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【旧作】じゃじゃ馬セレナの不器用真っ直ぐ錬金術〜未来の誰かのための魔導具作り〜  作者: 八坂 葵
第三章 王都という名の試練

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第59話 実った成果と灯る未来、別れを告げる前夜

セレナの発表も終わり、その後のシーン。

みんなでお茶を飲んでゆっくりし始めた雰囲気をぶち壊すのは......?

 長かった発表も終わり、セレスさんがお茶を運んできてくれた。


 ふわっと香るダージリン。

 そのふくよかな香りを感じ、私はようやく終わったことを実感できた。


 すると、扉の外から走る音が聞こえてきた。

 何か緊急事態?

 私が体を固くして待ち構えていると......


 バタンッ!


 大きな音を立てて両扉が開く。

 そこには息を切らせたパパがいた。


「出来たっ、出来たぞ!魔力酔いの特効薬、その名も『イネブリーサ』だ!」


 掲げた片手には茶色い小瓶に入った液体が見える。それがそうなんだろうけど......


「パパっ、突然過ぎ!公爵様と次期侯爵家当主様がいるから気をつけてって、昨日の夜ちゃんと伝えたよね!?」


「ププッ」


 私の物言いに、思わず我慢できなかったアミーカから漏れ出た笑いに、思わずみんなも大笑い。


「すまん、すまん......オーギュスト様、カイル様、初対面にも関わらず、大変失礼なことをいたしました」


 そう言ってパパは片膝を付いて頭を下げる。

 それを手で制したカイル様は


「いえ、喜ばしいことではないですか。庶民にとって希望の光を作り上げたのですから」


 と労いの言葉をかける。

 ......もしかして以外と悪い人じゃないのかも。


「カイルさん、ついでだからこれも組み入れておきなさい。くだらないことでちょっかいをかける輩がいないとも限りません」


 オーギュスト様がそう指示を出すと、カイルさんは頷いた。


「お、おい、セレナ、組み入れるとか、何だ?」


 唖然としながらそのやり取りを見ていたパパを横に引っ張っていって、簡単な説明をする。


 納得したパパを置いて、私はようやくアミーカのもとへ。


「ただいま〜」


「セレナ、さっきとはまるで別人みたいだね。今は子どもみたい」


 そう言ってクスクス笑われた。


「むぅ〜、アミーカだって子どもじゃん!」


 そう言ってアミーカのほっぺをむにむにいじくる。こんなバカなことをしてると、ちょっとホッとする。


「二人ともお疲れ。大変だったろう」


 グレッダさんがそう労いの言葉をかけてくる。


「ルキウスとの再開も嬉しかったが、今回は二人と会えて本当に良かった。王国の未来が楽しみになってきたぞ」


 そう言って手袋を脱いで握手を求めてきた。

 確かこれって敬意を表す行為じゃ?


 グレッダさんの目を見ると、静かに頷いてくれた。そんなにも私たちに期待してくれてるんだ。それなら今まで以上に頑張らないと!

 そう胸に誓い、握手を交わした。


「おやおや、楽しそうですね。私も混ぜてもらえませんか?」


 と、今度はカイル様がやってきたのでちょっと聞いてみる。


「カイル様、さっきはとても前向きに私の話を聞いてくれてましたけど、あれ、何でですか?」


 私の質問にさも意外なことを言われたと驚いた顔を見せるカイル様。


「先ほど言った通りですよ。楽しいことと有能な人が好きと。あんな楽しい話を聞かせてもらって、乗り気にならない方がどうかしてますよ」


 あぁ、なるほど。

 この人も血統とかくだらない、何をなしたかが重要と考える人。

 今、ようやくこの人に対しての疑わしい目を捨てる気になれた。


 こんなにも頼れる人がグレッダさんの他にもまだいるのかと思うと、昨日まで抱いていた貴族への悪感情が少し薄くなった気がしてきた。


「それにしても将来が楽しみな二人ですね。アミーカさんと言いましたっけ?あなたもオーギュスト様に向かって毅然と挑んだというじゃないですか」


「ええ、それは立派なものでしたよ。だからこそオーギュスト様も本気でお相手をなさったのですから」


 アミーカは褒められて顔を真っ赤にしている。

 けっこうこういうストレートな言葉弱いんだよね、アミーカは。


 ......将来変な男に捕まんなきゃいいけど。



「グレッダ、もういっそこのまま夕食にしたらどうだ?どうせお前のことだから何も用意しとらんのだろう?私が腕をふるってやる」


 おおおーっ!

 オーギュスト様の料理また食べられるのっ!?


「よ、よろしいのですか!?」


「私が腹が減ったのだ。覚えとけ、王城料理長はこの国一番の食いしん坊なのだぞ?」


 そう言ってアミーカを見てニヤリと笑うオーギュスト様。


 ツンツン。

 私はアミーカを肘でつつく。


「アミーカ、教えてもらうチャンス逃しちゃダメだよ!」


「あっ!?」


 アミーカは慌ててオーギュスト様の前に走っていき、


「オーギュスト様、もしよろしかったらお手伝いさせてもらえませんか?」


 と頭を深く下げて頼み込む。

 頑張れ、アミーカ!

 私もうまくいくよう両手をギュッと握って祈る。


「そうですな、良い機会なので短い時間ですが教えられることは教えてさしあげましょう。私も初の女性の王城料理人が見たくなってきましたから」


 やったー!!

 私はアミーカにガッツポーズを見せると、アミーカは恥ずかしそうに手を振り返す。


 二人が揃って歩く姿が、まるで未来の二人の姿のように思えて、私は胸がとても熱くなった。



 アミーカがいなくなると、私のところにパパとママが近づいてきた。


「セレナ、急だが明日にはヴェルダに戻ろうかと思うんだが、いいか?」


「え、う、うん。別に構わないけど、どうかしたの?」


 パパはちょっと申し訳なさそうな顔をする。


「いや、明日王都を出れば、ぎりぎりヴェルダには新年前に帰れそうなんだ」


 あっ!

 あまりに激動の日々だったから日付とかすっかり忘れてたよ。

 そうだ、新年もう目の前じゃんか。


「そうだね、そうしなきゃダメだ!」


 私はもちろん大賛成だ。

 アミーカも大変なこといっぱいあったんだもん。せめて新年くらいは家族と過ごして、ゆっくりと休んで欲しい。



 そしてパパに『イネブリーサ』開発の苦労話を聴くと、まるで自分たちの話のようにも聞こえて、とても頷けてしまった。


 そこへオーギュスト様とアミーカとセレスさんが、大きなお盆に載せた七面鳥を持ってきた。


「みなさん、お待たせしました!オーギュスト様作の『聖夜の七面鳥』が焼き上がりましたよ」


 聖夜...七面鳥.....

 Xmasかいっ!!


 私の中で澪のそんなツッコミが聞こえた気がする。


「これは王城料理部の祖である、アリーチェ様の遺されたレシピで、王城でも毎年十二月二十五日に供される料理なのです」


 うん、Xmasだね。

 アリーチェ様、意外と茶目っ気ある人だったのかも......


 七面鳥を中心に、オーギュスト様の作る料理を堪能し、様々な楽しい話をする中、私は一人窓の外を眺める。



 いよいよ明日離れるんだな......

 ヴェルダに戻る喜びと、王都を離れる寂しさで私の心はゆらゆらと揺れ動き、どちらに止まることもなかった。


急に決まったヴェルダ帰郷。

これ以上いるとセレナは国王とも会ってしまいそうですし、頃合いですね(笑)

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