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親友に彼女をNTRられた俺は、俺にだけ優しいクール系ギャルヒロインとお試しで付き合うことになりました。  作者: 沢田美


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傷ついた心

 蓮の泣き声が小さくなった。


 俺の腕の中で蓮は静かに震えている。その震えが徐々に収まっていく。呼吸がだんだんと落ち着いていく。


 雨はまだ降り続けている。その音が二人を包み込んでいる。


「ごめんね……」


 蓮がか細い声で呟いた。


「謝るな」


 俺は蓮の頭を撫でた。髪が柔らかい。


「海斗に、こんな重い話……」


「いいんだ」


 俺は蓮の肩を抱いた。


「俺は蓮の恋人だ。蓮の全てを受け止めたい」


 俺の言葉に蓮の身体がまた小さく震えた。


「ありがとう……」


 蓮の声が温かい。でもその温かさの裏に深い悲しみがある。


「蓮」


「ん?」


「今夜、俺が蓮の部屋に行っていいか?」


 俺の提案に蓮は少し考えた。


「でも……お母さんが……」


「会いたい」


 俺の言葉に蓮が顔を上げた。その目が驚きに満ちている。


「え?」


「蓮のお母さんに会わせてくれ」


 俺の言葉に蓮は首を横に振った。その動作が激しい。


「だめ。お母さんに会ったら……」


 蓮の声が恐怖に満ちている。


「海斗まで傷つけられる」


「大丈夫だ」


 俺は蓮の手を握った。


「俺は蓮を守りたい」


「でも……」


「蓮、一人で戦わなくていい」


 俺の言葉に蓮の目からまた涙が溢れた。


「海斗……」


「俺がそばにいる」


 蓮はしばらく考えていた。その表情が葛藤している。


 やがて蓮は小さく頷いた。


「うん……分かった」


 蓮の声が決意を含んでいる。


「でも、お母さんすごく厳しいから……」


「大丈夫」


 俺は蓮を抱きしめた。


「一緒に乗り越えよう」


「うん……」


 蓮は俺の胸に顔を埋めた。


 ※ ※ ※


【蓮視点】


 放課後、海斗と一緒に家に向かった。


 電車の中で私は海斗の手を握っている。その手が温かい。でも私の手は冷たい。心臓が激しく鳴っている。


 お母さんに海斗を会わせる。その事実が私を恐怖で満たしていく。


 お母さんは海斗のことを何と言うだろう。きっと罵るだろう。『こんな男と付き合って』『お前は本当に愚かだ』。そんな言葉が容易に想像できる。


 駅に着きマンションに向かう。その足取りが重い。一歩一歩がまるで鉛のように重い。


 マンションのエレベーターに乗る。階数ボタンを押す。エレベーターが上がっていく。その音が心臓の鼓動と重なる。


 自分の部屋の階に着いた。エレベーターのドアが開く。


 廊下を歩く。自分の部屋のドアが見えてくる。その瞬間、足が止まる。


「大丈夫か?」


 海斗が優しく聞いてくれた。


「うん……」


 嘘だ。全然大丈夫じゃない。でももう引き返せない。


 私は鍵を取り出した。手が震えている。鍵穴にうまく入らない。


 海斗が私の手を包んでくれた。その温もりが少しだけ震えを落ち着かせてくれる。


 鍵がカチャリと音を立てる。ドアを開ける。


 玄関に入るとお母さんの靴がある。黒い革靴。高級そうな靴。その靴が、お母さんの存在を示している。


「ただいま……」


 私の声が震えている。


「おかえり」


 リビングからお母さんの声が聞こえてくる。冷たい声。感情のない声。


 私は海斗の手を握ったままリビングに向かった。


 リビングにはお母さんがソファに座っていた。スーツ姿で資料を読んでいる。仕事の資料だろう。


 お母さんが顔を上げた。


