前だろ」


「……嬉しい」


 蓮は俺の腕に抱きついた。


「海斗と付き合えて、本当によかった」


「俺も」


 駅までの道を、手を繋いで歩く。


 夕日が二人を照らし、長い影が地面に伸びる。こんな穏やかな時間が、ずっと続けばいい。


「ねえ、海斗」


「ん?」


「今日も、私の家に来る?」


「いいのか?」


「当たり前でしょ。もう、海斗は私の家に来るのが日課みたいになってるし」


 蓮は笑った。


「それに、買った食材で夕飯作るから」


「じゃあ、お願いしようかな」


「やった!」


 ※ ※ ※

 

 蓮の家に着き、二人で料理を始めた。


「海斗、野菜切って」


「ああ」


 俺は言われた通りに野菜を切る。


 蓮は肉を炒め、調味料で味付けをしていく。


 二人で協力して作る料理は、何よりも美味しかった。


 包丁を動かすリズム、フライパンの音、蓮の声。それら全てが、俺にとっての幸せな時間だった。


「できた!」


 蓮が皿を持ってきた。


 生姜焼き、サラダ、味噌汁。


「いただきます」


 二人で食卓を囲む。


「美味い」


「よかった」


 蓮は嬉しそうに微笑んだ。


 食事を終え、二人でソファに座った。


「ねえ、海斗」


「ん?」


「私たち、付き合って二週間くらいだけど……もうずっと前から一緒だった気がする」


「俺も」


 俺は蓮の肩を抱き寄せた。


 不思議なものだ。まだ二週間しか経っていないのに、蓮のいない生活なんて考えられない。


「蓮と一緒だと、時間があっという間に過ぎる」


「……海斗」


 蓮は俺の胸に顔を埋めた。


「私、海斗のこと、もっともっと好きになってる」


「俺も」


「本当?」


「ああ。蓮のこと、毎日好きになってる」


 蓮は顔を上げて、俺を見つめた。


「……キスして」


「ん」


 俺は蓮の頬に手を添え、ゆっくりと顔を近づけた。


 唇が触れ合う。

 柔らかくて、温かい。何度キスをしても、慣れることはなかった。


 むしろ、触れるたびに胸が高鳴る。蓮への想いが、ますます深くなっていくのを感じた。


 離れると、蓮は恥ずかしそうに笑った。


「海斗とのキス、大好き」


「俺も」


「じゃあ、もう一回」


「まだするのか?」


「だめ?」


「だめじゃない」


 俺はもう一度、蓮とキスをした。

 夜が更けるまで、二人は一緒にいた。


「そろそろ帰らないと」


「……残念」


 蓮は名残惜しそうに俺を見た。


「もっと一緒にいたい」


「俺も。でも、遅くなると心配されるから」


「分かってる」


 蓮は玄関まで俺を見送った。


「じゃあ、また明日」


「ああ」


 別れ際、蓮が俺の頬にキスをした。


「おやすみ、海斗」


「おやすみ、蓮」


 ※ ※ ※


 家に帰り、ベッドに横になる。スマホを見ると、蓮からメッセージが届いていた。


『今日も楽しかった。海斗、ありがとう。明日も待ってるね』


 俺は返信を打った。


『こっちこそ。蓮といると、毎日が楽しい。明日も、よろしく』


 送信すると、すぐに既読がついた。

 そして、ハートマークのスタンプが送られてきた。


「蓮……」


 俺は思わず、スマホを抱きしめた。

 夢と付き合っていた時は、こんなに幸せじゃなかった。


 いつも気を遣って、疲れていた。

 でも、蓮と一緒だと違う。

 自然体でいられて、心から楽しい。


 これが本物の恋なんだと、今なら分かる。

 

