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【旧作】じゃじゃ馬セレナの不器用真っ直ぐ錬金術〜未来の誰かのための魔導具作り〜  作者: 八坂 葵
第三章 王都という名の試練

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第60話 ありがとう王都、未来へ繋ぐ誓い

いよいよ別れの時です......

 いよいよ今日、十二月二十六日。

 私たちは王都セントーレを発ち、ヴェルダへと戻る。


 私とアミーカとママは昨日の夜遅くにベーネ工房へ戻って、そのまま就寝。

 今朝はご飯を食べ終わったら、下宿を引き払う作業。きちんと掃除もして、キレイな部屋を返せたと思う。


 今ママは、ベーネさんと別れの挨拶をしている。


 と、その時こちらに向かってきたのは......グレさんの馬車と、お調子者御者セレス!


 というか驚いたのはその後ろ。

 荷馬車が3台付いてきてる。

 私が目を細めてジーッと先頭を見つめていると、


「ジェラールさん!」


 そう、ロックボア勝負の時にお世話になった、東国の食材商人のジェラールさんだ。

 馬車達はベーネ工房の横に止められ、するとグレッダさんの馬車の中から、


「おはよう!セレナ、アミーカちゃん、昨日は良く眠れたか?」


 昨日グレッダさんに捕まり帰れなかったパパが降りてきた。流石に眠そうに目の下にクマを作っていた。大丈夫かな?


「さ、二人とも後ろを向くんだ。」


 そう言ってパパは私、ママはアミーカの肩を掴んでくるんとまわした。

 その後、すぐ首に何かをかけられる。

 これは......?


「王都初日に買った、氷狼の爪を加工したペンダントだ。氷狼は強い魔物な上、とても家族想いで知られる。王都ではこうして加工したものが、家族みんなのお守りとして人気なのさ」


 勾玉にも似た優しい手触り。

 薄い水色の輝きがとてもキレイだ。


「ルキウスさん、ありがとうございます」


 アミーカが丁寧にお礼を告げると、パパが「まだまだ」と言って頭を下げるのをやめさせた。

 すると、カバンから縦長の箱をふたつ取り出してアミーカに渡す。


「これは?」

「これは?じゃないだろ。ちゃんとお父さんとお母さんにお土産持っていかなきゃダメじゃないか」


 そう言ってウインク一つ。

 アミーカは深く息を吸って顔を上げると、とびきりの笑顔で


「ありがとうございます!!」


 と、今度こそ頭を下げた。



 ここでジェラールさんが合流する。


「よお、二人とも。相変わらず元気そうで何よりだ」


 軽く手を上げて近付くジェラールさんに


「ジェラールさんもどこか行くんですか?」


 と聞くと、


「いや、別の場所で商売でもと思ってたら、セレスから二人が今日ヴェルダに帰るって聞いたからよ。じゃあヴェルダでいいかと」


「じゃあ!」

「いいか!」


 私とアミーカの呆れ声に、ジェラールさんは指を振る。


「まあ本音はどこでもいいのさ。王都にいても東国の食材は大して売れないだろ?だからあちこち出ていって、買いたいと思う人を増やさないといけないからな」


 なるほど、買い手を増やすための移動か。

 たぶんヴェルダに行けば研究好きなアミーカの父、バルドさんのことだ。

 きっと食材を買い漁るだろうから正解かもね。



「二人とも、昨日はお疲れなのに片付けのお手伝いありがとうございました。おかげで今日はとても身体が軽いです。本当に感謝してますよ」


 腕をグルングルンと回して、オーギュスト様を筆頭に、カイル様、グレッダさんが馬車から降りてきた。

 えっ、ええっ!!