 その瞬間、お母さんの目が海斗を捉えた。


 空気が凍りつく。


「……誰?」


 お母さんの声が鋭い。


「海斗……春川海斗くん。私の……」


 私の声が震える。


「彼氏です」


 その言葉を言った瞬間、お母さんの表情が変わった。眉をひそめる。明らかに不快そうだ。


「彼氏?」


 お母さんが立ち上がった。海斗に近づいてくる。


 お母さんの目が海斗を上から下まで見る。値踏みするような目だ。


「初めまして。春川海斗です」


 海斗が丁寧に頭を下げた。


 でもお母さんは答えない。ただ海斗を見つめている。


「あなた、どこの大学に行くつもり?」


 お母さんの質問がいきなり来た。


「え?」


「大学よ。どこを目指してるの?」


 お母さんの声が冷たい。


「まだ、具体的には……」


「まだ決めてないの? この時期に?」


 お母さんの声がさらに冷たくなる。


「お母さん……」


 私が口を挟もうとする。


「黙りなさい、蓮」


 お母さんの声が鋭い。私の言葉を一刀両断する。


「あなた、成績は?」


「中の上くらいです」


 海斗が正直に答える。


「中の上?」


 お母さんが鼻で笑った。その笑いが海斗を馬鹿にしている。


「蓮、あなたこんな男と付き合ってるの?」


 お母さんの言葉が私の心を刺す。


「お母さん!」


「何? 事実でしょう」


 お母さんが私を見た。その目が冷たい。


「あなた私の娘なのよ。もっとふさわしい相手を選びなさい」


「でも……」


「この男、あなたの将来に何のプラスにもならないわ」


 お母さんの言葉が容赦ない。


「成績も平凡。大学の目標もない。こんな男と付き合って、あなたは何を得られるの?」


 私の目から涙が溢れる。


「海斗は……」


「優しい? 愛してる?」


 お母さんが冷たく笑う。


「そんなもの何の役にも立たないわ。愛なんて幻想よ」


 お母さんの言葉が私の心を切り裂く。


「お母さん……ひどい」


「ひどい? 現実を教えてあげてるのよ」


 お母さんが海斗を見る。


「あなた、蓮から離れなさい」


 お母さんの言葉に私の心臓が止まりそうになる。


「お母さん、やめて!」


 私は海斗の前に立った。


「海斗は私の大切な人なの!」


「大切な人?」


 お母さんが私を見下ろす。


「あなたまだ子供なのよ。何が大切か分かってない」


「分かってる!」


 私の声が震える。


「海斗は私を支えてくれる。私を認めてくれる」


「認める?」


 お母さんが笑った。冷たい笑い。


「その程度のことで認められたと思ってるの?」


 お母さんの言葉が私を打ちのめす。


「お母さん……」


「蓮、あなた本当に甘いわね」


 お母さんがため息をつく。


「この世界は厳しいのよ。優しさや愛なんて何の意味もない」


 お母さんが資料を手に取った。


「私は仕事がある。あなたたち勝手にしなさい」


 お母さんは自分の部屋に向かった。


 ドアがバタンと閉まる。その音がリビングに響く。


 私はその場に崩れ落ちた。


「蓮!」


 海斗が私を抱きしめてくれた。


「ごめんね……ごめんね……」


 私は海斗の胸で泣いた。


「海斗まで傷つけちゃった……」


「いいんだ」


 海斗の声が優しい。


「蓮のお母さんがどんな人か分かった」


 海斗が私の頭を撫でてくれる。


「大丈夫だ。俺は蓮を諦めない」


 海斗の言葉に私の涙が止まらない。


 ※ ※ ※


【海斗視点】


 蓮が俺の胸で泣いている。その泣き声が小さく切ない。


 蓮のお母さん。鈴波美咲。弁護士。


 確かに厳しい人だった。いや、厳しいというより冷たい。感情がない。まるで人間を評価するための機械のような人だ。


