第39話 恐怖の夜...に明かされるセレナの想い
今日は夜、ママに昼間の料理勝負の報告をするところから始まります。
ちょうどママが帰った後の出来事なので、彼女は知らないんですよね。
アミーカの今まで言えなかった理由、マリエッタの考え、セレナの想いが
見えてくる話となります。
どうぞお楽しみください。
その夜。
ママに料理試験のことを話すととても驚いていた。
「アミーカちゃん、すごく頑張ったわね。偉いわ」
ママはアミーカの頭をぐりぐりと撫でてあげた。
「い、いえ。私の夢なので」
お、言った、言ったな!
つかまえたぞっ!
「やっぱりアミーカの夢って王城料理人だったんだね」
否定するかと思いきや、恥ずかしそうに、でも力強く頷く。
「王城料理人って女の人いないんだって。だから私も夢って口に出しづらくて」
あぁ、あるよね。前世も家庭では食事は母親の役目、でもシェフや店長は何故か男なんだよね。
たまに女性店長もいたけど、必ず『女性』って付けられて、なんかそれが特別!みたいな感じに使われててなんかちょっと嫌だったな。
「でも王都に来て、ベーネさんは女性なのに工房主だし、他の男性の錬金術師さんよりも、わざわざ遠くのヴェルダにいるマリエッタさんが頼られてるし、パステルさんもすごい研究してて、男とか女とか関係ないんだなって思えて」
そして大きく息を吸って
「じゃあ私も目指していいんじゃないかって思えるようになったの」
と告げた。
パチパチパチパチ…
ママはアミーカの言葉を聞いて拍手。
「いいわね、アミーカちゃん。自分でそこに気付けるのはとてもいいわ。そう、今いいものが男性しか作れないって思われてるのは、その「いい」っていう価値を作ってるのが男ばかりだからなのよ」
おぉっ、そう言われればそうなのか。
確かに前世も何か偉い人はほとんど男だった気がする。
「だから私達女性は別の価値観を作り上げてそこにぶつけていって、少しずつ価値観を変えていってやるの」
ママは胸の前で右拳を左拳に軽くガンッと当てる。
「そうすればいつかは男がとか女がとかくだらないこと言わないで、純粋に良いものだけを作ろうとする環境が出来るはずよ。私も若い頃はそれでたくさんぶつかったわ。諦めないで頑張りましょうね!」
ママはアミーカに手を差し出し、アミーカは力強く
「はいっ!」と返事して手を握り返した。
よし、じゃあ明日のために早く寝なくちゃね。
「よし、アミーカ、明日のために早く寝よっ」
「うん!」
私達が仲良く隣の部屋へ向かおうとしたその時、ママが私の腕をガシッと掴んだ。
「アミーカちゃん、ちょっとセレナ貸してね。すぐ返すから〜」
ニコニコしながらママはお願いしてきた。
ああ、誤魔化せなかったか…
私はアミーカにごめんね。というと、アミーカは小さな声で「頑張って」と苦笑いしてきた。
―――
二人になった部屋で緊張しながら、私は自然とひざまずきの状態になる。
うう、こんなの前世の幼稚園で先生に怒られた時以来だよぅ。
「で、セレナはアミーカちゃんに付き合ってあげてるけど、魔導具とかを見て回りたいとかはないの?」
へっ?
思ってた質問と違うのが来たぞ??