「も、もしかして見送りに来てくれたんですか?」


「何を水臭い。せっかくお知り合いになれたのにもうお別れなんですから、お見送りくらいは当然ですよ」


 そしてカイル様は懐から懐中時計を二個取り出して私とアミーカに渡してくれた。

 蓋には下に置かれて開かれた本の中からオオカミが出てきている紋章が描かれていた。


 見たことがないはずのこの紋章に、私は何故だろう、とても穏やかな気持ちになれるような、そんな気がした。


「これはアドルフォス家の紋章の入った懐中時計になります。王都ですら伯爵以下なら完全に黙らせられます。」


「まあ何か無理を言われたりしたら見せつけてやってください。二度と手を出す気はなくなるでしょう」


 そう言ってカイル様はイタズラめいた笑顔を浮かべた。



「そういえばオーギュスト様、アミーカ場へ渡すものがあるのでは?」


 グレッダさんの言葉に


「おぉ、そうだった!」


 そう言うとオーギュスト様はカバンから封筒を取り出し、アミーカへと手渡す。


「もし本気で王城料理人を目指すなら、王都の高等学校で貴族の流儀も学びなさい。王都は貴族優遇の傾向がありますが、これはそれをさせないための推薦状になります」


「オーギュスト様......」


 アミーカは瞳を潤ませてはいるものの、なんとか泣かないよう頑張っている。

 アミーカ、頑張って!


「そんな顔はやめなさい。私へ皿を提供した、あの自信に満ち溢れた姿はまるで王城料理人のようでしたよ。」


 まるで思い出すかのように、オーギュスト様はふっと空を見上げる。

 そしてアミーカに向き直り、


「決して過信はせず、しかし自信を持ち、堂々と料理人の道に邁進しなさい。私からの助力はここまでです。後はあなた自身の手で未来をつかみ取るんですよ」


 そう言って優しく笑い、アミーカへと手を差し出す。アミーカも涙をグッとこらえて手を握り返し、笑顔を見せていた。



 ......いつまでもここにいたいけど、そろそろ行かないと乗り合い馬車締め切っちゃうな。


「セレナー!そろそろ出ようよー。邪魔になっちゃうから」


 私に声をかけてきたのはセレスさんだ。

「出ようよ?」

 何言ってるのかな、あの人は??


「おお、そうだ、セレナちゃん、うちの馬車を貸してやるから帰りはこれに乗って帰れ。ルキウスとも話はついてる」


 ああ!

 そういうことか!!


 私はてっきり貴族様がここまで来るための足として馬車で来たとばかり思ってたから、まさか自分が乗るとか考えもしなかった。


「え、でもオーギュスト様達はどうやって戻るの?」


「ご心配なく。ほら」


 カイル様が指差す方向には一段と豪華な馬車が停車していた。


「だから気にせず乗ってけ。セレスも楽しみにしてたようだしな」


 そう言われてセレスさんは少し顔を赤らめて下を向いてしまった。

 あのわざとらしい明るさは照れ隠しなんだな、よし、道中せいぜいからかってやる!


 そんなことを思いながらもまた一緒にいられる嬉しさに私の心も弾んでいた。


 馬車に乗り込む時、私はあらためてこの王都を見渡す。



 たった九日間、でも私は王都から、そこに暮らす人々からとても多くのものをもらった。

 その一つ一つに思いを馳せていると、自然と一つの言葉が胸に浮かび上がる。


 ......ありがとう。


 私を受け入れてくれて、私を育ててくれて、そして私を守ってくれて。


 たくさんの意味を込めたその一言だけをそっと王都に置いて私は馬車に入る。



 私は中に入ると馬車の窓を開ける。

 みんなにも少しでも多く感謝をしたい。


 窓から顔を出し御礼を言っていると馬車はゆっくりと動き出した。



 ああ、まだ伝えきれてないよ。

 イヤだ、みんなと離れたくないよ!



 でも......前に進まなきゃ。


 私は必ず成長して、みんながあの時助けて良かったと思えるような錬金術師になるんだ。


 みんなを笑顔にする魔導具が作れる錬金術師になって、次こそはみんなにお返しが出来るようになってみせる!



 その強い思いを込めて小さくなってきたみんなに力いっぱい叫ぶ。



「絶対......絶対また来るからー!!」


30話から始まったこの王都編。

最初は本当に旅行だけのつもりだったんですがね......

ちょっと流れの関係でパステルさんとかリオがほとんど出せなかったのが心残り。リオはまだ機会はありますが、パステルさんは......まぁ筆に任せるということで(笑)


次回からはいよいよ卒業に向けて話を収束していく形となります。

今回セレナは学んだり、考えたりばかりだったので、久しぶりに「作る」から話を始めようかと思ってますので、ぜひ引き続きお楽しみいただければと思います!


もし今回感動した!と思えたら、★評価やブクマいただけると嬉しいです♪

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