第46話 王都で出会う"味噌"の魔力
澪との話も終わり、また現実に戻ったセレナ。
今日は澪からもらったヨーグルトと味噌の味付け探しからスタートです!
翌朝目覚めると、泣いた後みたいに目が少し腫れていた。あれは現実だったのかな?
いや、私が信じなかったらまた澪一人ぼっちじゃん!夢で誓ったこと、絶対に叶えてみせるからね!!
「あれ、セレナ目腫れてるけど大丈夫?」
「うん、なんか変な寝方したみたい。痛くはないから大丈夫だよ」
アミーカにはしれっと誤魔化しておく。
あ、えーと、なんだっけ?
そうそう、味噌にヨーグルトね。
「アミーカ、ちょっと『金の太陽』とは違う味なんだけど、蜂蜜とヨーグルトでソース作るのどうかな?」
「ヨーグルトかぁ。それたしかに美味しそうだね」
「でもパンチある味も欲しいから、今日はそれ市場に探しに行こうよ」
「うん、楽しみ!」
アミーカはだんだん余裕が出てきて、料理を楽しめている。いい兆候だ。
そしてセレスさんが迎えに来て、今日はソース用の材料を探しに市場へ。
すると市場に入る手前。少し離れたところで陶器の瓶や樽を並べたお店が目に入った。
ドクッ......
私の胸が何故かうずく。
これはまさか澪からの合図かな?
「アミーカ、あのお店なんだろ?」
「え?うーん、陶器に樽?見ただけじゃ分からないね」
するとセレスさんが解説してくれる
「あ、あそこ私の親戚のお店だよ。東国の珍しい食材扱ってて、今度グレッダ様の家でも仕入れてみようって話になってるの」
と教えてくれた。
東国の食材!?
もしかしてこれかも!
「アミーカ、ちょっとあそこ見てみよう!いい調味料あるかも?」
「ちょ、ちょっとセレナ、行く、行くからそんな引っ張らないでー」
私はアミーカを若干引きずりつつお店へと急いだ。
お店の中には樽に陶器の瓶がずらりと並ぶ。
「いらっしゃ......なんだ、セレスか。今日は何のイタズラ持ってきたんだ?」
お兄さんの顔が愛想100%の顔から一気に落胆した顔へ。
まるで滝のような表情変化につい笑いそうになる。
「いやいや、今日はお客さんとしてよ。こちらセレナちゃんにアミーカちゃん。グレッダ伯爵様に挑戦中のおもしろコンビだよ」
「誰がおもしろコンビよっ!」
私は瞬時にセレスさんにツッコむ。
ん?なんで私こんなこと出来るんだ??
澪の影響がまだ残ってるのかも。
「ほう、そりゃ面白そうだ。ちょっと話聞かせなよ」
私たちは勝負のきっかけから今に至るまで一通り説明をする。
すると、
「よし、今日は店じまいだ!俺も手伝うぞ」
「ロックボアに低温蒸しに、蜂蜜使ったソースだろ?下手したら俺は歴史が変わる瞬間に立ち会えるかもしれん。それに、俺の商品も役立てそうだしな」
お兄さんはそう言うと本当に店じまいを始めた。
「じゃあジェラールさん、私たち先に行って......って、私一緒じゃなきゃダメなの忘れてた、テヘヘ」
テヘヘじゃないよ、ダメイド!
親戚なんだからもっと気遣ってあげなよ、もう。
荷物を荷車に乗せて、私たちは昨日ぶりの別邸へ。昨日ほど緊張がないのは救いかな。
またまたロックボアをクナ・ヴァポリスに放り込んで三時間待つだけの簡単なお仕事です。
その間今日はソース作り。
まずは蜂蜜とヨーグルトのソースから。
アミーカが作ってくれたソースは甘いけど甘すぎず、酸味も感じられてさっぱりしている。
これならロックボアの脂とも相性がよさそうだ。
するとジェラールさんが
「なるほど、甘さをベースに肉を食べさせたいんだな?それならこれ、使ってみるか?」
そう言ってお店に並べてた樽を持ってきた。
樽とは言っても中さえカラなら、私やアミーカでも持てそうな大きさだ。
ジェラールさんが樽を開けると、ふわっといい香りが漂う。その香り、私は初めてなのに、胸がギュッと締め付けられる、とても懐かしい感じがした。
「これは『味噌』だ。東国の調味料で、ちょっとしょっぱいが、コクがあって、料理に使うとウマいぞ」
出たっ!味噌!!
