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【旧作】じゃじゃ馬セレナの不器用真っ直ぐ錬金術〜未来の誰かのための魔導具作り〜  作者: 八坂 葵
第三章 王都という名の試練

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第55話 ひらく開発の道、迫りくる貴族の陰

大やらかしをしたセレナ。

工房のみんなの反応やいかに?

「これは......すごいぞ!!」


 誰かがあげたその一声を皮切りに、工房のみんなが大騒ぎを始めた。


「言われてみたらたしかに!」

「なんでこんなこと気づけなかったの?」

「嬢ちゃん、あんたすげえよ!!」


 あっという間に私はみんなに囲まれ、いろいろと質問だの、賛辞だのを受けまくる。


 わわわっ!

 ちょ、みんなそんな一気に来られても対応出来ないよー。声は褒めてるのに、その圧力はまるでママの説教二時間コースの時みたいに強すぎる!


 パンッ、パンッ!


 何かを強く叩く音が聞こえた。

 音のした方を見ると、ベーネさんが立ち上がり、みんなを睨みつけている。

 工房のみんなも音を聞いた瞬間誰もが黙り込み、急な静けさに逆に耳が痛い気がした。


「このバカ者ども!『錬金術師は冷静たれ』といつも言ってるだろうが。こんな小さなお嬢ちゃんを取り囲んで怖がらせて、恥を知れ!!」


 こ、怖いよー

 ベーネさんが一番怖い......


「よし!......セレナちゃん、少し話を聞かせてもらってもいいかい?」


 ベーネさんが切り替えて私に優しく呼びかけたので、おそるおそる近くに寄る。


「この発想は何がキッカケだったんだい?」


 当然澪の話はなしだ。

 まあ今回は少しだけ考えといたからなんとかなるとは思うけど。


「魔導具作りを見せてもらったからです。三人の技術の極地を見て、じゃあ魔導具側で変わるべき点ってないのかな?そうしたらもっと楽に作れるのにって」


「で、ベーネさんの温風器。使う人のことをとことん考え抜いたことと合わせて、街灯使う人のために最適なのって何かな?と思ったら、もっと直接下を照らせたらいいのにって思ってあの形になりました」


 ママは私を突然抱き上げた。


「わわっ、ママ、何?」

「あんた、その発想はすごいわ。魔導具製作じゃもったいない。開発の道に進みなさいよ」


 そう言って私を降ろす。

 開発?今みたいなやつってこと?


 なぜか胸の奥がじわっと熱くなった。


 今まで考えたこともない道。

 でも『開発』が私の目指す道だと思えた。



 するとベーネさんが少し厳しい目をしていることに気付く。


「ベーネさん、やっぱりダメですか、この発想?」


 そう聞くとき少し声のトーンが落ちてしまう。

 ベーネさんは慌てて首を振り、


「いや、違うのさ。アイデアとしてはとてもいい。ただ良すぎるのが気になるのさ」


 良すぎるのが?

 どういうことだろう。


「このレベルの大幅な開発になると、必ず誰が思いついたのか?が重要になる。それは今後の利権や名誉に繋がる。庶民がいきなりこんなものを出すと貴族に狙われかねない。セレナちゃんのそれが心配でね」


