第58話 未来へ繋がる提案、守護を誓う者たち
さあいよいよ王都編クライマックスです。
セレナの考えは貴族たちにどう映るのか。
「それでは早速はじめさせていただきます」
王都貴族街、フォルティウス伯爵邸。
貴族はオーギュスト様、カイル様、グレッダさんの三名だ。
なおレオンくんも来ていたが、今は別の部屋でセレスさんが一生懸命相手をしている。
私はベーネ工房でみんなに見せた図を清書したものを三人に配り、街灯の形を変えることでより明るく照らせることを説明する。
ここまでで三人の反応は軽く「ほぅ」と呟いた程度だ。
「こうやって形を変えることで他のメリットも生まれます」
「他のメリット?」
グレッダさんが問い返してくる。
「はい、より明るく照らせるので、夜の犯罪がやりにくくなります。また、仮に犯罪が起きても犯人は逃げやすくもなりますが、追われやすくもなります。たぶん人数かけられる憲兵の人たちの方が捕まえやすくなるんじゃないですかね?」
これにはグレッダさんが感心した顔を見せてくれた。王都内の防衛はしてないけど、同じ守りを担当するものとして、心強かったんだと思う。
「あと同じ明るさを保てればいいということなら、この形にすれば街灯の本数が減らせますし、そうなると今回みたいな交換時期の経費も安く済ませられるんじゃないかなと」
これにはカイル様が
「それは経済的でいいですね、王城も喜びそうです」
とニコッと笑った。
この人はまだ本音がどこにあるか分からないからやりにくいんだよな。
グレッダさんが引き込んだからいい人だとは思うんだけど......。
「この話ですけど、先があります」
むしろこっちが本番。
今朝思いついちゃって、一応ママとベーネさん、アミーカを交えて話はした。
街灯の話が広まれば、そう遠くないうちに誰かしら思いつくだろうから、構わないという結論になった。
ママなんて、手柄なんか一人占めしときなさいなんて酷いこと言ってたけど。
とは言え貴族に話すのはちょっと勇気いるなぁ。
私は一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
もう迷わないって決めたんだ、よしやろう!
「これ、街灯じゃなくて『照明』って捉えたらどう思いますか?」
......
最初こそ「何言ってんだ?」という顔をしていた三人だが、すぐ気付いたようだ。
「それは、つまり室内のあらゆる照明を上から照らす形に変更してはどうかということかな?」
カイル様がそう聞いてくる。
「まあ中には上じゃない方がいいのもあるかも知れませんけど、言いたいことはそうです」
「ああ、なるほど」
「どうしてそんなことを?」
カイル様はすぐ納得してくれたけど、グレッダさんはまだよく分からないようだ。
「だってランタン邪魔じゃないですか。夜、食卓は明るくしたいからテーブルに置かなきゃいけなくて邪魔。台所作業に必要だけど、近場に置かないと見えづらいから邪魔」
私なんて回路の焼き付け練習に熱中しすぎて、何回倒しそうになったことか。
「その点下を照らす照明なら天井につけさえしたら、それでおしまい。そうそう邪魔なことなんてないですよ」
「なるほど、素晴らしい発想です」
カイル様はやけに乗り気で聞いてくれている。
こういう話好きなのかな?
「あと庶民向けのはすごくシンプルな構造でいいと思うんですけど、貴族様だと威厳みたいなの必要ですよね?だから、こんなのどうかなと思って」
私は澪の知識から引っ張り出したシャンデリアの図を三人に見せる。
そんなに絵心があるわけではないのですごく簡単なものだ。
「こうやって中心に明るめの光源を用意して、その周りをガラス細工とかで覆ってあげる。すると光の反射がすごくキレイな光の芸術品として自慢が出来ると思うんですよ」
「おぉ、これは王城に欲しいですな」
オーギュスト様が反応してくれた。確かに王城に豪華なシャンデリアが飾られていたら、さぞ荘厳かもしれない。その時はなんとか見せてくれないか聞いてみよう。
「以上が私の考えた『新街頭』、いえ『照明革命』の内容となります」
最後にお辞儀をして終わる。
はぁー、まだ胸がドキドキしてる。
でもとりあえず無事に終わらせることが出来てホッとしたよ。
「さて、お二方どのように思われますか?」
カイル様が話を進める。
さっきから一番若いのに、すごく積極的に場を回そうとしてるな。
意欲的なのか、それとも......
