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【旧作】じゃじゃ馬セレナの不器用真っ直ぐ錬金術〜未来の誰かのための魔導具作り〜  作者: 八坂 葵
第四章 帰還、そして選択の前夜

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第69話 私の居場所

セレナの貼ったマップに興味を示した女の子。

彼女の"気付き"とはいったい?

 その子の名前はルナ・ニヴェア。

 いつも教室で本を読んでることが多い、物静かな子だ。


「ねえ、何見てるの?」


 私がそう声をかけるとルナはゆっくりこちらを振り向いた。

 そうだ、結構のんびり屋さんでもあったっけ。


「うん、これ面白いなぁって思って」


「面白い?」


「うん。私はパン屋さんになりたいなぁって思ってたから、パンの作り方とか、外国のパンについてとか色々勉強してたんだけど......」


 そう言って石工さんのイラストを指差す。


「パンを焼く釜は石工さんが作るし、パンを包む紙は雑貨屋さんが作るでしょ?だからこの人たちいないとパン屋さんって出来ないんだなぁって思って」


 へぇー。

 言われてみれば確かにそうだ。


 私の魔導具だって一人じゃ完結しない。

 素材を取る人、加工する人、仕上げる人。

 私はただその中の一人というだけだ。


 今まで魔導具だけに集中してたけど、社会の中の『錬金術師』として見ると、まだ、知らないことの方が多そうだ。


「ルナ、すごいすごい!私そんなこと考えたことなかったよ!」


 私はルナの手を取って上下にブンブン振る。

 驚きながらもちょっと照れた顔のルナは可愛らしく思えた。


 すると、私たちの騒ぎを聞きつけた周りのクラスメートたちが近寄ってきて


「おい、どうしたんだ?」

「なんか楽しい話?」


 と興味を示した。

 よし、ついでだからみんなも巻き込んどくか。


「あのね......」


 私は身ぶり手ぶりを交えながら、ルナの考えをみんなに説明する。

 すると集まってきた何人かの目が楽しそうに輝いてくるのが分かる。


「はぁ、確かに関わりあってるな」


「でもさ、それがどうしたんだよ」


「んー、例えばクルトとアリーは農具と鍛冶のおうちじゃない?二人が普段から仲良く話をしてたら、お互いの職業に必要な情報をやり取り出来て便利じゃない?」


 ルナの言葉に私も重ねる。


「それにさお互いの職業のことちょっとでも知ってたら、話のすれ違いも起きにくいよ。私、アミーカのおかげで料理のこと少し覚えられたもん」


 そういうと輪に混ざって聞いていたアミーカが少し照れた顔をしている。


「なるほど、便利そうだな」

「そういや俺、みんなが何になりたいとかも知らないや」


「じゃあ放課後三十分でも残って、毎日そういう話してみたら?別に毎日全員残る必要はないし、やりたい人だけで」


 私の提案に今度こそクラスメートのほとんどが賛成をしてくれた。


 おおっ、授業改革の時も思ったけど、この子たちやる気のベクトルさえきちんと与えてあげたら、すごく力発揮するよね。


「セレナ、またひとつすごいことやったね」


 近づいてそう言ってきたアミーカに、私はゆっくり首を横に振る。


「今回はルナのおかげだよ。私は貼るだけじゃ無理かなとも思ってたし、職業同士の関連性なんて気づいてなかった」


 当のルナはみんなに囲まれ、楽しそうに話している。彼女の楽しそうな顔を見ていると、話しかけて良かったなと、じんわりと胸が温かくなってきた。


「これは私たちも負けてらんないね?」

「うん、もっと頑張ろ!」


 アミーカと笑顔を交わし、私たちはそう誓い合った。


 ◇◆◇


 そしてその日以来、放課後にクラスの子たちが残って話す習慣が根付いていった。


 自分の将来やりたいことや、関わりそうな職業、お互いに知っててほしいことなどを話す。


 最初はクラスの半分くらいの参加率だったが、二週間もすると、結局全員参加するようになっていた。



 そしてそんなある日、またマチルダ先生にお茶に誘われた。

 今日の紅茶はアールグレイみたいだ。

 誰かこだわってる人でもいるんだろうか?


「セレナさん、私の悩みにまた素敵な回答を与えてくれて、本当にありがとう」


 そう言ってマチルダ先生は席を立ち、深々と私に向かって頭を下げる。

 そう言えばこれ、師匠の教えって言ってたっけ。


 とは言え......


「なんかくすぐったいからやめてくださいよ。今回私は資料を貼っただけ。気づいたのはルナだし、それを受け入れたのはクラスのみんなですから」


 そう言うとマチルダ先生も分かっていたのだろう。すぐに頭を上げて優しい笑みを返してくれた。


「いいえ、それでも私は頭を下げるわ。『活用』したのはルナさんやクラスのみんなかもしれないけど、その『場』を作ってくれたのはセレナさん、あなたなのだから」


 そう言うと先生は私の側に寄って、私の左肩に手を添える。


「セレナさんは何か気付きがあった?」


 その質問に私は一瞬考え込む。

 すると胸の中からすごくシンプルな答えが浮かんできた。


「そうですね、初等学校って必要なんだなって思いました」


 その答えに先生は少しショックを受けたようで、


「えっ!? もしかして今まではいらないと思ってたの?」


 と悲しそうな顔で問いかけてきた。


「先生だから正直に言うね。私、計算は出来るし、文字は家でだいぶ前から習ってたし、歴史以外に特に学校に意味って感じてなかったの」


「でもルナが職業の関係性に気付かせてくれて、そう考えると学校って学ぶ場所というよりも、未来の街の仲間を作る場所なんだなって思えたんだ」


 そう、例えこの先職に就いたり、高等学校に進んだりしても、またこの街に戻れば仲間がいる。

 それはたぶん私みたいに将来街を出そうな人間にとっては、どれほど心強いか......


 きちんと関係を結べたなら、どこへ行っても私は胸を張って言えるだろう。


「私はヴェルダ出身の錬金術師、セレナ・シルヴァーノ」


 だと。


 気付くのが遅かった......なんて、もう思わない。

 気付けたことがとても嬉しいんだ。

 だってまだあと一年も残ってるから。


 正体不明の『つむじ風コンビ』ではなく、残りの一年、『セレナ・シルヴァーノ』として、みんなと関わり合っていこう。



 私のそんな決意にマチルダ先生は


「これからの一年、セレナさんの『普通』の学校生活に期待してるわ」


 ととても嬉しそうな微笑みを見せた。




 そんな私の『普通』の一年。

 意外と面白いことが見えてきたんだよね。

ルナはセレナとアミーカほど特殊な経験をしてませんが、他のクラスメートよりは少し大人びた女の子。なので子供っぽい付き合いが苦手で本ばかり読んでいましたが、これを機会にクラスのみんなと交流するようになります。


彼女もまた大きく成長を遂げるのですが、次回そこはちょこっとだけご紹介する予定です。

5秒で考えたキャラが、気がつけばそれなりの役回りに。私の話はこんなことばかりしてるので、なかなか締められないんですよね(笑)

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