澪凄いな、私の奥にいながらこの匂い感じ取ったのか。
すると私の胸がトクンッと反応した。
まるで澪が「言ったでしょ?」と言ったかのように。
なんか嬉しいな。
まだ話せないけど、こうして少しでも澪を感じられるようになって。
私はルンルン気分で、思わず
「あ、味噌だ!」
と失言した。
「お、セレナちゃんはこれ知ってるのか、珍しいな」
ジェラールさんの言葉にアミーカやセレスさんもうんうんとうなずいている。
し、しまった!
これが澪が「気をつけろ」って言ってたことか、すぐに誤魔化さないと。
「う、うん、なんか昔何かの本で読んだことあったんだけど、見て思いだしたんだ......」
三人はそれでなんとなく納得してくれたみたい。
ふぅ、反応には気をつけよう。
ジェラールさんは味噌と蜂蜜、そこに手持ちのお酒を混ぜて、簡単なソースを作る。
私たちはちょびっと舐めると、
「美味しいっ!」
「これ、ロックボアに合いそうだよ!?」
「『金の太陽』のお肉と勝負できそうだよ」
セレスさんのお墨付きももらい、いよいよロックボアの蒸し上がりだ。
一人二切れ、蜂蜜ヨーグルトと蜂蜜味噌を軽くかけたものを食べる。
「蜂蜜ヨーグルトおいしいよ!けっこうさっぱり食べられるね」
「蜂蜜味噌はとってもガツンって味で、『金の太陽』のお肉と違う味だけど、美味しさはどっちも同じくらいかも!!」
大人二人も同意見のようだ。
「これならいける、絶対勝てるよ、アミーカ」
「うん、そうしたら本番で出すお肉の大きさとソースの量決めないと」
そこからはずっとその調整でてんやわんや。
私とアミーカがこれ!と決めた量は大人には物足りず、セレスさんには十分でも、ジェラールさんには足りなかったりする。
蒸し時間の長さもあって、決まった頃にはもう一日が終わっていた。
「いやぁ、いいもん食べさせてもらったよ。しかも中心肉があれほどとはな。アミーカちゃん、セレナちゃん、今日の御礼だ。今回の勝負に使う東国の食材はタダでやるから、その代わりちゃんと勝てよ!」
ジェラールさんはこんな感じで終始興奮気味だ。無理もない、昨日の私たちがまさにこれだったんだから。
「タダなんて、さすがに......」
「料理人なんだろ?だったら自分の料理に対価を払いたいと言われたら素直に受け取っておけ。自分から払いたいとか言うもの好きはそうそういないんだからな」
そういうとアミーカの頭に手を置く。
「ただ次からは正規価格で頼むぜ。俺の生活のためにもなっ!」
「はい!次はいっぱい買わせてもらえるよう頑張りますね!!」
二人は握手し、私たちはジェラールさんと別れた。
下宿に戻ると、アミーカが少し不安そうな顔をしている。
「どしたの、アミーカ?」
「うん、これで準備は整った。けど、何か足りない気がしてるんだ。これだとグレッダさんは認めてはくれるけど、喜ぶ顔が見えてこなくて......」
そう言うと落ち着かなそうに指を動かす。
足りないワンピース。
私にはさっぱり分からない。
だけどアミーカがそう感じてるのならそうなのだろう。
「とりあえず頭切り替えよ。ホットココアでも入れてくるから、アミーカ待っててよ」
「うん、ありがと」
ふわっと香る、温かさと甘さ。
ホットココアは私も好きだし、澪も好きだった、私たちに共通する数少ない共通点だ。
(これでアミーカ落ち着いてくれたらな)
親友の心配をしながらドアを開けると、
「セレナ、分かった、焼きだよ焼き!」
アミーカが興奮して立ち上がった。
その頼もしさに胸が熱くなる。
けれど同じ場所がうずく。
まだ油断はできない.....
澪との出会いでセレナの対応にも少しずつ変化が出てますね。
(主にツッコみで......)
アミーカの言う『焼き』とは何を指すのか。
次回、焼きの謎をクリアしたら、その次の話からいよいよグレッダさんとの
勝負に入ります。