 蓮を認めない。蓮の頑張りを認めない。それどころか蓮を否定する。


 俺の胸が怒りで熱くなる。でも今は蓮を慰めることが先だ。


「蓮、大丈夫だ」


 俺は蓮を抱きしめた。


「俺は蓮の味方だ」


「でも……お母さん、海斗のこと……」


「気にするな」


 俺の言葉に蓮が顔を上げた。その目が涙で濡れている。


「でも……」


「蓮、俺は蓮を愛してる」


 俺ははっきりと言った。


「お母さんが何を言おうと、その気持ちは変わらない」


「海斗……」


 蓮の目からまた涙が溢れる。でもその涙はさっきとは違う。少しだけ温かい涙だ。


「ありがとう……」


 蓮は俺の胸に顔を埋めた。


「海斗がいてくれて本当によかった」


「俺も蓮がいてくれてよかった」


 俺は蓮の髪を撫で続けた。


 時間がゆっくりと過ぎていく。蓮の呼吸がだんだんと落ち着いてくる。


「海斗」


「ん?」


「今夜、一緒にいて」


 蓮の声が甘える。


「ああ」


 俺の答えに蓮は小さく微笑んだ。


 二人で蓮の部屋に向かった。


 蓮の部屋。そのドアを開けると、いつもの甘い匂いがする。でも今日は、その匂いが少し違う。悲しみの匂いが混じっているような気がする。


 蓮がベッドに座った。俺もその隣に座る。


「海斗」


「ん?」


「お母さん、ずっとあんな感じなの」


 蓮の声が小さい。


「小さい頃からずっと」


 蓮の目が遠くを見つめる。


「お母さんは私が生まれた時から私に期待してた」


 蓮の声が続く。


「『私みたいに優秀になれ』って」


 蓮の手がシーツを握りしめる。


「でも私はお母さんみたいになれなかった」


 蓮の声が震える。


「勉強もお母さんほどできない。何をやってもお母さんには及ばない」


 蓮の涙がまた溢れる。


「だからお母さんは私を認めてくれない」


 蓮が俺を見た。


「お父さんも同じ」


 蓮の声がさらに小さくなる。


「お父さんは大手会社の社長。すごく忙しい人」


 蓮の目が悲しみに満ちている。


「お父さんも私に期待してた。『私の後を継げるような優秀な娘になれ』って」


 蓮の手が震える。


「でも私はお父さんの期待にも応えられなかった」


 蓮が顔を伏せる。


「だからお父さんは私を見放した。『お前は期待外れだ』って」


 蓮の涙がシーツを濡らす。


「お父さんはもう何年も私と話してない」


 蓮の声が絶望に満ちている。


「私、一人ぼっちだった」


 蓮が俺を見た。


「でも海斗に出会って……」


 蓮の目が少し明るくなる。


「海斗は私を認めてくれた。私の頑張りを見てくれた」


 蓮の手が俺の手を握る。


「だから私、頑張れた」


 蓮の涙が止まらない。


「ありがとう、海斗」


「どういたしまして」


 俺は蓮を抱きしめた。


 蓮の身体が震えている。でもその震えがだんだんと収まっていく。


「海斗、愛してる」


「俺も愛してる。蓮」


 俺は蓮にキスをした。深く優しく。


 蓮が俺のシャツを掴む。その手に力が込められている。


 キスが終わると蓮は俺の胸に顔を埋めた。


「今夜、ずっと一緒にいて」


「ああ」


 二人でベッドに横になった。


 俺は蓮を抱きしめ続けた。その身体が温かい。


 蓮の呼吸がだんだんと規則正しくなっていく。眠ったのだろう。


 俺は蓮の寝顔を見つめた。その顔が少し安らかだ。


 蓮を守る。蓮のお母さんと戦う。蓮をこの苦しみから救い出す。


 その決意を俺は新たにした。


 窓の外では雨が降り続けていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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