「これが、本当の恋愛なんだな」


 呟いて、俺は目を閉じた。

 明日も、蓮と一緒。

 それだけで、幸せだった。


 ※ ※ ※


 週末、俺は蓮と映画デートに出かけた。


「海斗、こっち!」


 映画館の前で、蓮が手を振っていた。

 今日の蓮は、いつもと違って私服だった。白いブラウスにデニムのスカート、そして軽くメイクをしている。


 その姿に、思わず息を呑んだ。


「蓮、可愛い」


「え……」


 蓮は顔を赤らめた。


「い、いきなり何言ってるの」


「本当のことだよ」


「……ずるい」


 蓮は俯いて、小さく呟いた。


「海斗、そういうこと言うの反則」


「でも、本当に可愛いから」


「もう!」


 蓮は照れた表情で俺の腕を叩いた。


「とにかく、映画見よう」


「ああ」


 二人でチケットを買い、シアターに入った。

 映画が始まると、蓮が俺の手を握ってきた。


「海斗」


「ん?」


「手、繋いでてもいい?」


「もちろん」


 俺は蓮の手を握り返した。


 暗闇の中、蓮の温もりだけが確かに感じられる。それだけで、胸が満たされた。


 映画の内容は、恋愛もので、主人公とヒロインが様々な困難を乗り越えて結ばれるというストーリーだった。映画が終わり、シアターを出ると、蓮が目を潤ませていた。


「蓮、泣いてるのか?」


「ち、ちょっとだけ」


 蓮は目元を拭いた。


「すごくいい話だったから」


「そうだな」


 俺も感動していた。


「ねえ、海斗」


「ん?」


「私たちも、あの二人みたいに、ずっと一緒にいられるかな」


「当たり前だろ」


 俺は蓮の肩を抱き寄せた。


「俺たちは、何があってもずっと一緒だ」


「……ありがとう」


 蓮は嬉しそうに微笑んだ。

 映画館を出て、駅前のカフェで休憩した。


「今日は楽しかった」


「俺も」


 俺はアイスコーヒーを飲みながら答えた。


「蓮と一緒だと、何をしても楽しい」


「私も」


 蓮はカフェラテを飲んだ。


「海斗と付き合えて、本当によかった」


「俺も。蓮に出会えて、人生が変わった」


「大げさ」


「本当だよ」


 俺は真剣に言った。


 大げさなんかじゃない。蓮に出会ってから、世界の色が変わった。それくらい、蓮は俺にとって特別な存在になっていた。


「夢に振られた時は、絶望してた。でも、蓮が現れて、全部が変わった」


「……海斗」


「だから、ありがとう。蓮」


 俺の言葉に、蓮は涙ぐんだ。


「海斗、ずるい。そんなこと言われたら、泣いちゃう」


「ごめん」


「謝らなくていい」


 蓮は目元を拭いた。


「嬉しいから。海斗がそう思ってくれてるなら、私も幸せ」


 その時、蓮のスマホが鳴った。


「あ、会長から……」


 蓮は画面を見て、少し表情を変えた。


「どうした?」


「来週から文化祭の準備が本格的に始まるって。生徒会で打ち合わせがあるらしい」


「そういえば文化祭か……」


「うん。毎年この時期は、生徒会が一番忙しくなるよね」


 蓮は少し申し訳なさそうに俺を見た。


「ごめんね。しばらく、デートする時間が減るかも」


「気にするなよ。生徒会の仕事でも一緒になるだろ。俺も生徒会の人間だし」


「ありがとう」


 蓮は嬉しそうに微笑んだ。


「もし、海斗にも手伝ってもらうことになるかも。いい?」


「もちろん」


 俺は即答した。


「蓮が大変な時は、いつでも手伝う」


「……海斗」


 蓮は俺の手を握った。


「一緒に、最高の文化祭にしようね」


「ああ」


 カフェを出て、駅まで歩く。


「じゃあ、また月曜日」


「ああ」


 別れ際、蓮が俺の頬にキスをした。


「今日は、本当にありがとう」


「こっちこそ」


 蓮は照れた表情で改札を通っていった。

 俺は蓮の姿が見えなくなるまで、その場に立っていた。


「蓮……」


 俺は思わず、頬に手を当てた。

 夢との関係は、終わった。

 でも、それは不幸じゃなかった。

 むしろ、蓮と出会うための必然だったのかもしれない。

 あの絶望があったからこそ、今の幸せがある。そう思えるようになった自分に、少しだけ驚いていた。


「これから、もっと幸せになろう」


 呟いて、俺は改札を通った。

 蓮との日々は、まだ始まったばかり。

 そして来週からは、文化祭の準備が始まる。

 蓮と一緒に、また新しい思い出を作っていく。

 これから、どんな未来が待っているのか。

 楽しみで仕方なかった。日常の幸せ 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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