表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【旧作】じゃじゃ馬セレナの不器用真っ直ぐ錬金術〜未来の誰かのための魔導具作り〜  作者: 八坂 葵
第三章 王都という名の試練

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/75

第47話 香ばしさの魔法、完成!"ロックボア料理"

「セレナ、分かった、焼きだよ焼き!」

「なに?『焼き』って??」


 私はホットココアをテーブルに置く。


「グレッダさんは『金の太陽』のロックボアを一番美味しいって言ってたじゃない?だから『焼き』で上回らないと、グレッダさんの笑顔は引き出せないんだよ!」


 アミーカは興奮してそう言うが、


「でもさ、『焼き』で敵わないから『蒸す』にしたでしょ。今さら『焼き』に変えるのって難しくない?」


 私は努めて冷静に答える。

 アミーカの言ってることは分かるし、賛成だ。

 だからこそここで何かミスを起こさせてはいけない。

 そう思い、手を強く握り込む。


「だからね、こうして......」


 手元のフライパンに畳んだハンカチを乗せる。


「蒸した肉を高温のフライパンで焼き色をつけるだけ。これなら『香り』もついて、より美味しくなるよ!」


「分かったよ、アミーカ。それなら明日はその方法で挑戦してみよう」

「うん!......ギリギリまで迷惑かけちゃうけどゴメンね」


 下を向き、悪そうに言うアミーカ。


「何水臭いこと言ってんのよ!親友でしょ、私たち」


 私はホットココアをアミーカに差し出す。


「ほら、それ飲んだら寝るよ。明日も頑張って、グレッダさん倒さないと!」

「倒すって、戦うわけじゃないでしょ」


 フフッとアミーカが笑う。

 よしよし、これなら気負わず明日もいけそうだ。




 次の日、グレッダさん別邸。

 朝一でロックボアの蒸しに入り、セレスさんに今日やることを説明。

 すると意外な情報をもらえた。


「あ、そしたら焼く前に表面の水分軽く拭き取りなね。じゃないと焼き目つきにくくなるから」


 セレスさんの助言に従い、水気を拭き取った後にフライパンへ蒸し肉を置く。すると「ジューッ!」とあっという間に肉に熱の入る音。


 私は大丈夫かな?と少しドキドキしているが、アミーカは全く動じることなく肉に視線を落とす。


 親友の成長に嬉しい気持ちでいっぱいになりながらも、負けてられないという喉の渇きも覚えた。


「できたよ!」


 アミーカの焼いた肉には、軽く焦げ目がつき、たしかに「これこそお肉!」というイメージで食欲をそそる。


「よし、さあ食べようよ、早く早く!」


 だからなんでセレスさんが一番はしゃぐのさ!


 パクッ

 お肉を口に入れると、広がる香ばしい香り......と苦い香り。これたぶん焼きすぎだな。


 アミーカとセレスさんもそれぞれ微妙な表情を浮かべている。アミーカに至ってはちょっと泣きそうだ。


「ほ、ほらほら、次の焼きましょうよ!香ばしい香りはあったんだから、あとは焼く時間の問題だけでしょ?すぐ解決出来るって!」


 少し大声で元気を出させるよう、私がそう言うと


「そうね、アミーカちゃん、二日間見た正直な感想だけど、センスはある、足りないのは経験。だから一枚でも多く焼くこと。そうしたらきっと夢に届くはずよ」


 セレスさんが少し真面目な顔でアミーカにそう告げる。急な大人の態度は私たちもびっくりした。


 私たちの視線に気付いたセレスさんは顔を崩して頭をかくと、


「あー、普段はこんなことしないんだけどね、正直あと一歩でグレッダ様の期待を超えそうな気がしたから。そう思ったら、たかが一枚の失敗で落ち込もうとしてるアミーカちゃんがもったいないなって思って、つい、ね」


 すごく胸が熱くなった。

 たぶんセレスさんの正直な想い。

 アミーカもそうだったんだろう。

 袖で涙を拭くと


「セレスさんありがとうございます......セレナ、次焼くから手伝って!」


 と私に声をかけてきた。


「もちろん!何でも言ってよ」


 そして私たちはフライパンに向かった。




 そこから何度目かの挑戦の後、いよいよ三人が押し黙る、その瞬間が来た。


 ……!!


