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【旧作】じゃじゃ馬セレナの不器用真っ直ぐ錬金術〜未来の誰かのための魔導具作り〜  作者: 八坂 葵
第一章 錬金術師セレナのはじまり

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第5話 初めての修行の壁、森がざわめく

早すぎる魔力抽出を何とか誤魔化したセレナ。それから魔導具作りの基礎を習い始めてはや一年、今日はそんなある日のお話です。

 ジジジッ!

 魔導回路がまた焼け焦げ、鼻を突くツンとした煙の臭いがした。


 魔導具製作を習い始めてもうすぐ一年。

 私もそろそろ六歳になる。


 誓いを立てて一年、何も形に出来ていない私の心は日を追うごとに焦りを増していった。




 私が最も苦手なのが魔導回路の「焼き付け」だ。平面の素材に平面の回路図を置き、真っ直ぐに回路を焼き付ける。

 これなら問題なく出来る。


 しかし、素材が曲面だったりデコボコだったりすると、回路図の書かれた平面な紙とのズレが発生し、きちんと焼き付けられないのだ。


「あーっ、誰?こんな面倒な焼き付け方法考えたヤツ、出てこい!!」

「はいはい、20回目の愚痴お疲れ様。」


 ママの冷たいツッコミが入るが、それくらい私はここで足踏みをしてるわけだ。

 諦めるつもりなんてこれっぽっちもないけど、それでもこの状況は心にくるものがある。


 ペキッとはいわないまでも、ピキッと心に亀裂が入る音がした気がする。

 うん、ちょっと休もう。




「ねぇママ、どうしたら上手に焼き付けられるかなぁ?」


 ママの好きなお茶を差し入れ、私は隣りに座って甘えてみる。


「うーん、こればかりは練習あるのみ、なのよねぇ。まずは簡単な形のものでいいから、成功体験をたくさん繰り返すことかな」


 そう言うとママは紙に太さの違う直線数本と、大きさの違う円をいくつか書いた。


「こういう簡単なものでまずはやってごらんなさい。あれこれ試して落ち込むより、1つでも出来ることを増やして心を喜ばせてあげないと続かないわよ」


 (うぐぐ...やっぱり練習しかないのか......)


 サイフォンの原理で楽を覚えてしまった分、今の地道な努力が余計に辛く感じる。


 澪もプログラミングが最初はわけが分からない文字の羅列(られつ)にしか見えなくて、しばらく苦労してたみたいだし。


 先の長さにふと、めまいがしたような気がするのは気のせいではないかもしれない。


 ――


 そんなある日のこと。


「セレナ、森に薬草を採りに行くんだが一緒にどうだ?去年の約束、結局守れなかったしな」


 そうだ、去年森へ行く約束をしてたのだが、運良くというか悪くというか、パパの友達が必要な薬草をたくさんくれたのだ。

 無理な依頼を聞いてくれた御礼とのことだった。


 おかげで森へ行く機会がなくなり、もともと春先くらいしか採集には行かないらしく、私は一年待ちぼうけを食らったのだ。


 怒って三日くらいパパと口をきかず、最後はママの


「それ以上やるなら私の料理を食べさせるわよ」


 という恐怖の脅しに屈して、私はパパと仲直りした。

 昔、パパを神殿の治療院送りにした料理なんて誰が食べるもんか!



 その森行きの機会がようやく巡ってきたらしい。ちょうど魔導具の修行にも行き詰まってたところだ。別のことをして、少し頭を切り替えたい。


「行く、行ってみたい!」


 私が元気よく返事をすると、パパの顔がぱあっと明るくなった。


「おお!よし、一年も待たせたお詫びに、たっぷりサービスするからな。セレナとのお出かけがようやく叶って、パパは嬉しいぞっ!!」


 感極(かんきわ)まったみたいに目頭(めがしら)を押さえて泣く真似をするパパを見て、


 (...やっぱやめようかな)


 と思ったのは内緒だ。


 ――


 翌日朝早く。

 私は眠い目をこすりながら、食料や採集に使うナイフ、カゴ、小さなシャベルなどを準備する。


「セレナ、去年も言ったが森には何がいるかわからん。パパが守るつもりだが、万が一のためにお前もこれを持っておけ」


 と少し真面目な顔をしたパパに火の魔石を渡された。

 ネックレスタイプにしてあるから持ち運びしやすくなっている。


「身の危険を感じたら、遠慮することはない。思い切り魔石の魔力を解放しろ。」


 そうだった、森はそういう場所なのを忘れていた。私は火の魔石を首にかけ、心を引き締め直した。



 森までてっきり歩いていくのかと思ってたら馬車で行くらしい

 パパとママと一緒に貸し馬車屋で馬車を借り、街の出口へ向かう。ママとはここでお別れだ。


「パパの言う事をちゃんと聞いて、勝手にどこかに行ったらダメよ?いいわね?」


「はーい」


 なんて、元気よく返事だけはしておく。


 一応森だし注意はするつもりだけど、面白そうなものがあったらフラフラ行ってしまいそうになる可能性は我ながら否めない。


「いってきまーす!」


 ママに大きく手をふって別れを告げ、私たちは一路、ヴェルダの街の外にある森へと向かった。

 初めて出る街の外の景色に、私はワクワクで胸がはち切れそうだった。


 ――


 馬車を走らせるのはパパだ。

 私はその隣に乗せてもらっている。


 そういえば馬って私もそうだけど、澪も間近で見たことあんまりなかったみたい。

 動物園とか、牧場とかそういうところでしか。


 目の前で軽快に歩みを進める馬は、思ったよりもずっと高くて大きい。

 風になびくタテガミがふさふさで、なんだかすごく気持ちよさそうだ。

 ちょっと触ってみたいなー。


 私が興味津々で馬の背中を眺ながめていると、パパはそんな私の様子に気づいて、目を細めて笑った。


「パパー、お馬さんのタテガミ触ってもいい?」

「ああ、いいぞ。でも今は歩いていて危ないから、森についてからにしておきなさい」

「私は今触りたいのにー」


 ちょっと不満そうな顔で言うと、パパが苦笑いで


「セレナだって、歩いてる時に知らない人に突然後ろから髪を触られたら、びっくりしちゃうだろ? お馬さんだって同じなんだ」


 と説明してくれた。


 そりゃそうだね。

 たぶんきょとんとした次の瞬間、力いっぱい叫び声をあげることは間違いない。

 馬に暴れられても困るので、


「はーい」


 と。私は大人しく御者台に座り直した。



 春も間近で暖かさが増す季節。だけど森からは少し冷たい風が吹く。


 (まあ森は日が入りにくいから冷たく感じるのかな?)


 そう思いながらもその風の冷たさに、私は森の中で何かが起きそうな予感をじんわりと感じていた。

セレナの森探検はこうして一年待たされていたのでした。いよいよ次回は森の中。

パパの錬金術師らしいところをお見せすることが出来るかと思います。

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― 新着の感想 ―
前世の記憶を持ったセレナが魔道具製作に挑戦する。ほっこりとした家族愛とセレナの成長録のような物語で楽しく読まさせていただいています。 魔道回路という空想の物が頭に思い浮かぶようでわかりやすく、また徐々…
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