「ふむ。私はたいへん良い考えだと思いますよ」
「うむ、非常に面白い。これが実現すれば国民の生活はより便利なものとなるだろう」
オーギュスト様もグレッダさんも私の考えを受け入れてくれた。
よしっ!すごくワクワクしてきた。
私の考えから、すべての家に天井型の照明がつく日が来たら......
もうそんなの見たら嬉しくてきっと踊り始めちゃうよね。
「私も同感です。そこで重要なのはこれを『どう』するのかということですが......セレナ嬢、あなたはこれを自分の手柄として世間に広める気はないのですか?」
カイル様が聞いてくるが、これについてはもう最初から答えが決まっている。
「はい、これを私が考え付いたと発表したら、私はきっと静かな生活が送れなくなっちゃいます。それに私自身は未熟な錬金術師見習い。まだまだ勉強が必要な身なので、たまたま思いついたこんなことで私を評価されても困りますから」
これはれっきとした本音だ。
ベーネさんの理念を込めた魔導具製作とママたちのあの超絶技術がなければ、発想のきっかけは生まれなかった。
だからこんな偶然を過大評価してもらっても困るんだ。
「分かりました。オーギュスト様はこれを譲り受けるというのは?」
「私のような年寄りがこれ以上何を望むというのですか。料理長という役目ですら非常に光栄なのですから、これはもっと若い人が使いなさい」
「グレッダ様は?」
「私も不要ですな。詳細な話を聞く前から背負いきれるか不安でお二人を今日ここにお呼びしたような臆病者です。私が手を上げるべきものではありません」
「分かりました。それではセレナ嬢、この考え私がいただくとします。どのようにお支払いをしたらよろしいですか?」
そんなこと言われても......ここは、困った時のママ頼みっ!
と、ママを見ると瞬時に顔をそらした。
ママめ!後で目一杯文句言ってやる!!
「そう言われても、こういう時の相場なんて私わからないですし......あ、そしたら守ってくださいよ」
「守る......とは?」
「正直、くだらなくて嫌なんです。たかだか思いつきで作った鍋でさらわれるかも?とか言われるし、鍋でさらわれるなら、今回の照明なんてどうなるの!?って感じで」
「ここにいらっしゃるのはまともな貴族様なんですよね?だったらバカな貴族から私たちを守ってください。安心して開発や料理の道に進めて、いつかこの国のみんなの笑顔を作れるように」
カイル様は二人に目を向けると、オーギュスト様とグレッダさんは同時に頷く。
それを見たカイル様は安心した顔になり、
「もちろんです。あなた方の価値ある発想には相応の保護が必要と考えます。それでは私たちがお守りすることを約束いたしましょう」
カイル様は私の目を真っ直ぐに見て、そう約束してくれた。
「必要な手続き等は私が対応します。一週間ほどいただければ十分でしょう」
その言葉を聞けて私は
(よかった……これでやっと前に進める)
と、心から安堵することが出来た。
「ああ、これは出来ればでいいんですが」
カイル様の突然の発言に、また緊張が戻りかける。
「もし次に何か思いついたら、私にも教えてくださいね。楽しいこと、有能な方は大好きなので、私は」
前回初登場のカイル様が主軸となり、結果三枚の超強力な盾の出来上がりとなりました。
そして照明革命が話のメインのくせに、しれっと「私たち」の守護を願ったセレナと、気付きながらもそれを受け入れたカイル様。
これでアミーカも安心です(笑)




