ざまぁと決着②
昼休み、屋上で蓮と合流した。
「お疲れ様」
「蓮も」
二人で並んでフェンスにもたれかかると、蓮が弁当箱を取り出した。
「今日も作ってきた」
「ありがとう」
俺は弁当箱を受け取った。
蓋を開けると、照り焼きチキン、卵焼き、ブロッコリー、ミニトマトが綺麗に詰められていた。
「昨日言ってた照り焼きチキン、入れてみた」
「嬉しい」
俺は箸を取り、照り焼きチキンを口に運んだ。
「……最高に美味い」
「よかった」
蓮も自分の弁当を食べ始めた。二人で並んで食べる昼食。穏やかな風が吹き抜けて、俺の心を軽くしてくれる。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「今朝のこと、どう思った?」
「今朝?」
「雪原夢と岡波傑」
蓮は真剣な表情で聞いた。
「まだ、未練とかある?」
「全くない」
俺は即答した。
「もう、あいつらのことなんかどうでもいい」
「……そっか」
蓮は安心したように微笑んだ。
「よかった。海斗がまだ雪原夢に未練あったらどうしようって、ちょっと心配してた」
「そんなわけない」
俺は蓮の手を握った。
「今、俺が好きなのは蓮だけだ」
「……っ」
蓮は顔を赤らめた。
「海斗、ずるい。そんなこと言われたら、ドキドキしちゃう」
「本当のことだよ」
「……ありがとう」
蓮は嬉しそうに笑った。その笑顔が、俺の心を満たしてくれる。この笑顔を守りたい。そう、心から思った。
「私も、海斗のことが大好き」
二人で弁当を食べ終えると、蓮が俺の肩に頭を預けてきた。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「さっき、私のこと守ってくれて……本当に嬉しかった」
「当たり前だろ」
「でも、すごくかっこよかった」
蓮は俯いて、小さく呟いた。
「海斗が、あんなに強く言ってくれて……私、泣きそうになった」
「蓮……」
「これからも、ずっと一緒にいてね」
「ああ、約束する」
俺は蓮を抱き寄せた。
「お試し期間、今日で終わりだけど……もう答えは出てるよね」
「ああ」
「じゃあ、これからは本物の恋人として、もっと色々なことしようね」
「色々なこと?」
「うん。デートとか、旅行とか」
蓮は夢見るように空を見上げた。
「海斗と、もっと色んなところに行きたい」
「俺も」
俺は蓮の髪を撫でた。
柔らかい髪が、指の間をすり抜けていく。この温もりを、ずっと感じていたい。
「蓮と一緒なら、どこでも楽しい」
「……海斗、優しい」
蓮は俺の胸に顔を埋めた。
「私、海斗と出会えて本当によかった」
「俺も」
※ ※ ※
午後の授業を終え、放課後に生徒会室で蓮を待った。
「お待たせ」
蓮が現れ、俺の手を取った。
「今日、お祝いしよう」
「お祝い?」
「うん。お試し期間が終わって、本物の恋人になった記念」
蓮は嬉しそうに笑った。
「ちょっといいレストラン、予約してあるの」
「え、そんな……」
「いいの。今日は私のおごり」
「でも――」
「海斗、いつも私のこと気遣ってくれるでしょ? 今日くらい、私に甘えて」
蓮は真剣な表情で続けた。
「私、海斗のために何かしたい。だから、お願い」
「……分かった」
俺は頷いた。
蓮の真剣な眼差しに、断る理由なんてなかった。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「うん!」
※ ※ ※
二人で学校を出ると、駅前のレストランに向かった。蓮が予約していたのは、落ち着いた雰囲気のイタリアンレストランだった。
「すごいな、こんなところ……」
店内は上品な内装で、柔らかな照明が温かい雰囲気を作り出している。夢とのデートでは、一度もこんな場所には来なかった。
「お父さん経由で予約取ったの。たまには、こういうところもいいでしょ」
「蓮のお父さんどういう人なんだよ……」
「それは……いつか分かるよ」
蓮は嬉しそうに笑った。料理が運ばれてきて、二人で乾杯した。
「海斗、これから、よろしくね」
「こっちこそ」
グラスが軽く触れ合う音が響いた。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「私たち、いいカップルになれると思う?」
「もうなってるよ」
俺は即答した。
「蓮と俺は、最高のカップルだ」
「……っ」
蓮は涙ぐんだ。
「海斗、そういうこと言うの反則」
「本当のことだよ」
「分かってる。でも、嬉しすぎて泣きそう」
蓮は目元を拭いた。
「私、海斗と付き合えて、本当に幸せ」
「俺も」
食事を終え、レストランを出た。
夜空には星が輝いていた。
「綺麗だね」
「ああ」
蓮と手を繋いで、駅に向かう。
夜風が心地よく、二人の温もりがそれを包み込む。こんな穏やかな時間が、ずっと続けばいい。
「ねえ、海斗」
「ん?」
「明日から、また普通の日常が始まるけど……ずっと一緒だからね」
「ああ、ずっと一緒だ」
俺は蓮の手を握り締めた。
「これから、何があっても、蓮の隣にいる」
「……ありがとう」
蓮は幸せそうに微笑んだ。
※ ※ ※
駅の改札前で、蓮が立ち止まった。
「じゃあ、また明日」
「ああ」
別れ際、蓮が俺の頬にキスをした。
「おやすみ、海斗」
「おやすみ、蓮」
蓮が改札を通っていくのを見送りながら、俺は思った。夢に振られた時は、世界が終わったと思った。でも、それは間違いだった。あれは終わりじゃなく、始まりだったんだ。
蓮との、新しい物語の始まり。あの絶望があったからこそ、今の幸せがある。不思議なものだ。
※ ※ ※
家に帰り、ベッドに横になる。
スマホを見ると、蓮からメッセージが届いていた。
『今日は本当に楽しかった。海斗、ありがとう。それと……今朝、私のこと守ってくれて本当に嬉しかった。海斗がいてくれて、本当によかった。これから、ずっと一緒だからね。おやすみ』
俺は返信を打った。
『こっちこそありがとう。蓮を守るのは当たり前のことだ。蓮と一緒なら、これからどんなことも乗り越えられる。おやすみ』
送信すると、すぐに既読がついた。
そして、ハートマークのスタンプが送られてきた。
「蓮……」
俺は思わず、スマホを抱きしめた。
お試し期間は終わった。これからは、本物の恋人として、蓮と歩んでいく。
何があっても、もう大丈夫。蓮が隣にいるから。胸の奥が温かい。こんなに満たされた気持ちになったのは、生まれて初めてかもしれない。
「さて、明日もどうなることやら」
呟いて、俺は目を閉じた。
新しい日々が、もうすぐ始まる。
蓮と一緒の、幸せな日々が。
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