 貴族に狙われるって、そんな大げさな......。


 いや、でもクナ・ヴァポリスの時でさえその危険性は説明あったし、あれと比べたらたしかに今回のはレベルが違いすぎるかも。


「これ、ベーネさんの手柄にするとどうですか?」

「私もちょっと負いきれないね、このレベルは。既存の改修くらいなら良かったんだが」

「よし、じゃあグレッダさんに放り投げよう!」


 私の思いつきにママが呆れた顔で


「なんでグレッダさんよ。まあ伯爵だからたしかに適任っちゃ適任だけど」


 と半分納得する。


「アミーカ、クナ・ヴァポリスのことだけならいいよね?」

「うん、大丈夫じゃないかな?」


 一応アミーカにも確認を入れて、私はママたちにクナ・ヴァポリスが便利すぎて狙われる可能性があるからグレッダさんに渡したこと、お金はちゃんともらえることを話した。


「それ、当然契約書とかはないわけよね?」

「あ!......な、ないよ」


 そういえば公爵に伯爵といたから、つい信用しちゃってそんなこと考えもしなかった。

 さすがに迂闊すぎたかもしれない。


「あんたねぇ。まあたぶんその話込みでの今日のお招きだと思うから、私が話つけてあげるわ。師匠、それでもいいですか?」


「ああ、構わないよ。全てセレナちゃんのアイデアだからね。きちんと全額受け取りな」


「ダメです!!」


 それを私が大声で遮る。


「アイデアの発想を得たのはベーネさん、三人の付与を見せてもらったからです。それなら多少でももらってください」


「いや、私たちが何をしたわけでもないのに、もらえはしないよ」


「だから発想のきっかけをくれました!」


 ガルル......と噛みつきそうな私の頭をポカッとママが叩く。


「師匠、すいませんけどもらってやってくれませんか?この通り、誰に似たのか頑固すぎる娘でして」


「あんただよ!!」


 奇しくもベーネさんと私の声が被る。

 まあ私は「あんた」とか呼んだもんだから、また頭叩かれたけど。


「はぁ、仕方ない。金額は技術料全体が決まったらマリーと私で決めるが、必ずもらうことにする。それならいいかい、セレナちゃん?」


「はい!ありがとうございます」


 私は深々と頭を下げる。

 良かった、これなら私も胸を張ってお金を受け取れる。ホッと胸を撫で下ろした。


「さて、そうしたら後は夜のグレッダさん相手の戦略立てないとね。みんながいると話しづらいこともあるだろうから......よし、アンタ達下宿来なさい。すべて語ってもらうからね?」


 ああ、これはもう何をどうしたって逃げられないやつだ。私はアミーカと諦めの視線を交わす。



 下宿で抵抗虚しく、秘密と言われた低温蒸しのことまで懇切丁寧に引きずり出され、身も心もボロボロにされた。アミーカなんて耐性がないから途中で魂が抜けて、白目むいてたし。


 お招きの時間が近づいてきたので、私たちはドレスを借りに行く。


「いらっしゃいませ、お待ちしておりました......おや、お嬢様方、かなりお疲れの様子ですが?」


「だ、大丈夫ですよ、ハハ」


 乾いた笑いを返すのが精一杯。

 オーギュスト様ごめんなさいっ!

 罰を与えるなら罪深きこのママにお願いします!!


 お店の人の好意で疲れを隠す薄化粧をしてもらい、ドレスを着て、髪を整えた頃にパパがお店にやってきた。


「おお!三人とも見違えたな。どこのお嬢様かと思ったぞ」


 そういうパパもテールコートを着て、ヒゲまでそって、まるでいつもと別人みたいだ。

 パパ、もしかして外面までレンタルしてきた?


 さっきまで気持ちはとっても沈んでたけど(主にママのせいで)、なんかこうやってみんなが揃って着飾る姿に、次第に心が踊り始める。


「よし、それじゃあエスコートするから乗ってくれ」


 お店の前には豪華な装飾のついた馬車が付けられていた。


「パ、パパ、こんなのも借りたの?」


 私は大慌てで確認する。


「ハハッ、今日はグレッダの誘いだからな。あいつの家の馬車だよ。ほら、お前らの知り合いも来てるぞ?」


 そう言って御者台をさすと、まさかのセレスさんが来ていた。


「セレスさん!?」


「ヤッホー!今日はこの口調でいきたかったから一人で来ちゃった」


「完全に"遊びに来た人"のテンションなんだけど、伯爵様のお迎えがそれでいいの?」


「えー、『私達の前では友達の『セレス』なんだから』って言われたよ?それにしてもあんたのパパも面白い人だねぇ」


「パパ、何言ったの?」


 ジロリと睨むと、珍しくそっぽを向いて誤魔化した。

 これはウケ狙いで色々ばらしたな。

 後でじっくり追及してやる。


「さあさあ、遅れたら失礼よ。早く行きましょう!セレスちゃんもよろしくね」


 ママがそう言って場をまとめた。

 セレスちゃんって......



 クナ・ヴァポリスや新街灯の件もあるから、なかなか落ち着いた会食にはならなそうだなぁ。

 私はそんな不安を抱えながら馬車に乗り込む。



 ガタガタ揺れて進む馬車の音以上に、私の心の揺れは大きく、収まりそうになかった。

魔導具『開発』というあらたな道筋を掴んだセレナ。ようやく夢に向けて少し具体的な行動が起こせるようになります。

その前にまずは澪知識でやらかしたクナ・ヴァポリスと今回の街灯をグレッダさんに放り投げて、安全を確保してきましょう(笑)

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