やぶ蛇か?とも思ったが聞いてみた。
「あ、あのー、昼間のあれでのお説教は?」
「あー、あんなのどうでもいいのよ。怒ってないし、パパが私のこと大好きなのも本当だもん。でも怒ったフリでもしてあげないとパパが逃げられなかったでしょ?だからそうしただけ」
「ママ、今からでも舞台役者目指したら?」
「そうね、考えとく。」
私の呆れ返った言葉に、絶対カケラも考えるつもりがない返事が返ってきた。
まあ私も目指されたら困るけど。
「うーん、正直最初からアミーカが一緒にきた時点で、そんなに私の希望だけは出来ないなって思ってたよ」
「でもアミーカ残して私たちだけで王都行きってのもすごく寂しく思ってたから、たぶん何選んでも満足は出来なかったと思うんだよね」
「ふんふん、それで?」
ママはリラックスしながら続きを促す。
お説教じゃないならいいや。
私もひざまずきをやめて、普通に座り直した。
「だったら私が一番納得出来ることを選ぼう!って思って。
......今日さ、アミーカの夢が王城料理人って気付いて、すごいなぁって思ったんだ」
「私も魔導具作りが好きだけど、アミーカみたいにちゃんと『夢』を持ててないなぁって気付かされて」
ママはいつの間にかリラックスをやめて、真剣に私の目を見ながら話を聞いてくれている。
「じゃあまずはアミーカの夢を応援しよう。その中でもし自分の『夢』に繋がるものが見つかったらそれはそれでいいし、なければ今まで通り魔導具作りの中で探していけばきっと自然と見つかるはずって思ったから、それで納得できたから、私は大丈夫!」
「うんうん、一応しっかり考えてるようで良かったわ。単に流されてるだけじゃもったいないし、パパのおかげとは言え、グレッダさんなんて伯爵家の方と対等に話せる機会なんて生涯あるかないかよ。せっかくの機会、大切な学びの場にしなさいね」
ママはそう言うと、立ち上がって部屋のドアを開けた。
するとさっき部屋を出ていったアミーカがそこで恥ずかしそうに立っていた!
「あれ、アミーカ、何で?」
いや、分かってはいるのだ。
どうせまたこの舞台役者にしてやられたに違いない。
「アミーカちゃんにさっき聞かれたのよ。私は好きなことが出来てるけど、セレナに我慢させてないか心配でって」
ママはそう言うとアミーカの頭を軽く撫でる。
「じゃあ手っ取り早くアミーカちゃんいない場で白状させましょ!って思ってね」
ほらっ、ほらっ、ほらーっ!!
ママのことは大大大好きだけど、たまにこういう信じられないことしてくるんだ。
「何よその目は?いいじゃない。変に誤魔化して後でギクシャクするよりよっぽどいいでしょ?」
誰もがそう思うけど、普通誰もその道は選ばないんだよ、ママ。
そういう意味ではセレナ・ラヴ!なパパの方がよっぽど常識人なんだよな。
......いや、頭のネジがブッ飛んだところがある者同士、お似合いの夫婦なのかも?
「ねぇ、セレナ、なんか失礼なこと考えてない?」
だからやめて!心の中読むの。
ママと話してるとファンタジーに異世界転生したはずが、いつの間にかSF世界に再転移したかと錯覚させられてしまう。
うん、これ以上の会話は危険だ。
さっさと寝たほうがいい、そうしよう。
「大丈夫だよ、アミーカ。明日から頑張ろ!」
「ありがとう、セレナ」
アミーカは少し涙ぐんでいた。
分かるよ、騙し討ちしたみたいでイヤだったんだよね。
今日は隣でいっぱいよしよししてあげるから許してね。
「ママは少し反省してっ!」
それだけ言うと私は何か言ってるママの言葉も聞かずバタンッ!とドアを閉め、アミーカを連れて隣の部屋で休むことにした。
―――
ベッドに入ると2人とも慣れない王都、激動の初日に疲れ果ててたのだろう。
よしよしどころか、一言も会話をする元気もなく、私たち2人はあっという間に夢の世界へ旅立っていった。
明日からがんば...ろ、ムニャムニャ。
やってることは娘たち想いなんですけど、やり口が悪人のそれっていう、
マリエッタの悪いところにセレナも怒っちゃいましたね(笑)
次回は料理勝負へ進む前に、マリエッタの本音と夫婦が役者だなぁという
お話です。




