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【旧作】じゃじゃ馬セレナの不器用真っ直ぐ錬金術〜未来の誰かのための魔導具作り〜  作者: 八坂 葵
第四章 帰還、そして選択の前夜

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第61話 作れるだけじゃ足りない

王都から戻り、セレナは開発を目指すための下準備に取り組み始めたようです。

「ほらっ、そこ焼き付けが甘い!速さばかりに意識が行き過ぎよ」


 上手く行きそうだと思った瞬間魔力がブレたのが即座にバレる。ダメだ、焼き付け終わった側から魔力が散っていく。


 こんな失敗が積み重なり、幼い頃の失敗の山を思わせる高さとなっている。

 そうか、あれからもう三週間か......


「今までより一段上の修行でお願い」

 二段くらい上げてきたママは絶対に鬼教官だと思う。


「これでどう!?」


 私は再度焼き付けの終わった回路をマリエッタ師匠に見せる。


「うーん......最後の最後で若干焼き付け甘いけど、まあギリギリ及第点かな」


 よしっ!!

 やっと焼き付けで初めて及第点がもらえた!

 ギリギリってのがなんともみじめだけど......


「じゃあ次は付与ね!」


「こらこら、焦らないの。急ぐのと焦るのは似てるようで大違いよ。いったんお茶にしましょ」


 王都から戻ってからこちら、休憩の時は私も紅茶を飲むようになった。

 貴族の席に呼ばれた時はいつでも紅茶だったから、慣れておきたかったのだ。


「しっかしあんた元気よねー。王都から戻ってぶっ続けで三週間、暇があれば魔導具、魔導具って。私の修行時代だってそこまでやらなかったわよ?」


「アミーカに負けずに、ママを超えて、みんなが笑顔になれる魔導具を開発するためだもん!時間なんて全然足りないわよ!!」


 ママはとってもうるさそうに耳に指を入れ、手のひらをパタパタと振る。


「わーったわよ!でもどんなに急いでも開発環境のないうちじゃ開発は出来ないわよ?」


 プシュー

 その一言を聞くと私の頭にのぼっていた血が一気に足元にまで急降下した。


「そうなんだよねぇ。なんで開発環境作らなかったの?」


 ついつい口をとがらせてそう尋ねてしまう。


「あんたいくらかかると思ってるのよ。」


 ママはそう言うと、最低限の開発に必要な器具とその大まかな金額が書かれたリストを私に放り投げる。


 このやり取りももう三回目だからママも飽き飽きと言った表情だ。


 ママは王都に行く前はまだ少しは残ってた「マリエッタ」の皮を完全に脱ぎ捨てたようだ。


 帰ってからずっともう”台風娘”マリーのままになっている。

 まあ私も王都で慣れちゃったから、今さらかなって感じだ。




「セレナ、今日また頼める?」

「OK、じゃあ後で行くよ」


 最近はアミーカによく呼ばれるようになったおかげで私は色々食べられて嬉しいし、一人じゃないって思えてとても心強い。


 ジェラールさんは予定通りギルド近くの露天に店を出し、予想通りバルドさんが足繁く通う常連さんに。


 そして夜はパパも交えて東国のお酒で酒盛り。ママとフローラさんは、また酒代が増えたとしかめっ面だ。



 ふっと笑うと、ママがジーッと私を眺めてた。


「ところであんた魔導具作る時何考えてやってるの?」


 唐突なママの質問に私の思考は現実に引き戻される。


「何って......きちんと焼き付けできるようにとか、回路手順間違ってないかとか。付与ならブレたり均一に付与できるようにとか、かなぁ?」


 ママは一度だけ頷き、ちょっと真面目な顔をして


「それだと製作者ね。この先開発を目指して独り立ちする気があるなら、考えなきゃいけないことはまだまだあるわよ?」


 そうアドバイスしてくれた。


 開発やるのに考えなきゃいけないこと?

 アイデア出す以外に思いつかないけど......


 額にシワを寄せてうーん?と悩んでいると、


「いくらで売るの?いつまでに作るの?どうやって納品するの?それに......それぞれの素材の特製とかまだ知識不足でしょ?」


 ウッ!

 出来てないことばっかりじゃんか。

 最近頑張っていい調子とか、正直調子乗ってましたー!


 私がほっぺを抑えて「あー!」と叫ぶのを見て、ママはやっぱりという顔で首を振った。


「あんたは昔から『これ』と決めたら強いんだけど、バランス悪いのよねー。不器用っていうかなんていうか」


「とりあえず知識は私の素材図鑑読んで勉強すればいいし、値段や納品は実際仕入れる経験しないと難しいから、技術面では『いつまで』、これにこだわり始めなさい」


 そう言うとママは四枚の回路図を取り出す。

 机の上に置かれたそれ(・・)に視線をやると......


「マ、ママ、なに、この凶悪な代物は?」


 見たこともないほど複雑に入り組んだ魔導回路が四つ。しかもそれぞれパターンが違うものがそこにはあった。


「楽しいでしょ〜?ベーネ工房の卒業試験に使ってた回路図ちょろまかしてきちゃった」


 舌を出してテヘッと笑うおばさん(・・・・)


 シュッ!


 鋭い音が耳をかすめる。

 あとわずか左か下にズレてたら耳に当たってた。

 目の前には鉄の棒を伸ばしてきたママ......


「ちっ、外したわね」


 うわぁっ!

 この人何してくれてんの!?

 娘を遠慮なしに攻撃するとかどこの親もやらない鬼畜な所業だよ!!


「命が惜しくなければ失礼過ぎる感想は二度としないことね」


「は、はい......」


 肉食動物に睨まれた草食動物は冷や汗を垂らしながら頷く他なかった......



「まあ冗談はさておき、あんたこれ一ヶ月後までに全部完璧に焼き付けできるようになりなさい」


「えっ!?」


「『えっ!?』じゃないわよ。基本はある程度出来たんだから、後は集中力切らさず一気に書き上げるだけよ。見てみなさい、特殊なものなんてないわよ、その回路図」


 た、たしかに。

 難しそうなものを分解して見てみたら、どれもこれも基本の焼き付けの組み合わせだ。


「わざと少しだけハードル上げてあるけど、あんたなら出来ると踏んでの目標設定よ。やってみなさい」


 そう言われたら燃えないわけにはいかない。

 開発に向かうまでに私は少しでもレベルアップしておかないといけないからね。


 手はすでにむずむずとし始める。もう職業病かもね、これは。


"鬼教官"マリー。

この人はいくつ異名が付くんでしょう?

出された凶悪な回路図四枚の宿題。

セレナの手は挑戦したがってますが、果たして結果はどうなるのでしょうか?

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