 肉を口に入れると、焦げた感じは全くせず、ただ香りだけが香ばしく広がる。


 噛むと、ごく薄く肉表面の抵抗を感じながらも、すぐに柔らかな噛み応えに変わり、あっという間に肉が噛み切れた。


「よく頑張ったね、アミーカ。これならいけるよ!」

「セレナのクナ・ヴァポリスのおかげだよ。だから私は蒸す以外を考えれば良かったから」


 お互いを称え合う。褒めるのは嬉しいけど、褒められるのはちょっとむず痒い。

 でもアミーカの正直な気持ちだろうから、私は素直に受け取ることにした。


「うん、決めたよ、料理名。」


 お、もうそんなところまで?


「何にするの、アミーカ?」

「セレナの魔導具で蒸して、私が焼いてソースを作って仕上げたロックボア。だからこれは『ロックボアの蒸し焼き〜王都のつむじ風風〜』だよ」


 ブホッ!

 名前に『つむじ風』が入っててつい噴いた。


「な、なんで『つむじ風』?」

「二人で作ったんだもん、当たり前でしょ」


 そういう気持ちは嬉しいけど、なんか、こう、表にその名前出すのが恥ずかしいというか、内輪ネタというか、うーん、分かってはもらえなそうだけど、抵抗したいなぁ......


「いいんじゃない?」


 セレスさんが後ろから声をかけてくる。


「あなた達気付いてないかもだけど、グレッダ様に認められるってことは、その料理は貴族の後ろ盾を得たってことだよ?」


 あ......

 私たちの話だけで考えてたけど、冷静に考えたらそうなるのか。


「つまり何か仕掛けようものなら、グレッダ様に手を出したも同じ。要はそういうことよ」


 私たちはそんな大事に繋がるとは思いもせず、思わず顔を見合わせる。

 お互いの目には不安の色しか浮かんでいない......


「はい、胸張りなさい!まだ試験に通るとも限らないし、本番は明日でしょ。まずは明日全力を尽くすことだけ考えて」


 セレスさんの激励がとぶ。

 でもたしかにそうだ、掴んでもない未来を想像して不安にかられてる場合じゃなかった。


「それに、もし通ったとしてもグレッダ様も私だって、大人がしっかり守ってあげるから、安心して試験受けて!」


 そう言うと私たちの頭を撫でてくれた瞬間、胸がぎゅっとして、泣きそうになった。


 だけど......


 パンパンッ!

 頬をたたく。


「分かったよ、セレスさん。」


 正直不安はまだある。

 だけど胸の中の声が不安をかき消してくれた。


(そうだよ頑張って。私も付いてるよ)


 そうエールをくれる澪の声。

 今の私には誰より強い味方の声に、私は立ち直る。


 アミーカの手を取って立たせ、


「そうだよアミーカ、細かいことはあとあと!つむじ風コンビならまずはみんなを楽しませなきゃ。明日はグレッダさんたち、関わってくれた人を絶対楽しませて笑顔にするよ!!」


 そう励まし背中をさすると、アミーカの震えも止まり、


「うん!やってやろう!!」


 と力強く答えてくれた。



 料理も完成しやる気も十分、準備はすべて整った。

 いよいよ明日はグレッダさんとの勝負。

 絶対に結果を出すぞ!


 握った拳を胸にあて、私は深呼吸をして決意を固めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
セレナの魔法とアミーカの料理は、 「人を笑顔にさせる」 「みんなを楽しませる」 ためのもの。 作品の世界観そのままの素晴らしいエピソードですね。二人の挑戦に対するグレッダさんの評価が楽しみ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